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バレンタイン商戦本格化、各社とも出足は順調 百貨店のEC、仮想モールの状況は?

2025年 1月23日 12:00

 今年のバレンタイン商戦が本格的にスタートした。実店舗に客足が戻る中、ECチャネルは予約開始時期の前倒しや店頭にはない品ぞろえも奏功して通販実施各社は概ね順調な出足となっているようだ。百貨店各社のネット販売の状況や、仮想モール、通販事業者のバレンタイン商戦の特徴などを見ていく。

 
ECバイヤーのセレクトも充実

 高島屋は、今年のバレンタイン商戦でEC売上高は前年比10%増、実店舗を合わせた全体では同5%増を目標とする。

 同社は恒例のバレンタイン催事「アムール・デュ・ショコラ」を開催する。「高島屋オンラインストア」では店頭に先行して12月中旬に販売を開始しており、関西の店舗は1月17日、関東の店舗は同月22日からスタートする。店頭は100以上のブランド、オンラインストアでは最大約400ブランドをそろえて商戦に臨む。

 今年は〝推しチョコ活〟を意識した「世界のプレミアムなショコラ」の豊富なラインアップをはじめ、素材にこだわった国内のショコラブランドや、「カラティール」や「シェ・シバタ」「ル ショコラ ドゥ アッシュ」など1箱で6ブランドが味わえる「個性豊かな日本人シェフたちによる、豪華コラボレーションBOX」が新登場する。

 また、毎年人気のサステナブルな取り組みのショコラをクローズアップする企画では、干し芋の端材を使用したアップサイクルショコラを「ピエール・エルメ・パリ」や「トシ・ヨロイヅカ」など7ブランドとコラボして提案する。

 高島屋では、前々回の商戦以降、ECでの販売開始時期を従来の1月から12月中旬に前倒しした。今回は12月の第1弾時点で約900種類を展開。1月以降を含めた会期累計では約1700種類の展開となる見込みだ。

 また、オンラインストアでは、前回からバレンタイン特集ページ内のテーマ別ピックアップに「日本各地の名店」を打ち出し、同コーナーで紹介したブランドの売り上げが5倍となるケースもあった。

 今回は、EC専属バイヤーによるセレクトを前年から約45種類増やして約250種類の商品を準備したほか、サイトの作り方も商品の魅力が伝わるようにショコラティエの情報などを多く盛り込んだという。

 期間中の売り上げはバレンタインデー本番に向けて1~2月にかけてピークを迎えるが、12月から展開していることを周知する目的で、今回から高島屋店頭にポスターを掲出したり、自社媒体物による告知を強化している。

 高島屋によると、前年のバレンタイン商戦はとくに若者層で店頭回帰の傾向があり、店頭を含めた商戦全体の売り上げは伸長したが、店頭回帰もあってECは苦戦。今回については、売上高はほぼ前年並みで推移しているものの、母の日や父の日など日付が決まっているイベントは需要が直前に集中する傾向があることから、バレンタインも今後の伸びを見込んでいる。

 なお、売れ筋としては例年通り、キャラクター商品や海外ショコラブランドが人気という。

ウェブ限定のチョコが充実

 小田急百貨店は、新宿店でのバレンタイン催事「ショコラ×ショコラ」に先行して、12月11日~2月8日の午前9時まで自社通販サイト「小田急百貨店オンラインショッピング」で特集ページを展開する。ECチャネルでは店頭のイベント会場では取り扱いのないウェブ限定品を含めて約100ブランド、700種類以上のチョコレートや焼き菓子を販売する。

 同社では近年のバレンタイン商戦の注目度の高まりに合わせて、前回から自社ECでの販売を約2週間前倒しして展開している。

 ウェブ限定品としては、フルーツ系やナッツ系、和素材などを使った色とりどりのボンボンショコラを詰め合わせた「『パティスリーハヤトヤマダ』ボンボンショコラアソート8個入」(4000円)や、「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」を使ったボンボンショコラで、塩をアクセントに加えたミルクタイプと米の甘い香りを際立たせたビタータイプの詰め合せ「『ショコラティエ パレドオール』獺祭ショコラ(6個入)」(3240円)、アラン・デュカスのビスケット専門店からハート型のビスケットをチョコレートでコーティングした「『ル・ビスキュイ・アラン・デュカス』ピュール・クール詰め合わせ10枚入り」(4536円)などを提案する。

楽天は販売順調、初のお試し企画

 楽天グループの「楽天市場」では1月6日~2月17日、バレンタインデーの特集ページを開設。売れ行きは順調に推移しているという。

 今年はお試し・少量サイズの企画を初めて導入。さらには、1月28日までにエントリーして1000円以上購入した顧客を対象に、バレンタイン直前で使えるクーポンが当たる抽選企画も初めて行っている。

