【ニュースの断層】 東京都がもしもに表示改善指示
「2週間以上使うとガリガリ状態に」「特別価格63%OFF!こんな激安価格は今だけ」。東京都は9月7日、ドロップシッピング(DS)仲介事業を行うもしも(本社・東京都渋谷区、実藤裕史社長)に景品表示法違反(優良誤認・有利誤認)に基づく表示改善指示を行った。
東京都によるともしものDSサービスを利用するドロップシッパー(登録会員)の通販サイトで販売されている商品に不当表示を発見。もしもに文書などで再三
の注意を行った上、24商品について表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、「合理的根拠と認められるものではなく、案件によっ
ては資料自体が提出されないものもあった」ために指導に踏み切り、表示修正や改善措置の文書での報告などを求めた。
在庫を持たずに通販
サイトを開設でき、実際の商品はメーカーから顧客に発送される通販サイトの一形態であるDSは主婦などの副業としても人気が高い。しかし近年、特商法違反
でDS仲介業者に業務停止命令が出るなどDSを巡る問題は多い。が、それらは「振り込め詐欺」まがいの悪質業者だ。今回のもしもは上場企業で知名度も高い
ネットプライスドットコムのグループで、「悪質さ」とは程遠い存在。なぜ、東京都からの再三の注意に従わず、表示改善指示を下され、社名公表されるに至っ
てしまったのだろうか。
東京都によると、もしもに冒頭のような消費者に誤認を与えるような表示が見られたため、改善するよう約2年前か
ら再三、口頭注意。今年に入ってからは文書での注意を行ったが、「改善されないため(今回の処分に)踏み切った」(東京都の生活文化局消費生活部取引指導
課の松下課長)という。
とは言え、もしも側も「できる限り、迅速に問題表示の修正などの対応は行っていた」と同社の肥田大輔取締役は説明する。ただ、「東京都と当社との間で"スピード"に関する認識にズレがあったのだと思う」とする。どういうことなのか。
通常、法に抵触する表現があった場合、処罰を受けるのは販売責任者の当該通販サイトの運営者だ。DSでも本来的には責任はサイト運営者、ドロップシッパーにある。
ところが、もしもでは手軽にDSを利用してもらえるよう販売主体者は個別のドロップシッパーに負わせず、同社が販売責任者となる規約を設けているため、東京都はもしもにドロップシッパーのサイトにおける不当表示を改善するよう注意を行ってきたわけだ。
ただ、商品が販売されているサイトはドロップシッパーが管理している。その会員数は30万人超と膨大だ。東京都から指摘を受け、もしもが改善しようとして
も個別のドロップシッパーに周知させるのに時間がかかるほか、もしもからの情報を見逃すドロップシッパーもおり、東京都が納得する素早さで「不当な表示」
を改善させるのは難しかったようだ。
無論、ドロップシッパーはもしもの専用画面からメーカーから用意された商品説明文やコピーを参考に
表示を行っている。「メーカーからの説明文やコピーに景表法上、問題のある表現もあり、そこで修正しておくべきでチェック体制が不十分だった」ともしもも
認めている。今後はチェック体制強化のほか、過去販売した累計約17万の商品もデータベースを再確認し、必要があれば修正や削除をし、再発防止を図ってい
くという。
とは言え、販売責任者はこれまで通りドロップシッパーではなく、もしも。法的な責任を問われないドロップシッパーにどの程
度、売りである「手軽さ」を損なうことなく適正な表示を徹底させられるか。表示が誤っていた場合、いかに素早く修正できるか。誤表示をさせない方法など抜
本的な解決策がなければ、同じ事態を招きかねない。大手EC関連事業者のミスはネット販売市場全体のイメージに悪影響を与えかねない。同社の再発防止策を
注視したい。
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東京都によるともしものDSサービスを利用するドロップシッパー(登録会員)の通販サイトで販売されている商品に不当表示を発見。もしもに文書などで再三 の注意を行った上、24商品について表示の裏づけとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めたところ、「合理的根拠と認められるものではなく、案件によっ ては資料自体が提出されないものもあった」ために指導に踏み切り、表示修正や改善措置の文書での報告などを求めた。
在庫を持たずに通販 サイトを開設でき、実際の商品はメーカーから顧客に発送される通販サイトの一形態であるDSは主婦などの副業としても人気が高い。しかし近年、特商法違反 でDS仲介業者に業務停止命令が出るなどDSを巡る問題は多い。が、それらは「振り込め詐欺」まがいの悪質業者だ。今回のもしもは上場企業で知名度も高い ネットプライスドットコムのグループで、「悪質さ」とは程遠い存在。なぜ、東京都からの再三の注意に従わず、表示改善指示を下され、社名公表されるに至っ てしまったのだろうか。
東京都によると、もしもに冒頭のような消費者に誤認を与えるような表示が見られたため、改善するよう約2年前か ら再三、口頭注意。今年に入ってからは文書での注意を行ったが、「改善されないため(今回の処分に)踏み切った」(東京都の生活文化局消費生活部取引指導 課の松下課長)という。
とは言え、もしも側も「できる限り、迅速に問題表示の修正などの対応は行っていた」と同社の肥田大輔取締役は説明する。ただ、「東京都と当社との間で"スピード"に関する認識にズレがあったのだと思う」とする。どういうことなのか。
通常、法に抵触する表現があった場合、処罰を受けるのは販売責任者の当該通販サイトの運営者だ。DSでも本来的には責任はサイト運営者、ドロップシッパーにある。
ところが、もしもでは手軽にDSを利用してもらえるよう販売主体者は個別のドロップシッパーに負わせず、同社が販売責任者となる規約を設けているため、東京都はもしもにドロップシッパーのサイトにおける不当表示を改善するよう注意を行ってきたわけだ。
ただ、商品が販売されているサイトはドロップシッパーが管理している。その会員数は30万人超と膨大だ。東京都から指摘を受け、もしもが改善しようとして も個別のドロップシッパーに周知させるのに時間がかかるほか、もしもからの情報を見逃すドロップシッパーもおり、東京都が納得する素早さで「不当な表示」 を改善させるのは難しかったようだ。
無論、ドロップシッパーはもしもの専用画面からメーカーから用意された商品説明文やコピーを参考に 表示を行っている。「メーカーからの説明文やコピーに景表法上、問題のある表現もあり、そこで修正しておくべきでチェック体制が不十分だった」ともしもも 認めている。今後はチェック体制強化のほか、過去販売した累計約17万の商品もデータベースを再確認し、必要があれば修正や削除をし、再発防止を図ってい くという。
とは言え、販売責任者はこれまで通りドロップシッパーではなく、もしも。法的な責任を問われないドロップシッパーにどの程 度、売りである「手軽さ」を損なうことなく適正な表示を徹底させられるか。表示が誤っていた場合、いかに素早く修正できるか。誤表示をさせない方法など抜 本的な解決策がなければ、同じ事態を招きかねない。大手EC関連事業者のミスはネット販売市場全体のイメージに悪影響を与えかねない。同社の再発防止策を 注視したい。