ペイパルとDHLジャパンは11月15日、都内で越境ECをテーマにしたメディア向け勉強会を開催した。ペイパルが毎年行っているグローバルを対象にした調査結果に基づいた越境ECのトレンド、DHLのクライアントにおける越境ECの事例などを披露。成長を続けている越境ECの代金決済と配送の課題をクリアする両社のサービスについても触れ、国内事業者の越境ECの可能性について探った。
初めにペイパル事業開発部の野田陽介部長が登壇し年1回行っている調査結果(31カ国が対象)に基づき、越境ECの決済や日本の利用状況などを報告。調査に基づくオンラインショッピングの市場規模は17年で約160兆円となり、特にアメリカと中国が突出。国内と越境を分けて見ると、越境は中国がアメリカよりも多くなっている。またアメリカの越境ECを利用するユーザーは全体の34%なのに対し日本は6%に過ぎず、「日本は国内でこと足りる、または言語の問題」(野田部長)のため低い利用率になっていると推測する。
海外サイトで購入する際の決済手段は欧米でペイパルが多いという。クレジット番号を先方に伝える必要がないため"安心・安全"に使える点が評価を受けている。
購入商品をアメリカの例で見ると、トップはアパレル、次がジュエリー・時計、3位がホビーグッズ。グローバルで見てもアパレルが毎年トップになるという。
アメリカや中国で越境境ECの利用が多いのは価格の安さが最大の理由。一方で送料の負担から利用を控えるような側面もあり、越境ECを利用しない要因として「配送費が高いというのが一番、本当に届くか、また関税なども理由となって諦めるケースが多い。越境ECは引き続き成長を続けるが、配送面の課題のクリアが重要になる」(同)。
次にDHLジャパン法人営業第四部の野口正弘部長が越境ECの輸送事情について説明。DHLではBtoCが年々増加し、13年と16年を比較すると8%の伸びを示し、全体の比率でも10%だったのが20%近くに迫っていると見られる。越境ECについては物流迅速、可視化、ラスワトワンマイルなどの対応が重視されるという。
迅速性などについて提示した中部地方のある企業の事例では、月当たり1700件を海外へ販売し、アメリカが75%を占めているが、1日あたりでは191件という日があり、そのうち90%弱が翌日あるいは翌々日に配達が完了(日付変更線の関係で実際には3~4日の日数を要する)。破損やダメージ、紛失がなく、遅延が1件あったが、これは受け取りで投函を選択していたのを勘違いしてのもので、実質無事故という。また可視化については15分おきにチェックポイントで確認でき、当該企業は「余計な問い合わせが来なくなった」と評価しているという。
ラストワンマイルに関し不在というのは世界的な課題になっているという。そこでDHLが無料提供する"オンデマンドサービス"が解決手段として利用できるとした。輸出時の手続きが終了すると、届け先へは「DHLで配送されます」とメールで通知し、アメリカなどの配送は置き配が一般的で、その承認をとった上で配達して問題解決になる。
またイギリスのジム用トレニーニングウエアを販売するGYMSGARK(ジムシャーク)の事例も披露。当初は郵便のみで対応していたが、DHLも加えたところ、越境ECでの実績が1年で1万3000件増えた。購入額も70%アップした。購入者の50%が早く届く「エクスプレス」を選択。通常便は9ドルで7~14日で届くのが、エクスプレスは17ドルで2~4日で届く。100ドル以上はスタンダードが無料、150ドル以上ではエクスプレスが無料とし、業績アップにつながっているという。