三越伊勢丹ホールディングスは、ネット販売を成長領域と位置付けて変革に乗り出している。スピード感をもってウェブ強化を図るために外部の人材を登用すること決断。これまでに日本トイザらスや、ジュピターショップチャンネルでネット販売事業を立ち上げてきた中島郁氏に白羽の矢が立った。4月1日付でグループWEB事業部長に就任した同氏に、百貨店通販サイトの方向性や今後の戦略などについて聞いた。
(聞き手は本紙記者・神崎郁夫)
――成長にはオムニチャネル化が欠かせない。
「オンラインだけで儲かるわけがない。通販売り上げが大きい企業を見ると、一部の会社を除けば紙媒体の活用や実店舗を持つ企業がほとんど。ネット専業であってもテレビCMを放映したり、実店舗を持とうとする動きが盛んだが、彼らが実店舗を持つよりは、当社がオンラインを強化する方がはるかに簡単だ」――商品情報や顧客情報の一元化も必要だ。
「顧客情報の一元化に取り組んでいるところだが、あまり細かいことをしなくても取扱商品数を増やし、通販サイトのユーザビリティーを改善して、実店舗での露出を高めれば売り上げはまだまだ伸びる。その上で精度の高いアプローチをしていけばいい」
――百貨店通販サイトの売り上げ計画は。
「三越と伊勢丹の通販サイトの合計で、2013年3月期の約80億円に対し、14年3月期は90億円を見込んでいるが、これを16年3月期には200億円を目標としている。ただ、やるべきことをやれば、百貨店売り上げの10%はネットで売れるのではないか」――ネット独自の商品展開などは。
「ウェブ上では商品の広がりは必要だ。お店に置いてない商品も扱うが、優先するわけではない。消費者がネットで買い物をする場合、知っている商品の方が買いやすい。ナショナルブランドということだけでなく、お店で見て実物を知っていることも大事。まずはそのベースを作った上で、ネットでは商材のバリエーションを広げたり、店でイベントとして展開する商品をネットでも同時に扱ったりしていきたい」――両百貨店通販サイトのシステム統合も控えている。
「来期中に三越と伊勢丹の通販サイトを統合する計画だ。入り口は別々に作ってそれぞれの"のれん"を残すが、ひとつのIDで両サイトを行き来でき、両方で買い物した商品が共通のカートに保持されるようにする」――それまでに修正すべき点は。
「現状の通販サイトは見栄えはいいが、情報量が少なく使いにくい。システムの改修を待たずに両サイトは変えていく。フルリニューアルやシステム刷新は話題性があって訪問者も増えるが、実際には情報の更新頻度を高め、コンテンツの見せ方を少しずつ変えるなど、消費者に飽きられない工夫をした方が売り上げは伸びる」――売り場としての魅力を高める。
「ウェブと実店舗は別々に考えられることが多いが、実はネット販売はリアル店舗と似ている。フルフィルメントや受注システムといったインフラの部分は通販そのものだが、ウェブ上の展開は実店舗に近い。売り場担当者はどこにどの商品を置くか、どうやって商品の良さを顧客に伝えるかなどを日々考えている。同じ商品でも置き場所を変えたりして新鮮さを失わないようにするが、それをウェブ上で実施するのが店舗力だ」
――広告宣伝は。
「徐々に広告費もかけていく。いろいろな改善、効率化を行うとお金が生まれる。それを売り上げのとれる部分に投入する。効率化して余った人員も売り上げが取れる部隊に再配置してビジネスを大きくしていく」――メディア型のビジネスも手がける。
「日本の良いものを世界に発信していくことがメディアビジネスの重要な目的だ。昨年12月に開設したファッションのニュース配信サイト『ファッションヘッドライン』は中立なメディアとして展開する。もうひとつの『イセタンパークネット』は新宿店の再開発に連動し、ファッションミュージアムというコンセプトを発信する」――物販の売り上げだけでなく、送客による手数料収入も狙う。