 定番の百貨店ブランド(リンツチョコレートやクラブハリエ)が人気アイテムとして、売れ筋上位にランクインしているのに加えて、今年のトレンドとしては、かわいらしいキャラもののチョコレートが人気となっている。また、同モールでしか購入できない限定商品も取り扱っており、なかでも、ともに今年で楽天市場店25周年を迎える「バニラビーンズ」と「伊藤久右衛門」の店舗コラボレーション商品となる、バタークッキーの生チョコサンド「ショーコラ・宇治抹茶アソート」(4個入りで価格は2025円)にも注目が集まりそうだという。

6ジャンルに分けチョコを提案

 LINEヤフーが運営する仮想モール「ヤフーショッピング」では1月10日から、各出店者が販売するバレンタイン用チョコレートなどを集めた特集ページ「バレンタイン特集2025チョコ&ギフト大作戦」を開設した。2月15日まで設置する予定。

 同ページでは「高級・プレミアムチョコ」「レビュー高評価チョコ」「個別包装・小分けチョコ」「おもしろチョコ」「チョコ以外のギフト」「ふるさと納税でおくるギフト」と検索性を考慮して6つのジャンルに分けて紹介。また、百貨店に出店している「ゴディバ」や「リンツ」などの有名ブランドのチョコレートを紹介する「百貨店ブランド・ランキング」や恋人や家族、職場、友だちなど贈る相手別にお勧めのチョコレートなど紹介するページも設けた。このほか、住所がわからない相手にもチョコレートなどのバレンタインギフトを贈ることができる「ソーシャルギフト」なども設けている。

 拡販のため、特集ページ内に「バレンタイン応援クーポン」を配布するページを用意。7000円以上の購入時に使用できる1000円クーポンと3000円以上の購入時に使用できる400円クーポンをそれぞれ期間中、3回配布する。

 同じく同社が運営するコミュニケーションアプリ「LINE」内で展開中のソーシャルギフトサービス「LINEギフト」では1月14日からバレンタインデー用ギフト特集「ご褒美チョコ特集」 の掲載を開始。パッションフルーツとショコラオレを組み合わせた「モガドール」やビターチョコレートに甘酸っぱいフランボワーズの風味が楽しめるという「クロエ」などショコラのフレーバーを中心に6種6個のマカロンを詰め合わせた「『ピエール・エルメ・パリ』マカロン 6個詰合わせ」(税込3996円)や6色の花びらをイメージしたチョコレート「『shodai bio nature』プティミルティペタル」(同4450円)などを紹介している。特集掲載にあわせて期間限定の10%引きクーポンを配布している。

 なお、LINEヤフーによると同社運営のネット検索サービス「ヤフー検索」によるキーワード検索の傾向として「バレンタイン」にプラスして「高島屋」「阪急」「伊勢丹」「大丸」など百貨店名や「ゴディバ」「メリー」「モロゾフ」「ロイズ」などブランド名で探すユーザーが多いという。

ブランド初のチョコレート

 ECチャネルを中心にチーズケーキを販売するMr. CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)は、バレンタイン限定商品として、ブランド初となるチョコレートを発売する。常設店や通販サイトでの販売に加え、全国でポップアップを開催し、より多くの消費者に体験してもらう。

 今年は「チョコレートにおぼれる、冬にしたい」をテーマに、バレンタイン特別企画「Mr. Chocolate」を開催する。これまでのバレンタインではチョコレートフレーバーのチーズケーキを販売してきたが、顧客からの要望に応え、チョコレートの開発に至った。

 「SILKY CHOCOLATE White Tonka」(税込3240円)は、ブランドの原点であるシグネチャーフレーバー「クラシック」から着想を得た商品。トンカ豆の香りを抽出した生クリームに、ホワイトチョコレートとバージンココナッツオイルを混ぜ合わせ、バニラの香りを添えた。

 「SILKY CHOCOLATE Black Cacao」(同3240円)は、過去のバレンタインで販売し、人気の高かったフレーバー「ブラックカカオ」をイメージした。ココナッツオイルにスパイスやフルーツなど、チョコレートと相性の良い素材をバランス良く組み合わせることで、チョコレートの風味を引き立たせた。

 他にも、チョコレートにカカオ風味のガレットブルトンヌを組み合わせた限定チーズケーキなどを販売する。

 商品は1月19日から、常設店の「ミスターチーズケーキ グランスタ東京店」と自社通販サイトで販売する。並びにポップアップストア「ミスターチーズケーキ ユアシティ」を開催。1月17日のジェイアール名古屋タカシマヤ、京都高島屋SCを皮切りに、全国8カ所の百貨店で販売する。

下着も〝ご褒美〟、需要を獲得へ

 女性向けの下着カテゴリーでもバレンタイン商戦を実施している。自分へのご褒美としてチョコレートなどのスイーツが需要を伸ばす中で、自分のために好きなデザインを選びたい下着のニーズが合致した。チョコレートをイメージした限定デザインの提案でご褒美需要の獲得につなげている。

 HEAVEN japanは1月14日から、バレンタイン限定デザインのブラジャーとショーツなど4アイテムを用意した。3アイテムを購入したユーザーに対して、お揃いのヘアバンドをプレゼントするほか、5%引きで購入できる特典を用意した。

