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モイストの措置命令の影響は?㊤ 狙われる「同封チラシ」

2013年10月24日 10:02

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消費者庁の食品表示対策室が今年9月、発足後初めてとなる処分を行った。対策室は、食品と健康食品の表示規制を担当。景品表示法を所管する表示対策課内に発足しており、景表法の執行ノウハウを活かして健康増進法の運用強化につなげる狙いがある。近い将来、健増法の強みを活かした法運用が行われるのか。比較的隠ぺい性が高く、審査の緩い「同封チラシ」は、その対象となる可能性がある。

 9月に不当表示を指摘されたモイストは、ダイエットに対応する「烏龍減肥」を展開。折込チラシや同封チラシで販売していた。ただ、対策室の初執行で注目された根拠法は、健増法ではなく、景表法だった。

 健増法の強みは、その対象を「何人も」としている点だ。自己の販売する商品・役務に限定する景表法と異なり、対象は新聞や雑誌、テレビ、出版など媒体社まで及ぶ。

 ただ、執行にはいくつかハードルがある。

 モイストのケースでは景表法の「不実証広告規制」が使われた。表示の裏付けとなる合理的根拠の提出を求め、提出されなければ不当表示とみなす"みなし規定"だ。つまり、対策室はモイストの表示する商品の"ダイエット効果"について、正確にはその真贋を判断していないことになる。

 一方、健増法は痩身効果を含む健康保持増進効果について「著しく事実に相違する表示」か判断しなければならない。対策室も事実認定に時間をかけて長期化するより、景表法を使うことで迅速に処理したと思われる。

 また、健増法の執行ステップは強制力のない行政指導である「勧告」、これに従わない場合に行政処分である「命令」という段階を踏む。ただ、「勧告」ですら、国民の健康の保持増進や正確な情報の提供に「重大な影響を与える恐れ」がある場合に発動できるもの。使いづらい法律の建てつけが景表法を選んだ理由だろう。

 媒体社の責を問う際にも表示根拠の立証を踏まえた上で執行する必要がある。さらに媒体社がその表示内容について「虚偽誇大と予見し得た」という事実を、「物証」と「供述」から得なければならない。そう考えると、媒体社が責任を問われるケースは、そう多くはないように思われる。

 ただ、モイストは7カ月間に約270万枚の同封チラシを、全国紙や地方紙に4カ月間で約993万枚の折込チラシを配布していた。単純にチラシを同封しただけでは悪質性が高いとは言えないが、(1)表示作成への具体的な関与、(2)広告掲載の考査・審査基準の形骸化――が明らかになれば問題視される可能性がある。例えば、「表示の根拠はないけど大丈夫です。その方が売れますから」といった依頼に当事者意識の希薄さから乗ってしまう場合だ。

 消費者委員会の建議を受けて消費者庁が健食に関する表示規制を強める中、同封チラシをその温床と捉え、監視の必要性を感じれば、研究機関での検証を踏まえ健増法の課題である事実認定の短期化を図ってくる可能性は十分ある。「国民への重大な影響」という難しい判断も、裁量権を許される行政機関が越えられないハードルではない。

 かたや業界に目を向ければ、同封チラシの営業で前述のような会話が全くないとは言えない。カタログ各社にとって収益源である同封チラシだが、コンプライアンス強化が求められることになりそうだ。
(つづく)
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