通販新聞社はこのほど、コールセンター事業を手がける企業の2021年度売上高を調査した。上位35社の合計売上高は1兆3230億3400万円で、20年度に比べ4・3%増加した。35社のうち増収企業は23社。通販企業からの業務受託が増えたほか、新型コロナウイルス関連など公共系の業務も前年度と同様に増加したとこともあり、業績を伸ばした企業が多く見られる。
コールセンター売上高ランキング35社の売上階層別状況や注目企業について見ていく。
1位はトランスコスモス。売上高は3540億8500万円(収益認識に関する会計基準を適用したため増減率は未記載)で、2位以下に2000億円以上の差を付けた。DXパートナーとして企業の経営、事業の変革を支援するDECサービス・BPOサービスの展開に加え、社会インフラとしてコロナ禍で政府・自治体・民間企業が推進する諸政策に関連する業務支援を行い、受注の増加につなげたという。
2位はベルシステム24ホールディングス。スポット需要や既存継続案件の売り上げが拡大したほか、伊藤忠商事など株主企業との協業強化によるシナジー案件も堅調に推移したことで増収になった。4位のりらいあコミュニケーションズは、一部業務の終了や縮小の影響で減収となった。
2倍以上増収も
300億円以上の売上規模となる5~11位の企業では、5位のNTTマーケティングアクトProCXは4月に事業継承したNTTマーケティングアクトの実績となる。NTTマーケティングアクトは昨年7月に一部事業をグループ会社へ引き継いでいた関係で24・7%減になった。6位のTMJはコロナに関連した自治体の業務が20年度に続き継続したほか、大手の既存クライアントの業務も順調に拡大して売上高が伸長した。
9位の日本トータルテレマーケティングは134・0%増と2倍以上の売上実績になった。コロナ関連のスポット業務を取り込んだほか、既存クライアンで健康食品や化粧品、アパレルなどの通販業務が拡大。さらに博報堂グループとの協業によるシナジー案件も堅調に推移したという。
11位のビーウィズは、コンタクトセンター・BPOサービスで「ライフライン」「金融」「流通」「情報通信」をターゲットとし、専門性を高めて各業界に必要とされるサービスの企画や提案力の向上、品質の向上を図ることで順調に受託数を伸ばした。
200億円台の中堅と言える階層の企業では、12位の日立システムズはコロナ禍の投資削減による大口案件の売上減少で減収になった。15位の富士通コミュニケーションサービスは減収となったが、ここ数年、収益性を重視した事業に取り組んでおり、利益面で成果を挙げているという。
17位のキューアンドエーはグループ売上高(ディー・キュービック、ランゲージワンを含む)が0・6%増。コロナ対応による自治体からの案件が増加したほか、DX化推進でのトータルサポートや営業支援業務の提供も拡大した。
売上高100億円台の企業では、19位のかんでんCSフォーラムが1・8%増。グループ企業向け以外の外販が10億を超える実績になり、そのうち通販企業向けも伸びを見せた。
20位のWOWOWコミュニケーションズは6・2%増で、コロナ関連業務の受託やデジタルマーケティング業務で増収につながった。
2桁増企業多く
100億円未満となる21位以下は、9社が2桁の増収を果たした。通販企業からの受託が大半となる28位のエン・コンシェルは、新規クライアントの営業強化とアウトバウンド業務拡大から増収。公共案件も増加した。
29位のベルウェール渋谷は、官庁や自治体などからコロナ関連をはじめとする公共系業務の受託が増加。一般企業向け業務においても広い業種の新規クライアントから数多く受託するなどで、2桁の伸びにつながった。
33位のアイ・エヌ・ジー・ドットコムは、健康食品や化粧品の通販コールセンター業務の案件が増えたほか、コロナ関連の予約コールセンターなどで売り上げを伸ばした。
34位のTACTは21年1月以降、コロナ感染者数増加に伴い緊急事態宣言が長期化、それによる事業者向け給付金手続きのコールセンター、バックオフィス業務の大規模案件を受託。また、コールセンター自動応答サービス「AIコンシェルジュ」が通販企業や公共インフラ企業での活用が始まったことも増収に寄与した。
研修内容の充実化とオンライン化が進展
コールセンターの人材育成最新動向
コールセンターの主役と言えるオペレーター、スーパーバイザーといった人材の育成にコールセンター事業者が一層注力するようになっている。仕事に魅力や関心を抱かせていくことが、その成果にも直結するだけに、研修や教育制度の整備・充実化は欠かせない。一方、コロナ禍にあって研修のオンライン化の動きも大きく進展している。注目コールセンター企業の人材育成の最新動向を見る。
21年度に新たな研修体系導入、キャリアプラン描きやすい体制に
りらいあコミュニケーションズ 人事本部長
黒澤慎悟氏
当社の研修は、大きく2つの体系に分類できる。ひとつはオペレーション、つまり実際にサービスを提供するための「りらいあオペレーションスクール」という研修体系。もうひとつは正社員向けの「りらいあカレッジ」であり、オペレーションに加えてビジネスの基礎的な知識やマネジメントについて必要な研修を行っている。
「りらいあオペレーションスクール」では、オペレーターからセンターのマネージャーまでを対象としたそれぞれのコースを設けている。入社したオペレーターからセンター運営を担うマネージャーまでの教育を体系化した教育プログラムである。
以前は「SV学校」と称しスーパーバイザー(SV)向けの研修プログラムは用意していたが、これはSVやマネージャーなどの管理者向けに特化していた。つまりオペレーターはオペレーター、SVはSV、マネージャーはマネージャーという形で別々に整理していた。しかし、当社でマネージャーとなる人材はオペレーターで入社し、リーダー、SV、そしてマネージャーとステップアップしていくケースが多い。つまり長期的に活躍する人材が大変多い職場となっている。
企業にとって長期的に働ける環境を整えることは重要なことであり、それには教育体系が大いに関連する。そこで、教育環境をしっかり整備し、個々の能力を引き出しながら活躍してもらうため、以前の断片的だった教育体系からの改革に着手し、ようやく前期に「りらいあオペレーションスクール」として体制が整った。
この体制によって実際に働いていただく従業員がキャリアプランを描きやすくなった。最初にアルバイトで入社して実際に働いてみたら「面白そうじゃないか」と関心を高めてもらい、そしていろいろなことにチャレンジしていこうという好奇心を強めていくようになり、その思いにも応えられるよう体系を提示できるようになっている。
