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まず、審判請求に至った経緯を振り返りたい。
「確かに公取委の言う通り、広告表現に行き過ぎはあったかもしれない。ただ、素材の機能性さえ否定する報道に反発を覚えて審判請求に踏み切りました」(リコム)という。
続いて審判について。処分を直接受けていないリコムの請求は、請求の適格性を争点に7月、10月の2回開かれる。
「公取委からは"適格性がない"と言われ、平行線を辿るまま"審決を出す"と言われた」(同)。
公取委が審判官を務め、"中立性に欠ける"と批判を受けて廃止が検討される審判制度。評判通り、公取委の論理で審判が進められ、リコムは門前払いを受けたというわけだ。
だがその後状況が一変する。
「審決から素材の機能性に関しては一歩引いてくれたと理解し、控訴を止めました。当然、長期間係争することによる事業への影響も考えたが」(同)というのだ。
どういうことか。
「"控訴をするのか"と問われ『(適格性を)認めないなら控訴を準備するほかない』と回答した。その後出た審決では『エキス自体の効果そのものは判断していない』と表現があったため、これ以上求めても仕方がないと納得した」というのだ。
公取委の審決を好意的に受け止め、「審判請求の適格性はないが、素材の機能性は排除命令によって妨げられない」といった内容のリリースを発表したリコムの理解が、公取委の見解と一致するかは分からない。
だが、公取委はこのリリースに対し「審決でも7社への処分と、リコムの主張に関係はないと述べている。同様に機能性の主張も妨げないとしているので主張は自由」(事務総局官房総務課審決訟務室)としている。今一つ判然としないが、根拠の信憑性を判断せず、淡白に応じる姿勢は前例のない審判請求に逃げを打ったと取れなくもない。当初から、排除命令の取消しを求めるリコムと正面から向き合わず、適格性を争点にしてもいるからだ。「根拠」の妥当性の判断を恐れている公取委。そこに公取委の判断を鈍らせた健食表示の問題点があった。(つづく)
※公取委は2009年2月、シャンピニオンエキスを配合し消臭作用を表示した健食販売七社に排除命令を下した。これに原料供給元のリコムが反発。処分取消しを求める審判請求を行った。審判は処分自体ではなく、処分を受けていないリコムが請求することの適格性を争点に進められた。