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<18年度化粧品通販売上高ランキング> 上位85社で5000億円突破、インバウンド・海外進出で成長、「単品通販」の限界露呈、明暗分かれる

2019年11月28日 15:00

 通販新聞社が行った2018年度の「化粧品通販売上高ランキング調査」は、上位85社の売上高総計が5000億円を突破した。前回調査と比較可能な上位75社の売上高総計は、前回調査比12・2%増の4980億2500万円。インバウンド需要や越境ECをはじめとする海外進出が進み、大きく成長した。ただ、新規参入の増加から中堅以下の市場では主要プレーヤーの勢力図も変わりつつある。「単品通販」の限界も露呈。次の成長に向けた一手を打ち出せる企業とそうでない企業で、明暗が分かれ始めている。(※表は週刊通販新聞本紙で掲載した1~85位までの売上高ランキングの中から上位20位のみを掲載。21位~85位は本紙のみに掲載しております)
 




 通販化粧品トップは、前回調査に続きオルビス。店舗を含む2018年12月期の売上高は前年比3・8%減の約510億円(健康食品を含む)だった。一時、600億円に迫ったが、16年12月期の通期業績以降、減収基調に転じている。一因にブランドの存在感の希薄化があるとみており、「価格」訴求から「価値」訴求への転換などブランドビジネスへの転換を進める。

 ここ数年でポイントプログラムなど販促制度の刷新、これに伴う割引施策の廃止を実施。その影響を受け、通販顧客数は減少した。一方で、収益基盤の安定化に向け、LTVや購入単価の高いスキンケア利用層との関係強化を図る。直近の四半期決算は、消費増税に伴う駆け込み需要の影響があるものの、約3年ぶりの増収に転じるなど明るい兆しも見える。

 肌の保湿関連のトクホ「ディフェンセラ」も同決算で計画比30%増となる20億円の売り上げに達している。化粧品事業を下支えする事業として美容食品のカテゴリーが伸長。来年には、ブランドの世界観を体現するコンセプトショップも出店。ブランド価値を軸にした顧客との結びつきを強める。

 前回調査4位から2位に躍進したのが新日本製薬だ。直近の19年9月期の化粧品売上高も同12・4%増の約305億円(店舗・卸の実績を含む)で着地。主力スキンケア「パーフェクトワン」シリーズの季節限定商品のクロスセルなどを背景に堅調に進む。

 一方、事業は、化粧品が約91%、国内売上高が約98%の売り上げを占める。国内外のEC売上高は約8%にとどまるなどマーケティングが集約された単品通販の成功モデルでこれまで成長してきたことがうかがえる。オールインワン化粧品市場で約25%(調査会社調べ)のシェアを持つものの、市場はこれまでシェア争奪を繰り広げてきたシーズ・ホールディングス(ドクターシーラボ)などに加え、大手メーカーも参入。新興でもサントリーウエルネス、世田谷自然食品、メビウス製薬なども台頭している。今後、単品、単一チャネル依存からの脱却をいかに図るかが注目される。

 今年6月には東証マザーズに上場。調達資金をITインフラの構築などECの強化に充てる。将来のユーザー層となりうる30代女性など若年層の顧客開拓、ヘルスケア領域における新商品の開発も進め、事業基盤の強化を図る。海外もすでに越境ECを行う中国への投資強化によるブランド確立を図り、東南アジアや北米展開も視野に入れる。20年9月期は、化粧品事業で同6・6%増となる約326億円の売り上げを見込んでいる。

 ファンケルの19年3月期の化粧品事業は、同8%増となる約715億(店舗、卸、海外を含む)円だった。「ファンケル化粧品」は、約11%増の約567億円、「アテニア化粧品」は約4%増の約115億円だった。通販は微減で着地したが、店舗がけん引。

 今期は通販で新メンバーズサービスを導入し、優良顧客を対象に送料無料を復活させたことで、ミドル層、ヘビー層の顧客の売り上げが伸長している。直近の四半期決算(20年3月期中間)では、化粧品通販売上高が同13・5%増と増収に転じている。60代以降の女性向けの「ビューティブーケ」、30代女性向けの「アンドミライ」など新ブランドの育成も進む。ドラッグストアなど流通ルートでも酵素洗顔の商品が好調に推移するなど、継続的にヒット商品の育成が進んでいる。

 「100億円以上」の企業で今後の動向が注目されるのが、アテニアとランクアップ。アテニアは15年3月期の70億円を底に売り上げのV字回復を果たし、19年3月期も過去最高の売り上げを更新した。国内は店舗戦略の強化で顧客接点を築きつつ、海外にも成長力を求める。今年8月には、中国の主要モールに自社旗艦店を出店して展開を本格化している。

 ランクアップは、温感クレンジングゲルの市場では56%(調査会社調べ)のシェアを持つとされる。19年9月期も同約6%増となる110億円前後の売り上げを見込む。洗顔料やファンデーション、限定商品の展開など、単品に依存せず成長しており、顧客と直接の接点を持つ交流イベントの開催など、顧客のロイヤリティ向上に向けた取り組みも強化する。店舗、海外など販路も拡大する中、今後、ブランド戦略も強化していく。



<表の見方>


 「18年度化粧品通販売上高ランキング」は原則、化粧品通販売上高のみをまとめた。調査対象は、18年6月から19年5月に迎えた決算期。

 ▽一部企業は公表資料や聞き取りで本紙推計値(※マーク)を掲載。一部を除き、卸販売や直営店舗など、他チャネルの売り上げは含まない。

 ▽社名の前に◎マークのある企業は、数字に特定の条件がある。(○内の数字は売上高順位)。

 (2)新日本製薬は店舗・卸の実績を含む。
 (3)ファンケルはグループの連結売上高に占める化粧品通販事業の数字。アテニアの化粧品売上高(19年3月期)は前年比4・35%増の115億1500万円(店舗売上高を含む)。
 (4)再春館製薬所は、海外の実績を含む。
 (5)コーセーは海外におけるEC、外部EC向け卸の実績を含む。
 (8)富士フイルムヘルスケアラボラトリーは卸の実績を含む。
 (13)悠香は今年4月、持株会社体制に移行。傘下に化粧品通販を行う悠香、Xenaをおさめる。
 (14)ランクアップは、海外・卸の実績を含む。
 (16)JIMOSは、健康食品、通販支援事業の実績を含む。
 (19)アンファーは、健康食品等の実績を含む。
 



 
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