オペレーターからSVへキャリアアップする場合、まず「SVコース」の研修を受講してもらうことなる。ここで管理者としての基礎をしっかりと学んでいて、実践上でもきちん対応できるということがSVへの登用条件のひとつとなる。それに加え、スキルや技術面だけでなく、多くの人たちと仕事をしていく立場になるので、倫理観や人間力というような面なども確認して、総合的に判断していくことになる。
SVコースの研修内容は多岐にわたりボリュームもあるが、「基礎」と「応用」で構成され、段階的に学べるようになっている。
人材マネジメント観点でのカリキュラムでは人に接する態度、目標設定の仕方、面談の仕方などが組まれている。加えて、オペレーション実務に関わる研修やマニュアルの作成方法、センターのKPI管理などテクニカル面の研修も網羅している。また、法規制について、特商法や各種関連法令、労務面の法令についても学ぶ。
このほかに、様々な部署が個別に実施する研修もある。例えば、DX戦略本部が提供する新たなサービスに関する研修、法務部門が提供する契約関連などの研修、人事から提供する面談研修(部下との個別面談に関するもの)など。テーマごとに提供しているので、本人が希望する研修を選んで受けることができるようになっている。
さらにSVの次のステップとなるマネージャーには、「マネジャーコース」を用意し、組織マネジメント力と業務責任者として求められるスキルを身につけられるようになっている。
当社のりらいあオペレーションスクールは、オペレーション現場で必要な教育を必要なタイミングで提供し、所属やエリアを問わずに同質の教育を受けられるのが特長である。
また、キャリアの変遷に応じ計画的に従業員の成長をサポートすることで、多様な人材が長期的に活躍し、結果として企業価値を高めていくことを目指している。
現場の実践研修重視、リーダーSV教育の改善を
トランスコスモス デジタルマーケティング・ECコンタクトセンター統括デジタルカスタマーコミュニケーション統括 人財開発本部 本部長
中尾 順子 氏
トランスコスモスは全国に数多くのコンタクトセンターを有し、コミュニケーター(オペレーター)とスーパーバイザー(SV)に対しての教育は現場で行うことを基本としている。ただ、基礎となる部分についてはコンタクトセンター部門で統一した研修を用意している。
リーダーやSVの育成では、独自の認定制度を実施している。今期から注力しているポイントでもあるのだが、当社のノウハウに基づくワークブックを活用した新たな取り組みを行っている。これまでも認定制度自体はあったが、より現場でOJTをしながらリーダーやSVの役割を学んだ上で、認定、登用する制度に変更した。
OJTを中心にしたワークブックによる教育は、抜けや漏れのないようにトレーニングをできるようにしているのが大きな特徴となる。全国各センターのトレーニング担当者がリーダーやSVを育成した上で、認定、登用していく制度となっている。
以前は、上司がリーダーやSVの認定研修を受けるよう勧めて、一定の研修後に認定を受けたものの、現場からはあまり実践的でないという声も少なくなかった。それは全体研修でリーダーやSVの認定希望者を集め、その後の試験で合格者を認定していたためだった。研修に頼った教育だけでなくより現場で実践に即して教育していく方が、最善と判断した。
リーダーとSVの違いは、50人程度が在籍するコンタクトセンターを例にすれば、7~8人あるいは10人でチームを構成するが、そのチームを見るのがリーダーであり、さらにそのチーム2~3単位をまとめて管理するのがSVの役割となる。リーダーは基本的にメンバー一人ひとりのエスカレーションを受けて、内容をチェックしたり、シフト管理だったり、今週の運営をどうしていこうかというところを考えていったりといったことを行う。一方、SVは全体の呼量を管理したりと、もう少し長いスパンでの観点からの業務施策や育成などを担当する。
いずれにしても、リーダーやSVに求められているのは、事業ミッション、つまりクライアント企業のミッションを理解して、それに沿った運営を行っていくこと。そのために、センターごとにクライアント企業のビジョンや、ありたい姿を把握した上で、我々がどうあるべきかを考えて行動していこうという文化のようなものを作っていくことが重要になると考える。
それは、まさにリーダーやSVがそのような思いを抱きながら行動していくことで、全チームで共有できるものでもある。その意味では、より重要なのはスキルアップというよりも、マインドをどのように持ち、クライアントに向けて何をできるかということを能動的に働きかけるようになることとも言えるだろう。
この点は現在、非常に注力している。教育という面もあるが、カルチャーを浸透させるということをより重視している。
昨今、コンタクトセンターは従来のように問い合わせを受けて対応していくということだけではなくなっている。そして人以外の対応も受け入れられるようになり、特にEC・通販の企業はそうだろうと思うが、顧客体験の部分を重要視している。コンタクトセンターの顧客の声を顧客体験向上に活かしていくことが非常に大事な要素と考えている。
そこでDX化という点から、コミュニケーションチャネルがデジタル化していき、電話だけでなくてソーシャルネットワークだったり、チャットだったり、いろいろなチャネルで応対できる体制が必要になる。私どもはチャットの認定制度「チャットオペレーション事務能力認定」も2年前にスタートしている。この認定を通じて、チャットオペレーションでの「お客様満足向上」と「上質な顧客体験づくり」を進めている。
アウトバウンド人材育成に着手、DX人材育成とともに差別化策に
かんでんCSフォーラム ソリューション部デジタルイノベーショングループ部長
平田 和義 氏
当社は昨年、アウトバウンドに特化したセンターを新たに設置した。通販向けアウトバウンド業務などを強化するのが狙いだが、それに伴いアウトバウンド人材の育成も行っていくことにした。新規客の獲得が難しくなっている状況下、休眠顧客に対し再度アプローチしようという需要が高まっていることにも対応できるようにしている。
アウトバウンド業務自体は従来から展開していたが、社内に特別なプログラムを用意していなかった。適性のある人材をアサインして配置していた。そこで、アウトバウンド人材育成に向け、昨年6月からプロジェクトとして準備に取り組み、今年の春から育成プログラムとしてスタートさせている。成果がこれから期待できる。営業上の訴求手段としてもアウトバウンドへ注力することで、売り上げ拡大につなげていく。
