在京キー局5社の上期業績④ テレビ朝日 "次の商品"の発掘を
「ここ数年来の定番の商品を越える商品がなかなか見つけられていない。次のヒット商品の発掘が急務だ」。
前年同期比5・9%減の41億9900万円で着地したテレビ朝日の今上期(4~9月)のテレビ通販売上高。これまで安定した成長を遂げてきたテレ朝の通販事業だったが、今期に入り、若干の苦戦を強いられているようだ。主力の通販枠「ちい散歩くらぶ」は前年同期を上回って推移しているようだが、通販特番と深夜枠が苦戦し、全体では若干の微減となっている。
昨年の上期を振り返ってみると、実に前年同期比で3割を超える増収を果たし、好調に推移していた。その主因は事実上の通販枠の拡大だった。主力通販枠である「ちい散歩くらぶ」は人気の紀行番組「ちい散歩」に紐付く番組内の1コーナーだが、祝祭日には別番組が放送され、「ちい散歩」自体が放送されてなかったため、「ちい散歩」内の通販コーナーである「ちい散歩くらぶ」も休止せざるを得なくなっていた。
これが一昨年8月からは祝祭日に関係なく月―金で「ちい散歩」が放送されるようになり、通販コーナーも休みなく放送されることになった。
これにより主力通販枠の放送分数が増えたほか、それまでは上期中に1本もなかった特番が昨年上期は2時間規模の特番が2本放送できた。前年上期はこの「増えた売り場」に実績のある売れ筋商品を投入することで売り上げを効果的に伸ばし、3割を超える増収を達成することができたわけだ。
ただ、同社だけに限ったことではないが、ここ数年、放送外収入獲得の目的などで自社通販枠を増やし続けてきたキー局各社。だが一定の通販枠に達した今、今後はそう簡単には「売り場」を増やすことはできないだろう。
実はテレ朝は今上期から毎回ではないが祝祭日は「ちい散歩」の放送分数を通常の55分から85分と拡大。その分、通販コーナーの「ちい散歩くらぶ」も通常放送よりも時間を拡大。平日の通販枠は曜日によって異なるが、月曜日は約6分、火曜日は約8分、水・木・金は16分。これが祝祭日の「拡大版」では30分超まで拡大している。なお、上期はこの「拡大版」が3回放送された。
しかし、その分、「通販特番」の本数が前年上期の2本から1本に減っており、通販枠の総量でみると前年同期と比べて大きな変化はない。
「売り場」が増えない中で成長を維持するには当たり前の話ではあるが、それぞれの通販枠で客数と客単価を高めていく必要がある。そのため、同社では今年4月から深夜枠を刷新。お笑いタレントが商品をプレゼンする形に変更するなど、演出や番組構成を工夫するなどの努力を重ねてきたようだ。
ただ、それでも前述した通り、深夜枠が苦戦しているのは演出面ではカバーできない根本の問題として「ヒット商品がないこと」(同社)が要因だという。確かに同社の上期の売れ筋商品を見てみるとサイクロン式掃除機、オリジナルのマッサージチェア、エアコン、電子辞書、ルーペで、これらの売れ筋商品の顔ぶれは実は前年上期からさほど変わっていない。
非常に強い「定番の売れ筋商品」もやはり長期間、販売すれば徐々に売れ行きが落ちてくるのは必然だ。とは言え、やはり実績がある定番商品はある程度の売れ行きが見込めるため、どうしてもそれに頼ってしまう傾向がある。売り場、つまり通販枠が増えているうちはまだそれでもよいが、枠がある程度、固定されると視聴者が定着。固定客に同じ商品を売り続けるのは限界がある。同社でも「定番商品に変わるヒット商品をなかなか発掘できていない。これが(通販事業が伸び悩んでいる)大きな要因だ」と話す。
下期からは次のヒット商品の開発に注力。説明会を開き、広くメーカーやベンダーに呼びかけ、新たな商品の仕入先を増やす試みなど地道に商品力の強化を進めていく意向だ。これにより、主力の「ちい散歩」を中心に下期は巻き返しを図りたいとしている。
(つづく)
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昨年の上期を振り返ってみると、実に前年同期比で3割を超える増収を果たし、好調に推移していた。その主因は事実上の通販枠の拡大だった。主力通販枠である「ちい散歩くらぶ」は人気の紀行番組「ちい散歩」に紐付く番組内の1コーナーだが、祝祭日には別番組が放送され、「ちい散歩」自体が放送されてなかったため、「ちい散歩」内の通販コーナーである「ちい散歩くらぶ」も休止せざるを得なくなっていた。
これが一昨年8月からは祝祭日に関係なく月―金で「ちい散歩」が放送されるようになり、通販コーナーも休みなく放送されることになった。
これにより主力通販枠の放送分数が増えたほか、それまでは上期中に1本もなかった特番が昨年上期は2時間規模の特番が2本放送できた。前年上期はこの「増えた売り場」に実績のある売れ筋商品を投入することで売り上げを効果的に伸ばし、3割を超える増収を達成することができたわけだ。
ただ、同社だけに限ったことではないが、ここ数年、放送外収入獲得の目的などで自社通販枠を増やし続けてきたキー局各社。だが一定の通販枠に達した今、今後はそう簡単には「売り場」を増やすことはできないだろう。
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しかし、その分、「通販特番」の本数が前年上期の2本から1本に減っており、通販枠の総量でみると前年同期と比べて大きな変化はない。
「売り場」が増えない中で成長を維持するには当たり前の話ではあるが、それぞれの通販枠で客数と客単価を高めていく必要がある。そのため、同社では今年4月から深夜枠を刷新。お笑いタレントが商品をプレゼンする形に変更するなど、演出や番組構成を工夫するなどの努力を重ねてきたようだ。
ただ、それでも前述した通り、深夜枠が苦戦しているのは演出面ではカバーできない根本の問題として「ヒット商品がないこと」(同社)が要因だという。確かに同社の上期の売れ筋商品を見てみるとサイクロン式掃除機、オリジナルのマッサージチェア、エアコン、電子辞書、ルーペで、これらの売れ筋商品の顔ぶれは実は前年上期からさほど変わっていない。
非常に強い「定番の売れ筋商品」もやはり長期間、販売すれば徐々に売れ行きが落ちてくるのは必然だ。とは言え、やはり実績がある定番商品はある程度の売れ行きが見込めるため、どうしてもそれに頼ってしまう傾向がある。売り場、つまり通販枠が増えているうちはまだそれでもよいが、枠がある程度、固定されると視聴者が定着。固定客に同じ商品を売り続けるのは限界がある。同社でも「定番商品に変わるヒット商品をなかなか発掘できていない。これが(通販事業が伸び悩んでいる)大きな要因だ」と話す。
下期からは次のヒット商品の開発に注力。説明会を開き、広くメーカーやベンダーに呼びかけ、新たな商品の仕入先を増やす試みなど地道に商品力の強化を進めていく意向だ。これにより、主力の「ちい散歩」を中心に下期は巻き返しを図りたいとしている。
(つづく)