テレビ東京ホールディングスの通販事業子会社のテレビ東京ダイレクトは5月から、長野県伊那市に展開する食品通販事業に特化したコールセンターを開設、稼働を開始した。同社と伊那市は2年前にPR活動支援などを含めた地域創生に関する包括連携を締結し、関係性も深く、地域活性化のためにも拠点誘致に応じたもの。伊那市とは包括連携の相手先という側面だけでなく、名産品を使って開発した商品がテレビ通販でヒットするなど主力の通販事業にもメリットが出てきている。競争が激化する通販ビジネスにおいて、競合が販売していない差別化できる商品の確保は各社共通の課題と言えるが、テレビ東京ダイレクトではその答えの1つとに「地域」を挙げる。「他では販売していないものは日本各地に埋もれたよい商品を発掘できるかどうか。それは地域とのコミュニケーションの中で生まれてくるはず」とする。テレビ東京ダイレクトの”地域”との取り組みの狙いや今後とは。
「念願だった自前のコールセンターをようやく持つことができた。オペレーターさんの意見を聞きながらよいコールセンターにしていきたい。また、伊那市のますますの発展の一助になれれば」。
5月20日、伊那市内に市所有の新施設「仕事と子育ての両立支援施設」(愛称・ママand)の竣工式(写真㊦=前列左から4番目)が行われ、同施設内に一角に開設したコールセンターを運営するテレビ東京ダイレクトの遠藤孝一社長は同式のあいさつでこう述べた。
このコールセンターは同社が展開する通販事業のうち、食品通販番組「虎ノ門市場」の受注対応や問い合わせを担当する。特徴はオペレーターとして働くスタッフは子供を連れて来ることができることだ。オペレーターが電話対応を行うワークスペース(写真㊤)のすぐ隣に、専門のスタッフが見守るキッズルーム(写真㊥)が併設されている作りで、間に設けられたガラス窓を通じて、親子が互いに確認することができ、母親は安心して働くことができるもの。同様のキッズスペース併設型コールセンターを全国で展開するママスクエアに業務委託して実現したもので、こうした形態のコールセンターとすることで伊那市の地域の雇用、さらには働くことが難しい子育て中の女性に働く場を提供し、地域活性化につなげていきたい狙いもあるようだ。
伊那市の白鳥孝市長も「伊那市では色々な企業を誘致しているが子育て中の女性が働ける職種は少なく、これまで手が付けられずにいた雇用が生まれることは嬉しい」と期待を寄せる。
現状、同コールセンターにオペレーターが18人、キッズスタッフ3人、スーパーバイザー2人の合計23人を雇用しているが、80人規模まで雇用可能とし、今後も採用者数を増やしていく考えだ。
同社がコールセンターの誘致に応じた背景は伊那市との深い関係性だ。2020年2月に伊那市の地域創生に向けて両者間で包括連携を締結。地域創生事業として同市から一定の対価を得て、テレビ東京ダイレクトが地上波やBSで放送する番組で伊那市の特産品や観光名所などを巡る旅行ツアーを紹介、販売したり、情報発信方法などをレクチャーする職員研修も行うなど取り組みを行ってきた。
ただ、伊那市とはPR関連事業を請け負う相手先という関係性だけでなく、主力の通販事業でも得難いパートナーとなりつつあるよう。これまでに伊那市に食材を使った味噌メンチカツやジビエカレーなど様々な伊那市の商品を「虎ノ門市場」で販売してきたが、特に昨年販売した同市の特産品である松茸を使って開発した「松茸ごはんの素」は受注開始からすぐ完売するなど好評だったという。
今年以降も松茸の販売のほか、同市の名産である糖度が非常に高いスイートコーンをはじめ、アスパラやリンゴやなし、ブドウなどの野菜や果物の頒布会を販売していく計画もあるという。
同社では伊那市をはじめとした地域創生事業を推進していくとともに、昨年12月にはクラブツーリズムと地域活性化事業で連携協定を締結して、クラブツーリズムが持つ地域ネットワークを使って、情報等を収集して各地域の商品の発掘を進めている。その一環として5月24日からはクラウドファンディングサイト「
ナナ福神」を新設。各地域で優れた技術・商品を持つメーカーや生産者らに対してこのプラットフォームを使って新商品開発や商品の拡販を促しつつ、その中で優れた商品については同社のテレビ通販で販売したい考えもある。