一方、デジタル・AIに関連して、ボイスボット、音声認識、音声解析に注力している。通販受注を自動化することができるボイスボット「レオカニ」は音声の認識率は97・4%という高精度を誇り、また分かりやすいい料金体系の設定という特長がある。24時間365日の受注業務を行えるなどのアプローチを行っていく。3月下旬から正式に提供をスタートしている。
音声認識であってもオペレーターと同じ通話時間で可能であり、後処理も一切不要となっている。有人と比較した費用対効果に優れ、ライトプランでは1時間当たり33円で済む。
このデジタル・AIのカテゴリーにおける人材育成も強化。開発と分析のできるメンバーを10人増員中である。DX人材は、未経験者を採用して育成している。現在のメンバーも経験なしの段階から育成してきた。我々が行うのは、コーディングやセッティングが主であり、音声認識のエンジンを開発するのとは基本的に異なる。その音声認識のエンジンをチューニングすることであったり、パブリッククラウドサービスの設定作業を行うことが主な任務になる。初心者であっても元々素養があるような人材は半年程度で業務が行えるようになる。
そのような人材を採用する際に育成できる人材かどうかを見極めるノウハウも必要となり、これまでの経験が生きている。データベースを扱う素養のある人材などだが、その素養に加えて、コールセンターでの業務経験もあった方が良い。なぜかと言うと、エンジニア目線だけでなく、現場の目線があるとよりブラッシュアップすることに役立つ。
このようなDX人材に加えて、パブリッククラウドの販売も行っていくことが決まり、こちらも自社で育成してきエンジニアが活躍できる業務となるだろう。
パブリッククラドはジェネシスクラウドサービスのBPOパートナーとして「ジェネシスクラウドCX」の販売を手掛けていくことになった。BPO事業者としての販売は当社が初めてとなる。当社は2016年の初期からのユーザーであり、構築ノウハウを蓄積している。
自社のエンジニアがユーザー視点で理解しているところが強みとなる。構築ノウハウを社内で蓄積しており、そのノウハウを活かして提案していけると考える。自社のエンジニアを活用して、実際に現場で使っているのでユーザー視点で使い方を理解している。ベンダー側の視点と異なる提案が行える。レオカニもジェネシスクラウドベースで構築している。センターを構築するノウハウを加味して拡販していきたい。外販しようとなると皆のモチベーションが上がると考えている。
内製の講座でSV育成、一昨年から認定制度もスタート
ビーウィズ 執行役員 Chief Quality Officer
仲江 洋美 氏
私は品質マネジメント部の部長も兼任しているが、その品質マネジメント部が担っているのが主にSV教育であり、そして、SVの育成に関する環境が十分に整備されているのが当社の特長と言える。アウトソーサー企業として各現場でのオペレーター育成の質を高めるために、SVがオペレーターを育てる力を磨くことに重きを置いている制度設計となる。
SV向けには20講座ほどを用意している。すべて内製の講座であり、オリジナルの教材を用意している。クレーム対応などは研修事業会社でもお持ちと思うが、一方で、SVに特化したスキルであるエスカレーション対応に関する研修などは、自社でのノウハウに基づいて考案してきた。エスカレーション講座やトークスクリプト作成講座、業務フロー作成講座、KPIに関する講座などSV特有の講座については、創業当初から22年間にわたり作り上げ、現在も毎日何かしらの講座を実施するなど定着している。
このように取り組んできたのは、SVがそれまでに積み上げてきた現場のノウハウを言語化しようという試みが元になっていると言える。現場のSVの声を我々の部門がドキュメント化していくというような作業を行って作り上げた。今でも新しい講座を作る際には現場のSVらの声が重要な要素になっている。
一昨年から「初級SV認定」「中級SV認定」を設けた。SVとして1人前に仕事ができるのが初級SVで、中級になると自主的に改善活動を行えるなど、そのような制度設計になっている。
1年半で初級、3年で中級を目指していただく。講座の内容は、中核となるSVとしての心構え・立ち居振る舞いといったような研修の場合は、丸1日コースとなるが、現在はオンラインで受講できるようにしている。コロナ前は全国8都市で各エリアのメンバーが集合して講座を設けていた。コロナ後は、1日がかりの講座もオンラインで受けられるようにしている。一方でエスカレーション講座やクレーム対応講座など単独スキル講座の場合、講義と実践があり、講義についてはeラーニングあるいは講師のリアルタイム講義から選べるようにしている。選択肢を増やすことで、多忙といわれるSVでも受講しやすいようにしている。
そもそもコロナ前においても、核となる研修は現地で行っていたほか、テレビ会議システムを活用し、全国中継も行っていた。そのためオンライン授業については慣れていた。ただ、当時はzoomやTeamsといったオンライン会議システムが普及していなかった。テレビ会議システムと違って、オンラインは1人1人それぞれの顔が映し出され、講師も全員の顔を見て研修できるメリットは大きい。
中級SVの先は専門性の高い研修を用意している。「総合マネジメント」や「QA(品質保証)スペシャリスト」、「マーケティング」、「BPOマネジメント」などで、QAを専門とする人もいれば、通販業務向けに用意したマーケティング領域などに興味を抱く人もいる。これは受講しただけでは合格とならず、レポート提出等が必要になる。専門コースはスタートして1年で、数人が受講するものもあれば20人が受講しているコースもある。何度か講師とレポートを通じてやり取りをする中で、専門性を身に付けてい
多様な応対が行える人材を、自ら思考してCX向上に貢献
富士通コミュニケーションサービス コーポレート本部 CSL University
統括部長 松本 祐一 氏
姪川 真巳子 氏
富士通コミュニケーションサービス(略称=CSL)において人材育成を担当する「CSL University(CSLユニバーシティー)」は、独立した部署として約20人体制で運営している。前身は2006年に立ち上げた「CSLカレッジ」で、19年にCSLユニバーシティーへと改組しカリキュラム等を引き継いで業務を行っている。コンタクトセンターにおいて従前と比べ幅広いクライアントを対象とするようになったため、現部署は基本的なスキルの習得に留まらず、多様な目的での人材育成をミッションとしている。