「まずは百貨店の通販サイトを中心にトラフィックと売り上げを作り、トラフィックを色々な部分に活用していく。やはり小売りとしての存在感でアクセス数と顧客を増やす。その顧客に当社が良いと思うものを紹介するのが送客だったり、アフィリエイトだったりするが、まずはトラフィックが大事だ」(おわり)
(聞き手は本紙記者・神崎郁夫)
――成長にはオムニチャネル化が欠かせない。
「オンラインだけで儲かるわけがない。通販売り上げが大きい企業を見ると、一部の会社を除けば紙媒体の活用や実店舗を持つ企業がほとんど。ネット専業であってもテレビCMを放映したり、実店舗を持とうとする動きが盛んだが、彼らが実店舗を持つよりは、当社がオンラインを強化する方がはるかに簡単だ」
――商品情報や顧客情報の一元化も必要だ。
「顧客情報の一元化に取り組んでいるところだが、あまり細かいことをしなくても取扱商品数を増やし、通販サイトのユーザビリティーを改善して、実店舗での露出を高めれば売り上げはまだまだ伸びる。その上で精度の高いアプローチをしていけばいい」
――百貨店通販サイトの売り上げ計画は。
「三越と伊勢丹の通販サイトの合計で、2013年3月期の約80億円に対し、14年3月期は90億円を見込んでいるが、これを16年3月期には200億円を目標としている。ただ、やるべきことをやれば、百貨店売り上げの10%はネットで売れるのではないか」
――ネット独自の商品展開などは。
「ウェブ上では商品の広がりは必要だ。お店に置いてない商品も扱うが、優先するわけではない。消費者がネットで買い物をする場合、知っている商品の方が買いやすい。ナショナルブランドということだけでなく、お店で見て実物を知っていることも大事。まずはそのベースを作った上で、ネットでは商材のバリエーションを広げたり、店でイベントとして展開する商品をネットでも同時に扱ったりしていきたい」
――両百貨店通販サイトのシステム統合も控えている。
「来期中に三越と伊勢丹の通販サイトを統合する計画だ。入り口は別々に作ってそれぞれの"のれん"を残すが、ひとつのIDで両サイトを行き来でき、両方で買い物した商品が共通のカートに保持されるようにする」
――それまでに修正すべき点は。
「現状の通販サイトは見栄えはいいが、情報量が少なく使いにくい。システムの改修を待たずに両サイトは変えていく。フルリニューアルやシステム刷新は話題性があって訪問者も増えるが、実際には情報の更新頻度を高め、コンテンツの見せ方を少しずつ変えるなど、消費者に飽きられない工夫をした方が売り上げは伸びる」
――売り場としての魅力を高める。
「ウェブと実店舗は別々に考えられることが多いが、実はネット販売はリアル店舗と似ている。フルフィルメントや受注システムといったインフラの部分は通販そのものだが、ウェブ上の展開は実店舗に近い。売り場担当者はどこにどの商品を置くか、どうやって商品の良さを顧客に伝えるかなどを日々考えている。同じ商品でも置き場所を変えたりして新鮮さを失わないようにするが、それをウェブ上で実施するのが店舗力だ」
――広告宣伝は。
「徐々に広告費もかけていく。いろいろな改善、効率化を行うとお金が生まれる。それを売り上げのとれる部分に投入する。効率化して余った人員も売り上げが取れる部隊に再配置してビジネスを大きくしていく」
――メディア型のビジネスも手がける。
「日本の良いものを世界に発信していくことがメディアビジネスの重要な目的だ。昨年12月に開設したファッションのニュース配信サイト『ファッションヘッドライン』は中立なメディアとして展開する。もうひとつの『イセタンパークネット』は新宿店の再開発に連動し、ファッションミュージアムというコンセプトを発信する」
――物販の売り上げだけでなく、送客による手数料収入も狙う。
「まずは百貨店の通販サイトを中心にトラフィックと売り上げを作り、トラフィックを色々な部分に活用していく。やはり小売りとしての存在感でアクセス数と顧客を増やす。その顧客に当社が良いと思うものを紹介するのが送客だったり、アフィリエイトだったりするが、まずはトラフィックが大事だ」(おわり)