レディース衣料を手がけるANAPは、利益率が高いネット販売事業を成長戦略のけん引役に位置付けて強化する。今上期(2014年2月)の全社売り上げに占めるネット販売比率は前年同期比4ポイント増の31%まで高まっているが、中期的に50%超を目標とする。
同社は02年から自社通販サイト「ANAPオンラインショップ」をスタートしており、12年間の運営ノウハウを蓄積しているほか、同業他社に先駆けてネット販売チャネルを開拓したことで、今年2月末時点の通販会員数は60万7000人、1年以内に購入実績があるアクティブ会員も13万2000人に上る。
実店舗の客層は10~20代の若年層が多いが、ネットでは28~29歳の女性がメーンで、今上期の客単価は実店舗の約3400円に対し、ネットは6000円弱だ。スマホ、タブレット経由の受注割合も77%と高い。
通販サイトでは主力ブランドの「ANAP(アナップ)」を中心にサブブランドも含めて約20ブランドを展開。多品種・少ロット販売にこだわり、常時1万点以上の自社商品をそろえる。
サイトはANAPカラーを押し出したポップなデザインで、売り場としてだけでなく、ターゲット層が興味を持つ国内外の音楽チャートや芸能ニュースなどエンターテインメント情報も発信。いつ訪問しても楽しいもの、新しい発見があるサイトを心がけている。
プログラミングに精通した家髙社長がかかわって自社開発したシステムを利用しているため、新機能の追加や改修が迅速にでき、会員限定の送料無料施策やタイムセールなどのイベントも瞬間的に行えるのが強みだ。
常設の人気コンテンツは、全国94店舗(14年2月末時点)の店長などが登場するコーディネートスナップで、毎月、本社で開く店長会の際には、各店長の着こなしをEC担当者が撮影してサイトにアップしている。
ウェブ上の売り場については自社通販サイトがメーンだが、さらなる拡大を目指して昨年9月にファッション通販モール「ゾゾタウン」と「LABOO(ラブー)」に出店した。「ゾゾ」には競合するブランドの出品が少なく、商品購買層も自社サイトより高いことから、顧客の食い合いは少なく、ブランド認知度の向上が期待できると判断した。
今年5月下旬にはファストファッション商材が豊富な通販モール「ショップリスト」にも出店。低価格帯の商材は同サイト、中価格帯は自社サイト、もう一段高めのアイテムを「ゾゾ」で販売するなど3サイトを使い分ける考え。
自社通販サイトの集客面では、ファッションカテゴリーでユーザー登録数2位(13万人以上)の「LINE@」を活用するほか、NTTドコモのスマホにプリインストールされているアプリ「トルカ」と連携し、お得な情報を毎月1~2回配信してドコモユーザーを誘導。ドコモ「dメニュー」のレディースカテゴリーおよび「トルカ」経由のPV数は月間20万PV以上という。
このほか、今年1月には期間限定で携帯ゲーム「グリー」とのコラボゲームもテストした。
一方、物流面では12年5月に通販サイトの物流業務を専門企業に委託し、当日発送が可能になった。また、13年2月には実店舗への出荷業務も外部委託したのに続き、今年2月には社内在庫の一元管理体制を整備した。従来はリアル店舗とネット販売事業の在庫を別々に管理していたため、通販サイトの欠品が課題だったという。
今回、新たなインターフェイスを構築してシステム統合したことで、物流センター内のフリー在庫を自社通販サイトでも販売できるようになり、機会損失の低減につなげる。
同社はネット販売事業の拡大に向け、「今上期までにだいぶ外枠はできた」(名和俊輔執行役員)とし、当面は消費者ニーズに応えながら価格政策や商品政策のコントロールに力を注ぐ考えだ。また、さらなるネット強化に向けては海外展開や自社通販サイトで他社商材を扱うといった戦略も検討している。
なお、同社の13年8月期のネット売り上げは前年比約6%増の22億5600万円。今上期は13億1700万円(前年同期比21・2%増)で、通期では26億円程度まで拡大すると推察される。