主な取り組みに、電話応対トレーニングやスーパーバイザー(SV)の養成・認定がある。当社では新人受入れの際に研修を実施しているが、新人といっても中途採用者と新卒社員の2タイプあり、それぞれに適応するカリキュラムを提供している。毎月実施しているのが入社時研修であり、最低限必要となる電話応対のスキルを習得してもらう内容となる。横浜と九州の2拠点で対応するが、横浜ではコロナ禍でオンライン研修も行うようにした。一方、新卒社員向けには4月より1カ月間、社会人の考え方やマナーの習得などの研修を行っている。
入社時以外においても先を見据えキャリアアップのための研修も設けている。電話応対に限らず、ビジネスに必要なエクセルの使い方、さらにハイスキル習得のための研修も用意している。
いずれの研修とも受講して終わりではない。研修スタイルも変化しており、知識面においては、もはや自分で調べることができる時代であり、逆に言えば講師がいても話を良く聞いていないというケースがあってもおかしくない。そこで、どのように能動的に学んでもらうかを考えていかないと、研修の時間が双方にとって無駄になってしまう。講師と受講者という関係での研修だけでなく、参加型、つまり知識を持ち寄ってシェアしていくようなワークショップ型研修を取り入れている。”研修=集合して実施”というスタイルでないものが必要になっている。
知識をインプットするような研修を会社としてどれだけ用意するのか、初心者はある程度共通の研修で良いが、一定の経験や知識をもっている人材は求めるものが多様である。インプット系の研修と人が教えるものとのバランスを急いで整えなければならないと考えている。
また、昨今はノンボイス系の業務も増えている。いわゆるコールセンター業務に限定せず、さまざまな業務への対応も必要となり、そのための研修にも注力している。メールに関しては従来から行っているが、ライブチャット対応向けの研修も始めた。業務の品質アップに向け、まずは基本編を提供している。当社はCXをテーマに掲げているので、その概略を理解する研修も実施している。
全社での研修の受講状況は、20年度が約4500人(およそ半数が正社員)のうち、3773人だった。研修のオンライン化を進めていることで1000人程度増加した。目標としては正社員の場合、1人当たり年2回以上を掲げている。
今年度はオンライン化したものを、いつでも閲覧できるように動画化を進めていく考えだ。受講タイミングの合わない人がいつでも研修できるようにする。オンライン研修はコロナ禍以降、そのニーズが高まっている。
当社では、先の見えない時代のビジネス環境の中、”CX”推進を強化している。相手のリクエストにしっかり対応するということはもちろんだが、それ以上に自分自身で相手の見えない部分を想像し、ベターを考えられる人材の育成が重要と考える。このままで良いのかという”問いかけ”を常に発し、また、この仕事で誰が喜ぶかを意識することが望まれる。すべての人がこのような問いかけができるようになれば、それが強みになるはず。
現場とSVで情報共有、ベテランのスキルが最高の手本に
アイ・エヌ・ジー・ドットコム 代表取締役社長
澤田 英士 氏
当社では、管理者の能力を見極めながら工夫して人材を育成する仕組みがある。例えばスーパーバイザー(SV)は、管理者としてオペレーターの教育業務をはじめ、トークの台本や準備資料を作成したり、データ分析といった様々な作業を行っている。以前はこれをチームのSVが1人で行っていたが、SV個人にも得意・不得意の分野がある。そこで、SVそれぞれが持つ得意な分野を中心に担当してもらい、管理業務を回せるようにしている。
そして、外部の動画研修も活用しており、コミュニケーションやビジネス基礎力・マナーなど、スタッフのレベルに応じてカリキュラムを決めて、受講してもらうようにもしている。現在は業容拡大のため、中途も含めて毎月オペレーターの採用活動を行っている状況。オペレーターの中には(異業種からの)転職者もいるため、こうした研修から学べたことは多いとの反応があった。
また、当社の場合、ベテランで年配のオペレーターが揃っており、関西を拠点にしていることから、その地域柄、トークスキルの高い人材が多いことも特徴となる。キャリアもあるため、言われたことをただやるだけではなく、成約に上手くつながった応対の流れなどを積極的にSVと情報共有してくれる。オペレーターとSVの距離が近くて話しやすい環境ができているからでもあるが、やはり、彼女たち自身が現場で良い見本となってくれるのは大きい。
そのほか、顧客対応のスキルを上げていくという点では、以前からオペレーターに対して日本化粧品検定や毛髪診断士、通販エキスパート検定などの資格を取得するよう声掛けを行っている。その結果、化粧品検定などは徐々に社内での有資格者が増えており、今では、国内に4つあるすべての拠点で資格者がいる状況。
関連して、医薬品の通販市場が拡大していることから、薬剤師を雇用してコールセンター業務で専門的に対応できる仕組みをこの秋から進めていく予定。
今年度の全社的な取り組みとしては、7月からタレントの藤原紀香さんをホームページや販促物などに起用している。著名人を使って会社のブランドイメージを強く打ち出していき、会社を知ってもらうという狙いがある。
また、拠点については、今年の秋に大阪の本社近くに新センターを開設する予定。コロナのこともあるので、(有事の際に)近くに拠点を持つことでスタッフの補充などもしやすくなるのではないだろうか。
並行して、24時間対応の案件にも力を入れていく。他社のコールセンターでは夜間の稼働を縮小しているケースもあるが、先ほど話した新センターでは大手テレビショッピング企業の案件を24時間対応で受託することが決まっている。今後も夜間の案件対応は積極的に取り込んでいく考え。
そのほかにも、2020年に産経新聞社との合弁で、市場調査など行う産経リサーチ&データを設立し、シニア層に対するリサーチ業務を展開している。これは産経新聞グループが手がけるイベントや展覧会、ネットサービスの利用者などから集めたシニア層が母体の会員約40万人のデータベースを活用しているもの。