 限定デザインを展開するのは「ビスチェリーナ」シリーズで、ブラジャーとスタンダードショーツ、コフレセット限定で選べるTバックショーツを展開。ナイトブラ「夜寄るブラ」でも限定デザインを提案した。

 同社にとって、バレンタイン限定商品の企画は初めて。数量は700セット限定で展開する。

 「ビスチェリーナ」はバストをふっくらと補正し、柔らかいお肉をしっかりと集めることが特長。ビスチェのようなセミロング丈となっている。幅広い層から支持を得る人気商品だったことから、限定デザインを提案することにした。

 限定商品はチョコレートをイメージして、ブラウンとピンクのレースを使用した。アンダーバストにもたっぷりとレースを使って丈を長くし、バックに蝶をあしらった。着用しやすいカラー展開と、可愛らしすぎない雰囲気を重視した。

 バレンタイン限定商品は1月7日から公開した。1月13日まで、SNSでは好みのチョコレートのツイートを促すキャンペーンを実施して興味を喚起した。「限定デザインはカタログ未掲載商品で、顧客にむけたサプライズ企画になる。今後はSNS広告も展開し、20~30代を中心に幅広い年齢層に訴求したい」(同社)とした。
 
カカオショックの影響も
フェリシモ、〝サステナチョコ〟提案
「ストーリー」で高級チョコ販売

 フェリシモでは昨年10月より、海外チョコレート専門カタログ&ウェブサイト「幸福(しあわせ)のチョコレート」において、2025年の新作となるチョコレートの予約販売を開始している。

 同カタログでは毎年、〝チョコレートバイヤーみり〟こと、バイヤーの木野内美里氏(=写真)が日本初上陸となる海外チョコを現地で発掘し、掲載するのが恒例となっている。今回は33の国と地域から87ブランド・157点、うち日本初上陸20ブランド・42点、同社限定130点の海外ローカルチョコを掲載した。

 今年は、気候変動などの影響によるカカオ豆の不作から価格が急騰する「カカオショック」が出来した。同社では昨年11~12月にかけて、「幸福のチョコレート講座」を全国で開催。来場者からは「ガーナのカカオ状況について、ニュースでは見ていたが、今回のセミナーで本当に危ないんだ……ということを感じた」「気候変動によるカカオショックの話は、とてもシリアスな問題として心に残った。これからもおいしいチョコレートを皆が食べられるように、何かできることがあれば応援したい」といった声が挙がっていたという。

 カカオショックを踏まえて、サステナブルなチョコの提案も行った。ガーナ産コーヒー豆が入ったチョコレートは、カカオ豆からチョコレートを製造するまでの全工程を一貫した、近年流行の「ビーン・トゥー・バー」だ。スロバキアのチョコレートは、牛乳などを使わないヴィーガン向け。コロンビアに自社の契約農場を持っており、パッケージもスロバキア人のデザイナーで、包装紙も再生紙が使用されている。カカオショックの影響も受けておらず、フェリシモとの仕入れ交渉の際には唯一「値下げ」を持ちかけてきたのだという。

 同社では「きちんとサステナブルの商品として認識をして購入しているのが分かる。たくさん売れるということはないですが、商品情報をしっかり見て選んでいることを実感している」(木野内美里氏、以下同)と手応えを語る。「セミナーでの質問もこの件に関して多く、関心が高い」。

 また、カカオの代替品として「キャロブ(イナゴマメ)」を使用した、添加物不使用、カフェイン・グルテンフリーの健康的なチョコとして、インドネシアのキャロブチョコも掲載。カカオショックを受けてチョコレート価格が急騰する中で、新たなチャレンジも行っている。「顕著に売れているということはないが、ほかでは扱ってないので、どんな味かチョコの知識として購入する人が多いのではないか。ある意味、チョコという食と知識を両方追及する人がある程度いるように感じる」。

 昨年と比較したトレンドの変化については「食の多様性が深まっている。同じ味に集中するわけではなく、自分の〝好き〟を金額は関係なく探しているという傾向がどんどん増している」という。また今年の売れ筋は「新商品には注目が集まるので、ブルガリア、ギリシャの日本初上陸チョコなど注目されている」。

 カカオショックを受けて、相次いだチョコレートの値上げ。同社でも「カカオの価格が3~4倍に高騰しており、人件費や流通の値上げも大きく、価格は国によって違うが、物価は世界全体で上がっている。特にEU、アメリカは小売価格にして1000円以上値上がりしたところもあり、それによって取り扱いを断念したチョコもある」という。

 今商戦の売れ行きについては「やはり世の中のチョコレートが値上がりしていく分、買い控える顧客、離れていく顧客もいるのではないか」とした上で、「しばらく輸入チョコは厳しい状況だが、チョコの旬たる気温が低い冬季シーズンは、ただイベントや日常楽しむチョコだけでなく、自分用としてしっかりストーリーを知ってチョコを選び購入をするという顧客もますます増えてくると思うので、高級になればなるほど、スペシャルな海外からのチョコストーリーを知って食べる。そういうチョコの楽しみ方と文化を作っていきたい」と意気込む。
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