化粧品通販のJIMOSが販売する化粧品の広告について、福岡県薬務課が昨年10月下旬、薬事法違反で指導、改善を求めていたことが分かった。化粧品の効能の範囲は、医薬品等適正広告基準で56項目に限定されているが、2012年中頃からこれを逸脱する広告表現を行っていた。ジモスは昨年7月、宅配水事業などを行うナックに買収されたばかり。本業である通販事業、通販支援事業にも少なからず影響を与えることになりそうだ。
問題となったのは、ジモスが販売するオールインワン化粧品「プロテクトバリアリッチ」の広告表現。本紙で入手した最近の広告では、「ほうれい線にハリ」などと表現していた。また、広告裏面では使用前後の水分量や皮脂量の増加を示した画像(いわゆるビフォーアフター)も掲載している。
これら広告表現に対し、外部より情報の端緒を得た東京都薬務課では、薬事法で定める化粧品の効能効果を逸脱している恐れがあると判断。福岡県薬務課に情報提供を行い、行政指導となった。
ジモスでは、この件について「化粧品の効能範囲では『肌にはりを与える』という表現は認められている。ほうれい線が『肌』なのか『シワ』なのか線引きした時に、使えると判断した」としている。また、ビフォーアフターにも「体験談的にしたつもりだった」としている。
指摘を受けて、昨年12月中に表現を変えた広告展開に変更。ほうれい線などの表現を抑えつつ、一方で価格訴求による展開を強化することで獲得効率の維持を図っていく。
また、「Coyori(コヨリ)美容液オイル」でも「ほうれい線にハリ」や、使用前後の写真など同様の表現を行っており、こちらも自主的に広告内容を変更する。
化粧品の虚偽誇大広告は、医薬品などとともに薬事法第66条で禁止されている。違反した場合は2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金(または併科)が課される。ただ、化粧品について実際の運用は行政指導により行われるケースが多い。
使用前後の図面や写真を用いた表現は、薬事法の解釈を示す「医薬品等適正広告基準」で原則禁じられている。ただ「別人比較」を行うなどして、基準への抵触を避けている事業者もいる。
ジモスの場合、使用していたのは、同一人物のビフォーアフターだが、体験談のイメージで使っていた。
同基準では、体験談に関する規定もあり、体験談的広告は「消費者に誤解を与えるおそれがあるため行わないこと」とされている。ただ、使用感を説明する場合は過度にならない限り抵触しないとされている。今回のケースは効果を暗示すると判断された。
厚労省、"ほうれい線"を注視
ジモスに限らず、化粧品通販企業による"ほうれい線"の訴求は増えている。福岡県以外でもほうれい線絡みの広告に対する薬事法上の指導が行われたという話があり、行政の監視の目が厳しくなっていることを意識する必要がありそうだ。
今回、薬事法による指導に至った判断に、ほうれい線を「シワ」に近い印象として捉えたことがある。
化粧品に認められている56項目の効能範囲では、「肌にハリを与える」という表示は認められている。一方で「シワにハリ」などといった場合は、効能表示となる。
ジモスでは、「ほうれい線のための美容液」「ほうれい線にハリ」などと、広告で表示していた。
「化粧品の表示に関する公正競争規約施行規則」では、「美容液」などと、その種類別名称を記載することが求められている。
種類別名称に変わり、ヘア用、フェース用などと「使用部位」、保湿、敏感肌用など「用途」の名称をつけることは認められており、そこから解釈すると「目元用」や「ほうれい線用」という表示自体がただちに薬事法違反と判断される可能性は低い。
ただ、今回は「ほうれい線」が「使用部位」ではなく、「シワ」など、より肌悩みに近いものとして捉えられた。厚生労働省幹部は「『使用部位』を特定した上でそこに効果(=ハリ)があると明示したことが誇大と判断されたのではないか」(監視指導・麻薬対策課)とする。
厚労省では、定期的に全国主要ブロックの薬務担当者との連絡会議を実施。各県の指導状況の把握から、指導レベルの平準化を図っている。
最近テーマに上がったのは「幹細胞コスメ」。実際、その表現を使う一部の事業者に対する指導も行われたという。
一方、ほうれい線絡みの表示は、まだ連絡会議のテーマに上がっていない。だが、指導事例が積み重なれば、ほうれい線への作用を訴求する化粧品に対する監視の目は厳しくなるだろう。