これまでにも、通販企業が商品モニター企画で利用されたり、通販サイトに掲載する「顧客の声」を集めたり、パッケージカラーを選定する際の判断材料とした事例などがある。新聞社との取り組みであるため信頼性もきちんと担保しながら、シニアに特化したリサーチが行えることを強みにしている。今後も、様々な形で通販企業向けの提案に力を入れていく考え。
コールセンター売上高ランキング35社の売上階層別状況や注目企業について見ていく。
1位はトランスコスモス。売上高は3540億8500万円(収益認識に関する会計基準を適用したため増減率は未記載)で、2位以下に2000億円以上の差を付けた。DXパートナーとして企業の経営、事業の変革を支援するDECサービス・BPOサービスの展開に加え、社会インフラとしてコロナ禍で政府・自治体・民間企業が推進する諸政策に関連する業務支援を行い、受注の増加につなげたという。
2位はベルシステム24ホールディングス。スポット需要や既存継続案件の売り上げが拡大したほか、伊藤忠商事など株主企業との協業強化によるシナジー案件も堅調に推移したことで増収になった。4位のりらいあコミュニケーションズは、一部業務の終了や縮小の影響で減収となった。
2倍以上増収も
300億円以上の売上規模となる5~11位の企業では、5位のNTTマーケティングアクトProCXは4月に事業継承したNTTマーケティングアクトの実績となる。NTTマーケティングアクトは昨年7月に一部事業をグループ会社へ引き継いでいた関係で24・7%減になった。6位のTMJはコロナに関連した自治体の業務が20年度に続き継続したほか、大手の既存クライアントの業務も順調に拡大して売上高が伸長した。
9位の日本トータルテレマーケティングは134・0%増と2倍以上の売上実績になった。コロナ関連のスポット業務を取り込んだほか、既存クライアンで健康食品や化粧品、アパレルなどの通販業務が拡大。さらに博報堂グループとの協業によるシナジー案件も堅調に推移したという。
11位のビーウィズは、コンタクトセンター・BPOサービスで「ライフライン」「金融」「流通」「情報通信」をターゲットとし、専門性を高めて各業界に必要とされるサービスの企画や提案力の向上、品質の向上を図ることで順調に受託数を伸ばした。
200億円台の中堅と言える階層の企業では、12位の日立システムズはコロナ禍の投資削減による大口案件の売上減少で減収になった。15位の富士通コミュニケーションサービスは減収となったが、ここ数年、収益性を重視した事業に取り組んでおり、利益面で成果を挙げているという。
17位のキューアンドエーはグループ売上高(ディー・キュービック、ランゲージワンを含む)が0・6%増。コロナ対応による自治体からの案件が増加したほか、DX化推進でのトータルサポートや営業支援業務の提供も拡大した。
売上高100億円台の企業では、19位のかんでんCSフォーラムが1・8%増。グループ企業向け以外の外販が10億を超える実績になり、そのうち通販企業向けも伸びを見せた。
20位のWOWOWコミュニケーションズは6・2%増で、コロナ関連業務の受託やデジタルマーケティング業務で増収につながった。
2桁増企業多く
100億円未満となる21位以下は、9社が2桁の増収を果たした。通販企業からの受託が大半となる28位のエン・コンシェルは、新規クライアントの営業強化とアウトバウンド業務拡大から増収。公共案件も増加した。
29位のベルウェール渋谷は、官庁や自治体などからコロナ関連をはじめとする公共系業務の受託が増加。一般企業向け業務においても広い業種の新規クライアントから数多く受託するなどで、2桁の伸びにつながった。
33位のアイ・エヌ・ジー・ドットコムは、健康食品や化粧品の通販コールセンター業務の案件が増えたほか、コロナ関連の予約コールセンターなどで売り上げを伸ばした。
34位のTACTは21年1月以降、コロナ感染者数増加に伴い緊急事態宣言が長期化、それによる事業者向け給付金手続きのコールセンター、バックオフィス業務の大規模案件を受託。また、コールセンター自動応答サービス「AIコンシェルジュ」が通販企業や公共インフラ企業での活用が始まったことも増収に寄与した。
研修内容の充実化とオンライン化が進展
コールセンターの人材育成最新動向
コールセンターの主役と言えるオペレーター、スーパーバイザーといった人材の育成にコールセンター事業者が一層注力するようになっている。仕事に魅力や関心を抱かせていくことが、その成果にも直結するだけに、研修や教育制度の整備・充実化は欠かせない。一方、コロナ禍にあって研修のオンライン化の動きも大きく進展している。注目コールセンター企業の人材育成の最新動向を見る。
21年度に新たな研修体系導入、キャリアプラン描きやすい体制に
りらいあコミュニケーションズ 人事本部長
黒澤慎悟氏
当社の研修は、大きく2つの体系に分類できる。ひとつはオペレーション、つまり実際にサービスを提供するための「りらいあオペレーションスクール」という研修体系。もうひとつは正社員向けの「りらいあカレッジ」であり、オペレーションに加えてビジネスの基礎的な知識やマネジメントについて必要な研修を行っている。
「りらいあオペレーションスクール」では、オペレーターからセンターのマネージャーまでを対象としたそれぞれのコースを設けている。入社したオペレーターからセンター運営を担うマネージャーまでの教育を体系化した教育プログラムである。
以前は「SV学校」と称しスーパーバイザー(SV)向けの研修プログラムは用意していたが、これはSVやマネージャーなどの管理者向けに特化していた。つまりオペレーターはオペレーター、SVはSV、マネージャーはマネージャーという形で別々に整理していた。しかし、当社でマネージャーとなる人材はオペレーターで入社し、リーダー、SV、そしてマネージャーとステップアップしていくケースが多い。つまり長期的に活躍する人材が大変多い職場となっている。
企業にとって長期的に働ける環境を整えることは重要なことであり、それには教育体系が大いに関連する。そこで、教育環境をしっかり整備し、個々の能力を引き出しながら活躍してもらうため、以前の断片的だった教育体系からの改革に着手し、ようやく前期に「りらいあオペレーションスクール」として体制が整った。
この体制によって実際に働いていただく従業員がキャリアプランを描きやすくなった。最初にアルバイトで入社して実際に働いてみたら「面白そうじゃないか」と関心を高めてもらい、そしていろいろなことにチャレンジしていこうという好奇心を強めていくようになり、その思いにも応えられるよう体系を提示できるようになっている。
