ニッセン JPとの連携で戦略推進、カタログ展開やBtoBでJPのインフラ活用
ニッセン(本社・京都市南区、佐村信哉社長)と郵便事業会社(JP=同・東京都千代田区、鍋倉眞一社長)が包括業務提携を結んだ。ニッセンでは、4月から商品配送業務をJPに委託し、コスト削減と同時に配送周りのサービスを強化。不振が続く家具・インテリアのテコ入れを図る構えだ。このほかに、郵便局でのカタログ配布を通じた顧客獲得も構想するなど、JPとの連携により今後の事業展開に弾みをつける考えのようだ。
今回の提携で最初に具現化する施策は、4月からのJPへの商品配送等の委託。ニッセンとしては、従来ヤマト運輸に委託していた商品配送業務を全面的に切り替える形だが、その判断材料のひとつとなったのがコスト的なメリットだろう。
ニッセンの年間商品発想個数は約2000万個。仮にJPへ配送業務を切り替えることで従来よりも単価(運賃)が10円下がっただけでも、単純計算で年間2億円のコスト削減になる。単価等の詳細は公表していないが、ニッセンの佐村社長は包括提携の発表会見で、「コストメリットは多少ある」としており、収益性の維持や価格訴求型の戦略を進める上でコスト削減のインパクトが小さくないことをうかがわせる。
無論、コスト的なメリットがあったとしても、サービス品質が低下すれば、顧客離れを引き起こすことにもなりかねないが、JPへの配送業務委託のポイントとなったのは、家具・インテリアなど大型商品配送に付帯するサービスの拡充だ。
JPでは「ゆうパック」におさまらない大型商品の配送は行っていなかったが、今回の提携を受け、協力物流事業者のネットワークを活用した配送体制を構築。サービス面でも配送リードタイムが従来よりも短縮されるほか、配達時間帯指定対応商品や組立配送サービスの展開エリアなどが拡充される。ニッセンでは、家具・インテリアの苦戦が続くが、これまで取りこぼしが少なくなかった引越需要を取り込みなどで、配達時間帯指定等のサービス拡充が有効と判断した形だ。
また、今回の包括提携では、販売チャネルの拡大や経営効率化に向けた共同の取り組みについても検討を行う。
具体的な検討作業はこれからだが、販売チャネルの拡大策で実現しそうなのが郵便局でのニッセンのカタログ配布。
ニッセンでは、かねてから書店やコンビニ等での無料カタログ配布を積極的に行っているが、地方では書店やコンビニが少ない地域もある。これに対し全国にくまなく張り巡らされた郵便局網を活用したカタログの展開ができれば、顧客獲得機会の拡大につながるわけだ。このほかに、ニッセンが行うチラシ同梱等のBtoB向け事業についても「(JPに)手伝ってもらう」(佐村社長)としており、JPから顧客企業の紹介を受けるなどの形で連携を図っていく意向だ。
ニッセンでは、今期からの中期経営計画でシニア市場および中国市場への本格参入を盛り込んでおり、JPグループが持つ顧客基盤やインフラの活用ができれば、中計の目標達成にも寄与することになる。また、JP側としても、ニッセンとの提携により宅配便事業の顧客基盤拡充につながるほか、他の通販事業者等への大型商品配送サービス提供に向けたノウハウの蓄積、JP自らが手掛ける中国向け仮想モールの強化などでニッセンと連携するという道筋も見えるわけだ。
いわば"相思相愛"の提携というわけだが、不安要素がない訳ではない。大型商品の配送ひとつを取っても、JPが複数の協力物流事業者に業務を委託する形で、均質なサービスの提供といった面で不透明な部分がある。事業戦略上のパートナーとしてJPを選んだニッセン。果たして思惑どおりに取り組みが進むのか、今後の動向が注目されるところだ。
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ニッセンの年間商品発想個数は約2000万個。仮にJPへ配送業務を切り替えることで従来よりも単価(運賃)が10円下がっただけでも、単純計算で年間2億円のコスト削減になる。単価等の詳細は公表していないが、ニッセンの佐村社長は包括提携の発表会見で、「コストメリットは多少ある」としており、収益性の維持や価格訴求型の戦略を進める上でコスト削減のインパクトが小さくないことをうかがわせる。
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また、今回の包括提携では、販売チャネルの拡大や経営効率化に向けた共同の取り組みについても検討を行う。
具体的な検討作業はこれからだが、販売チャネルの拡大策で実現しそうなのが郵便局でのニッセンのカタログ配布。
ニッセンでは、かねてから書店やコンビニ等での無料カタログ配布を積極的に行っているが、地方では書店やコンビニが少ない地域もある。これに対し全国にくまなく張り巡らされた郵便局網を活用したカタログの展開ができれば、顧客獲得機会の拡大につながるわけだ。このほかに、ニッセンが行うチラシ同梱等のBtoB向け事業についても「(JPに)手伝ってもらう」(佐村社長)としており、JPから顧客企業の紹介を受けるなどの形で連携を図っていく意向だ。
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いわば"相思相愛"の提携というわけだが、不安要素がない訳ではない。大型商品の配送ひとつを取っても、JPが複数の協力物流事業者に業務を委託する形で、均質なサービスの提供といった面で不透明な部分がある。事業戦略上のパートナーとしてJPを選んだニッセン。果たして思惑どおりに取り組みが進むのか、今後の動向が注目されるところだ。