「正直、通販はレッドオーシャンだ。当社としてはいかに特徴のある、他では販売しておらず、我々しか販売していないような商品を発掘する必要がある。そうした”お宝”は日本各地にあるはず。いかに地域とコミュニケーションをとって、そうした優れた商品を見つけられるかが重要」(遠藤社長)とし、もともとは島根・出雲市の事業者が開発・販売していた調湿木炭を同社が通販で販売することで累計売上高が10億円を優に超えるヒット商品に育て上げた「炭八」のような”お宝”を地域から発掘したい狙いがある。地域との取り組みを重視しながら事業拡大を図る同社。今後の動向が注視されそうだ。
<ワーケーション拠点にも>
中央アルプス眺めながら仕事を、全社員と家族が利用可能に
「窓からの山々の眺めが素晴らしく、伸び伸びと仕事ができる」――。テレビ東京ダイレクトでは4月上旬から、伊那市内に同社社員が利用できる滞在しながら仕事ができるワーケーションのための拠点を借り受けた。同社がこうした施設を設けるのは初めてという。
伊那市が所有する地域材を使った木造2階建てのレンタルオフィスで、家賃は月4万円。窓からは中央アルプスの山々を望め、そうした豊かな自然に囲まれた環境でリフレッシュしながら仕事に取り組めるもの。建物内にはデスクや椅子、PCを設置したオフィススペースのほか、風呂、キッチン、ベッドやペレットストーブ、洗濯機、wifi環境なども完備。利用時に同社総務部に申請をして鍵などを受け取ることで同社社員とその従業員が最長1週間程度、同時に4人まで滞在することができる。なお、ワーケーションに関する規定は作成中としており、年間の利用可能回数などはまだ決めていないとしているが、「なるべく満遍なく多くの人が利用できるようにしたい」(同社)とする。
この施設を借り受けた狙いについて同社では「当社と伊那市は地域創生に向けて包括連携を締結しており、様々な取り組みを行っているが、地域創生事業の担当者だけでなく、当社の他の社員にも伊那市の魅力を知ってもらいつつ、美しい風景の中でリフレッシュしながらワーケーションを楽しんでもらいたい。また、サービス向上の要となる(伊那市内に設置した)コールセンターのスタッフとの密度も高めていきたいことから出張の拠点としても機能させたい」(同社)とする。
なお、ワーケーション施設の借り受けから5月下旬現在までに述べ8人の社員が施設を利用しているようだが、利用者からは「綺麗で広々している」「窓からの中央アルプスに眺めは素晴らしい」「静かな環境で夜空もネオンの反射もなく綺麗」と評判は上々のようだ。
「念願だった自前のコールセンターをようやく持つことができた。オペレーターさんの意見を聞きながらよいコールセンターにしていきたい。また、伊那市のますますの発展の一助になれれば」。
5月20日、伊那市内に市所有の新施設「仕事と子育ての両立支援施設」(愛称・ママand)の竣工式(写真㊦=前列左から4番目)が行われ、同施設内に一角に開設したコールセンターを運営するテレビ東京ダイレクトの遠藤孝一社長は同式のあいさつでこう述べた。
このコールセンターは同社が展開する通販事業のうち、食品通販番組「虎ノ門市場」の受注対応や問い合わせを担当する。特徴はオペレーターとして働くスタッフは子供を連れて来ることができることだ。オペレーターが電話対応を行うワークスペース(写真㊤)のすぐ隣に、専門のスタッフが見守るキッズルーム(写真㊥)が併設されている作りで、間に設けられたガラス窓を通じて、親子が互いに確認することができ、母親は安心して働くことができるもの。同様のキッズスペース併設型コールセンターを全国で展開するママスクエアに業務委託して実現したもので、こうした形態のコールセンターとすることで伊那市の地域の雇用、さらには働くことが難しい子育て中の女性に働く場を提供し、地域活性化につなげていきたい狙いもあるようだ。
伊那市の白鳥孝市長も「伊那市では色々な企業を誘致しているが子育て中の女性が働ける職種は少なく、これまで手が付けられずにいた雇用が生まれることは嬉しい」と期待を寄せる。
現状、同コールセンターにオペレーターが18人、キッズスタッフ3人、スーパーバイザー2人の合計23人を雇用しているが、80人規模まで雇用可能とし、今後も採用者数を増やしていく考えだ。