オペレーターからSVへキャリアアップする場合、まず「SVコース」の研修を受講してもらうことなる。ここで管理者としての基礎をしっかりと学んでいて、実践上でもきちん対応できるということがSVへの登用条件のひとつとなる。それに加え、スキルや技術面だけでなく、多くの人たちと仕事をしていく立場になるので、倫理観や人間力というような面なども確認して、総合的に判断していくことになる。
SVコースの研修内容は多岐にわたりボリュームもあるが、「基礎」と「応用」で構成され、段階的に学べるようになっている。
人材マネジメント観点でのカリキュラムでは人に接する態度、目標設定の仕方、面談の仕方などが組まれている。加えて、オペレーション実務に関わる研修やマニュアルの作成方法、センターのKPI管理などテクニカル面の研修も網羅している。また、法規制について、特商法や各種関連法令、労務面の法令についても学ぶ。
このほかに、様々な部署が個別に実施する研修もある。例えば、DX戦略本部が提供する新たなサービスに関する研修、法務部門が提供する契約関連などの研修、人事から提供する面談研修(部下との個別面談に関するもの)など。テーマごとに提供しているので、本人が希望する研修を選んで受けることができるようになっている。
さらにSVの次のステップとなるマネージャーには、「マネジャーコース」を用意し、組織マネジメント力と業務責任者として求められるスキルを身につけられるようになっている。
当社のりらいあオペレーションスクールは、オペレーション現場で必要な教育を必要なタイミングで提供し、所属やエリアを問わずに同質の教育を受けられるのが特長である。
また、キャリアの変遷に応じ計画的に従業員の成長をサポートすることで、多様な人材が長期的に活躍し、結果として企業価値を高めていくことを目指している。
現場の実践研修重視、リーダーSV教育の改善を
トランスコスモス デジタルマーケティング・ECコンタクトセンター統括デジタルカスタマーコミュニケーション統括 人財開発本部 本部長
中尾 順子 氏
トランスコスモスは全国に数多くのコンタクトセンターを有し、コミュニケーター(オペレーター)とスーパーバイザー(SV)に対しての教育は現場で行うことを基本としている。ただ、基礎となる部分についてはコンタクトセンター部門で統一した研修を用意している。
リーダーやSVの育成では、独自の認定制度を実施している。今期から注力しているポイントでもあるのだが、当社のノウハウに基づくワークブックを活用した新たな取り組みを行っている。これまでも認定制度自体はあったが、より現場でOJTをしながらリーダーやSVの役割を学んだ上で、認定、登用する制度に変更した。
OJTを中心にしたワークブックによる教育は、抜けや漏れのないようにトレーニングをできるようにしているのが大きな特徴となる。全国各センターのトレーニング担当者がリーダーやSVを育成した上で、認定、登用していく制度となっている。
以前は、上司がリーダーやSVの認定研修を受けるよう勧めて、一定の研修後に認定を受けたものの、現場からはあまり実践的でないという声も少なくなかった。それは全体研修でリーダーやSVの認定希望者を集め、その後の試験で合格者を認定していたためだった。研修に頼った教育だけでなくより現場で実践に即して教育していく方が、最善と判断した。
リーダーとSVの違いは、50人程度が在籍するコンタクトセンターを例にすれば、7~8人あるいは10人でチームを構成するが、そのチームを見るのがリーダーであり、さらにそのチーム2~3単位をまとめて管理するのがSVの役割となる。リーダーは基本的にメンバー一人ひとりのエスカレーションを受けて、内容をチェックしたり、シフト管理だったり、今週の運営をどうしていこうかというところを考えていったりといったことを行う。一方、SVは全体の呼量を管理したりと、もう少し長いスパンでの観点からの業務施策や育成などを担当する。
いずれにしても、リーダーやSVに求められているのは、事業ミッション、つまりクライアント企業のミッションを理解して、それに沿った運営を行っていくこと。そのために、センターごとにクライアント企業のビジョンや、ありたい姿を把握した上で、我々がどうあるべきかを考えて行動していこうという文化のようなものを作っていくことが重要になると考える。
それは、まさにリーダーやSVがそのような思いを抱きながら行動していくことで、全チームで共有できるものでもある。その意味では、より重要なのはスキルアップというよりも、マインドをどのように持ち、クライアントに向けて何をできるかということを能動的に働きかけるようになることとも言えるだろう。
この点は現在、非常に注力している。教育という面もあるが、カルチャーを浸透させるということをより重視している。
昨今、コンタクトセンターは従来のように問い合わせを受けて対応していくということだけではなくなっている。そして人以外の対応も受け入れられるようになり、特にEC・通販の企業はそうだろうと思うが、顧客体験の部分を重要視している。コンタクトセンターの顧客の声を顧客体験向上に活かしていくことが非常に大事な要素と考えている。
そこでDX化という点から、コミュニケーションチャネルがデジタル化していき、電話だけでなくてソーシャルネットワークだったり、チャットだったり、いろいろなチャネルで応対できる体制が必要になる。私どもはチャットの認定制度「チャットオペレーション事務能力認定」も2年前にスタートしている。この認定を通じて、チャットオペレーションでの「お客様満足向上」と「上質な顧客体験づくり」を進めている。
アウトバウンド人材育成に着手、DX人材育成とともに差別化策に
かんでんCSフォーラム ソリューション部デジタルイノベーショングループ部長
平田 和義 氏
当社は昨年、アウトバウンドに特化したセンターを新たに設置した。通販向けアウトバウンド業務などを強化するのが狙いだが、それに伴いアウトバウンド人材の育成も行っていくことにした。新規客の獲得が難しくなっている状況下、休眠顧客に対し再度アプローチしようという需要が高まっていることにも対応できるようにしている。
アウトバウンド業務自体は従来から展開していたが、社内に特別なプログラムを用意していなかった。適性のある人材をアサインして配置していた。そこで、アウトバウンド人材育成に向け、昨年6月からプロジェクトとして準備に取り組み、今年の春から育成プログラムとしてスタートさせている。成果がこれから期待できる。営業上の訴求手段としてもアウトバウンドへ注力することで、売り上げ拡大につなげていく。
一方、デジタル・AIに関連して、ボイスボット、音声認識、音声解析に注力している。通販受注を自動化することができるボイスボット「レオカニ」は音声の認識率は97・4%という高精度を誇り、また分かりやすいい料金体系の設定という特長がある。24時間365日の受注業務を行えるなどのアプローチを行っていく。3月下旬から正式に提供をスタートしている。
音声認識であってもオペレーターと同じ通話時間で可能であり、後処理も一切不要となっている。有人と比較した費用対効果に優れ、ライトプランでは1時間当たり33円で済む。
このデジタル・AIのカテゴリーにおける人材育成も強化。開発と分析のできるメンバーを10人増員中である。DX人材は、未経験者を採用して育成している。現在のメンバーも経験なしの段階から育成してきた。我々が行うのは、コーディングやセッティングが主であり、音声認識のエンジンを開発するのとは基本的に異なる。その音声認識のエンジンをチューニングすることであったり、パブリッククラウドサービスの設定作業を行うことが主な任務になる。初心者であっても元々素養があるような人材は半年程度で業務が行えるようになる。
そのような人材を採用する際に育成できる人材かどうかを見極めるノウハウも必要となり、これまでの経験が生きている。データベースを扱う素養のある人材などだが、その素養に加えて、コールセンターでの業務経験もあった方が良い。なぜかと言うと、エンジニア目線だけでなく、現場の目線があるとよりブラッシュアップすることに役立つ。
このようなDX人材に加えて、パブリッククラウドの販売も行っていくことが決まり、こちらも自社で育成してきエンジニアが活躍できる業務となるだろう。
パブリッククラドはジェネシスクラウドサービスのBPOパートナーとして「ジェネシスクラウドCX」の販売を手掛けていくことになった。BPO事業者としての販売は当社が初めてとなる。当社は2016年の初期からのユーザーであり、構築ノウハウを蓄積している。
自社のエンジニアがユーザー視点で理解しているところが強みとなる。構築ノウハウを社内で蓄積しており、そのノウハウを活かして提案していけると考える。自社のエンジニアを活用して、実際に現場で使っているのでユーザー視点で使い方を理解している。ベンダー側の視点と異なる提案が行える。レオカニもジェネシスクラウドベースで構築している。センターを構築するノウハウを加味して拡販していきたい。外販しようとなると皆のモチベーションが上がると考えている。
内製の講座でSV育成、一昨年から認定制度もスタート
ビーウィズ 執行役員 Chief Quality Officer
仲江 洋美 氏
私は品質マネジメント部の部長も兼任しているが、その品質マネジメント部が担っているのが主にSV教育であり、そして、SVの育成に関する環境が十分に整備されているのが当社の特長と言える。アウトソーサー企業として各現場でのオペレーター育成の質を高めるために、SVがオペレーターを育てる力を磨くことに重きを置いている制度設計となる。
SV向けには20講座ほどを用意している。すべて内製の講座であり、オリジナルの教材を用意している。クレーム対応などは研修事業会社でもお持ちと思うが、一方で、SVに特化したスキルであるエスカレーション対応に関する研修などは、自社でのノウハウに基づいて考案してきた。エスカレーション講座やトークスクリプト作成講座、業務フロー作成講座、KPIに関する講座などSV特有の講座については、創業当初から22年間にわたり作り上げ、現在も毎日何かしらの講座を実施するなど定着している。
このように取り組んできたのは、SVがそれまでに積み上げてきた現場のノウハウを言語化しようという試みが元になっていると言える。現場のSVの声を我々の部門がドキュメント化していくというような作業を行って作り上げた。今でも新しい講座を作る際には現場のSVらの声が重要な要素になっている。
一昨年から「初級SV認定」「中級SV認定」を設けた。SVとして1人前に仕事ができるのが初級SVで、中級になると自主的に改善活動を行えるなど、そのような制度設計になっている。
1年半で初級、3年で中級を目指していただく。講座の内容は、中核となるSVとしての心構え・立ち居振る舞いといったような研修の場合は、丸1日コースとなるが、現在はオンラインで受講できるようにしている。コロナ前は全国8都市で各エリアのメンバーが集合して講座を設けていた。コロナ後は、1日がかりの講座もオンラインで受けられるようにしている。一方でエスカレーション講座やクレーム対応講座など単独スキル講座の場合、講義と実践があり、講義についてはeラーニングあるいは講師のリアルタイム講義から選べるようにしている。選択肢を増やすことで、多忙といわれるSVでも受講しやすいようにしている。
そもそもコロナ前においても、核となる研修は現地で行っていたほか、テレビ会議システムを活用し、全国中継も行っていた。そのためオンライン授業については慣れていた。ただ、当時はzoomやTeamsといったオンライン会議システムが普及していなかった。テレビ会議システムと違って、オンラインは1人1人それぞれの顔が映し出され、講師も全員の顔を見て研修できるメリットは大きい。
中級SVの先は専門性の高い研修を用意している。「総合マネジメント」や「QA(品質保証)スペシャリスト」、「マーケティング」、「BPOマネジメント」などで、QAを専門とする人もいれば、通販業務向けに用意したマーケティング領域などに興味を抱く人もいる。これは受講しただけでは合格とならず、レポート提出等が必要になる。専門コースはスタートして1年で、数人が受講するものもあれば20人が受講しているコースもある。何度か講師とレポートを通じてやり取りをする中で、専門性を身に付けてい
多様な応対が行える人材を、自ら思考してCX向上に貢献
富士通コミュニケーションサービス コーポレート本部 CSL University
統括部長 松本 祐一 氏
姪川 真巳子 氏
富士通コミュニケーションサービス(略称=CSL)において人材育成を担当する「CSL University(CSLユニバーシティー)」は、独立した部署として約20人体制で運営している。前身は2006年に立ち上げた「CSLカレッジ」で、19年にCSLユニバーシティーへと改組しカリキュラム等を引き継いで業務を行っている。コンタクトセンターにおいて従前と比べ幅広いクライアントを対象とするようになったため、現部署は基本的なスキルの習得に留まらず、多様な目的での人材育成をミッションとしている。