同社がコールセンターの誘致に応じた背景は伊那市との深い関係性だ。2020年2月に伊那市の地域創生に向けて両者間で包括連携を締結。地域創生事業として同市から一定の対価を得て、テレビ東京ダイレクトが地上波やBSで放送する番組で伊那市の特産品や観光名所などを巡る旅行ツアーを紹介、販売したり、情報発信方法などをレクチャーする職員研修も行うなど取り組みを行ってきた。
ただ、伊那市とはPR関連事業を請け負う相手先という関係性だけでなく、主力の通販事業でも得難いパートナーとなりつつあるよう。これまでに伊那市に食材を使った味噌メンチカツやジビエカレーなど様々な伊那市の商品を「虎ノ門市場」で販売してきたが、特に昨年販売した同市の特産品である松茸を使って開発した「松茸ごはんの素」は受注開始からすぐ完売するなど好評だったという。
今年以降も松茸の販売のほか、同市の名産である糖度が非常に高いスイートコーンをはじめ、アスパラやリンゴやなし、ブドウなどの野菜や果物の頒布会を販売していく計画もあるという。
同社では伊那市をはじめとした地域創生事業を推進していくとともに、昨年12月にはクラブツーリズムと地域活性化事業で連携協定を締結して、クラブツーリズムが持つ地域ネットワークを使って、情報等を収集して各地域の商品の発掘を進めている。その一環として5月24日からはクラウドファンディングサイト「ナナ福神」を新設。各地域で優れた技術・商品を持つメーカーや生産者らに対してこのプラットフォームを使って新商品開発や商品の拡販を促しつつ、その中で優れた商品については同社のテレビ通販で販売したい考えもある。
「正直、通販はレッドオーシャンだ。当社としてはいかに特徴のある、他では販売しておらず、我々しか販売していないような商品を発掘する必要がある。そうした”お宝”は日本各地にあるはず。いかに地域とコミュニケーションをとって、そうした優れた商品を見つけられるかが重要」(遠藤社長)とし、もともとは島根・出雲市の事業者が開発・販売していた調湿木炭を同社が通販で販売することで累計売上高が10億円を優に超えるヒット商品に育て上げた「炭八」のような”お宝”を地域から発掘したい狙いがある。地域との取り組みを重視しながら事業拡大を図る同社。今後の動向が注視されそうだ。
<ワーケーション拠点にも>
中央アルプス眺めながら仕事を、全社員と家族が利用可能に
「窓からの山々の眺めが素晴らしく、伸び伸びと仕事ができる」――。テレビ東京ダイレクトでは4月上旬から、伊那市内に同社社員が利用できる滞在しながら仕事ができるワーケーションのための拠点を借り受けた。同社がこうした施設を設けるのは初めてという。
伊那市が所有する地域材を使った木造2階建てのレンタルオフィスで、家賃は月4万円。窓からは中央アルプスの山々を望め、そうした豊かな自然に囲まれた環境でリフレッシュしながら仕事に取り組めるもの。建物内にはデスクや椅子、PCを設置したオフィススペースのほか、風呂、キッチン、ベッドやペレットストーブ、洗濯機、wifi環境なども完備。利用時に同社総務部に申請をして鍵などを受け取ることで同社社員とその従業員が最長1週間程度、同時に4人まで滞在することができる。なお、ワーケーションに関する規定は作成中としており、年間の利用可能回数などはまだ決めていないとしているが、「なるべく満遍なく多くの人が利用できるようにしたい」(同社)とする。
この施設を借り受けた狙いについて同社では「当社と伊那市は地域創生に向けて包括連携を締結しており、様々な取り組みを行っているが、地域創生事業の担当者だけでなく、当社の他の社員にも伊那市の魅力を知ってもらいつつ、美しい風景の中でリフレッシュしながらワーケーションを楽しんでもらいたい。また、サービス向上の要となる(伊那市内に設置した)コールセンターのスタッフとの密度も高めていきたいことから出張の拠点としても機能させたい」(同社)とする。
なお、ワーケーション施設の借り受けから5月下旬現在までに述べ8人の社員が施設を利用しているようだが、利用者からは「綺麗で広々している」「窓からの中央アルプスに眺めは素晴らしい」「静かな環境で夜空もネオンの反射もなく綺麗」と評判は上々のようだ。