主な取り組みに、電話応対トレーニングやスーパーバイザー(SV)の養成・認定がある。当社では新人受入れの際に研修を実施しているが、新人といっても中途採用者と新卒社員の2タイプあり、それぞれに適応するカリキュラムを提供している。毎月実施しているのが入社時研修であり、最低限必要となる電話応対のスキルを習得してもらう内容となる。横浜と九州の2拠点で対応するが、横浜ではコロナ禍でオンライン研修も行うようにした。一方、新卒社員向けには4月より1カ月間、社会人の考え方やマナーの習得などの研修を行っている。
入社時以外においても先を見据えキャリアアップのための研修も設けている。電話応対に限らず、ビジネスに必要なエクセルの使い方、さらにハイスキル習得のための研修も用意している。
いずれの研修とも受講して終わりではない。研修スタイルも変化しており、知識面においては、もはや自分で調べることができる時代であり、逆に言えば講師がいても話を良く聞いていないというケースがあってもおかしくない。そこで、どのように能動的に学んでもらうかを考えていかないと、研修の時間が双方にとって無駄になってしまう。講師と受講者という関係での研修だけでなく、参加型、つまり知識を持ち寄ってシェアしていくようなワークショップ型研修を取り入れている。”研修=集合して実施”というスタイルでないものが必要になっている。
知識をインプットするような研修を会社としてどれだけ用意するのか、初心者はある程度共通の研修で良いが、一定の経験や知識をもっている人材は求めるものが多様である。インプット系の研修と人が教えるものとのバランスを急いで整えなければならないと考えている。
また、昨今はノンボイス系の業務も増えている。いわゆるコールセンター業務に限定せず、さまざまな業務への対応も必要となり、そのための研修にも注力している。メールに関しては従来から行っているが、ライブチャット対応向けの研修も始めた。業務の品質アップに向け、まずは基本編を提供している。当社はCXをテーマに掲げているので、その概略を理解する研修も実施している。
全社での研修の受講状況は、20年度が約4500人(およそ半数が正社員)のうち、3773人だった。研修のオンライン化を進めていることで1000人程度増加した。目標としては正社員の場合、1人当たり年2回以上を掲げている。
今年度はオンライン化したものを、いつでも閲覧できるように動画化を進めていく考えだ。受講タイミングの合わない人がいつでも研修できるようにする。オンライン研修はコロナ禍以降、そのニーズが高まっている。
当社では、先の見えない時代のビジネス環境の中、”CX”推進を強化している。相手のリクエストにしっかり対応するということはもちろんだが、それ以上に自分自身で相手の見えない部分を想像し、ベターを考えられる人材の育成が重要と考える。このままで良いのかという”問いかけ”を常に発し、また、この仕事で誰が喜ぶかを意識することが望まれる。すべての人がこのような問いかけができるようになれば、それが強みになるはず。
現場とSVで情報共有、ベテランのスキルが最高の手本に
アイ・エヌ・ジー・ドットコム 代表取締役社長
澤田 英士 氏
当社では、管理者の能力を見極めながら工夫して人材を育成する仕組みがある。例えばスーパーバイザー(SV)は、管理者としてオペレーターの教育業務をはじめ、トークの台本や準備資料を作成したり、データ分析といった様々な作業を行っている。以前はこれをチームのSVが1人で行っていたが、SV個人にも得意・不得意の分野がある。そこで、SVそれぞれが持つ得意な分野を中心に担当してもらい、管理業務を回せるようにしている。
そして、外部の動画研修も活用しており、コミュニケーションやビジネス基礎力・マナーなど、スタッフのレベルに応じてカリキュラムを決めて、受講してもらうようにもしている。現在は業容拡大のため、中途も含めて毎月オペレーターの採用活動を行っている状況。オペレーターの中には(異業種からの)転職者もいるため、こうした研修から学べたことは多いとの反応があった。
また、当社の場合、ベテランで年配のオペレーターが揃っており、関西を拠点にしていることから、その地域柄、トークスキルの高い人材が多いことも特徴となる。キャリアもあるため、言われたことをただやるだけではなく、成約に上手くつながった応対の流れなどを積極的にSVと情報共有してくれる。オペレーターとSVの距離が近くて話しやすい環境ができているからでもあるが、やはり、彼女たち自身が現場で良い見本となってくれるのは大きい。
そのほか、顧客対応のスキルを上げていくという点では、以前からオペレーターに対して日本化粧品検定や毛髪診断士、通販エキスパート検定などの資格を取得するよう声掛けを行っている。その結果、化粧品検定などは徐々に社内での有資格者が増えており、今では、国内に4つあるすべての拠点で資格者がいる状況。
関連して、医薬品の通販市場が拡大していることから、薬剤師を雇用してコールセンター業務で専門的に対応できる仕組みをこの秋から進めていく予定。
今年度の全社的な取り組みとしては、7月からタレントの藤原紀香さんをホームページや販促物などに起用している。著名人を使って会社のブランドイメージを強く打ち出していき、会社を知ってもらうという狙いがある。
また、拠点については、今年の秋に大阪の本社近くに新センターを開設する予定。コロナのこともあるので、(有事の際に)近くに拠点を持つことでスタッフの補充などもしやすくなるのではないだろうか。
並行して、24時間対応の案件にも力を入れていく。他社のコールセンターでは夜間の稼働を縮小しているケースもあるが、先ほど話した新センターでは大手テレビショッピング企業の案件を24時間対応で受託することが決まっている。今後も夜間の案件対応は積極的に取り込んでいく考え。
そのほかにも、2020年に産経新聞社との合弁で、市場調査など行う産経リサーチ&データを設立し、シニア層に対するリサーチ業務を展開している。これは産経新聞グループが手がけるイベントや展覧会、ネットサービスの利用者などから集めたシニア層が母体の会員約40万人のデータベースを活用しているもの。
これまでにも、通販企業が商品モニター企画で利用されたり、通販サイトに掲載する「顧客の声」を集めたり、パッケージカラーを選定する際の判断材料とした事例などがある。新聞社との取り組みであるため信頼性もきちんと担保しながら、シニアに特化したリサーチが行えることを強みにしている。今後も、様々な形で通販企業向けの提案に力を入れていく考え。