ポスト投函のメール便問題②、有料返還は処分対象、国交省見解にJPが修正案
宅配便事業者等が扱うメール便を使ったダイレクトメールが郵便ポストに投函される問題を巡り、郵便事業会社(JP)が一律に受取人払いの「ゆうメール」で通販事業者等の荷送人に返還すると宅配便事業者に通知を出したのは昨年5月下旬。その後、国土交通省がJPと宅配便事業者の間に入り対応策を協議することになったが、実質的な対応策に関する両者の直接協議が行われないまま今日に至っている。一連の経緯を辿ると、どうもJP側の対応に問題があるようなのだ。
国交省の仲立ちでJPと通知を受けた宅配便事業者等7社と全日本トラック協会、JPの間で初めて会合が持たれたのは昨年6月初旬。この際にJP側からメール便返還方法に関する説明があり、宅配便事業者側では荷送人ではなくメール便事業者に返還すること、ポスト投函の原因調査と改善策の要望などを行った。だが、同月下旬に行われた2回目の会合はJPが欠席し、電話で返還先は荷送人とし、原因調査も行う考えがないなどと回答。このため、国交省貨物課の担当者を交えて7月初旬に3回目の会合が開かれた。
3回目の会合では、ポストに投函されたメール便を荷送人に着払いで返還する考えであることを主張するJPに対し、宅配便事業者側は、受取人が誤ってメール便をポストに投函してしまうことに問題があり、まず未然防止策を講じることが必要と指摘。また、着払いで一律にメール便が返還された場合、荷送人の負担が大きいことなどから、宅配便事業者等に返還することを要望、全国配送網を持つ大手宅配便事業者が約1100カ所ある郵便支店へ各事業者のポスト投函メール便をまとめて受け取りに行くことなどを提案している。
いわば、着払いによる荷送人へのメール便返還に固執するJPと、それとは異なる方策を探る宅配便事業者側の意見が対立した形だが、これに対し国交省は、この会合で議論すべきテーマはメール便のポスト投函防止と滞留対策とする方向性を打ち出す。
この背景には、国交省自身、荷送人着払いでメール便を返還するというJPの案には法的に問題ありと見ていることがある。これは、一度運賃を払ってメール便を発送した荷送人に対し、JPが返送運賃を請求するのは、「貨物自動車運送事業法」の主旨である利用者の利便性保護の観点から認められないというもので、同会合でもJPに対し、業務改善命令の対象になり得るとの考えを示している。
結局3回目の会合は、メール便の集約に関するコストでJPが宅配便事業者に負担を求める金額、ポスト投函の未然防止策などの課題を各者で検討、結果を国交省に報告した上で次回会合を開くことを決め閉会した。
着払いによるメール便返還に対し、監督官庁の国交省が法律上問題ありとの見方を示したことで、JPも宅配便事業者側と一緒に対応策を考えざるを得なくなった。関係者の誰もがそう思っていた最中、JPは全く別の手段を選択する。今年1月、宅配便事業者側に対して郵便ポストに投函されたメール便を無料で荷送人に返送すると通知してきたのだ。
国交省が問題視するのは、有料のメール便を返送が荷送人から二重に運賃を徴収する形になる点。だが、無料で返送するとなると「国交省も処分はできない」(東京路線トラック協会・松永正大常務理事)。無論、宅配便事業者側は、この案にも反対。無料でメール便が返還されたとしても、便委託先への対応の指示など荷送人側に手間が掛かることに変わりはないためだ。
JP側の負担にも配慮した上で、ポスト投函の未然防止策などの検討する運びとなった中で、JPが打ち出した"処分逃れ"のようなメール便返還の修正案。直接協議に消極的とも言えるこうしたJPの姿勢が問題を長期化させる一因になっているようだ。(つづく)
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3回目の会合では、ポストに投函されたメール便を荷送人に着払いで返還する考えであることを主張するJPに対し、宅配便事業者側は、受取人が誤ってメール便をポストに投函してしまうことに問題があり、まず未然防止策を講じることが必要と指摘。また、着払いで一律にメール便が返還された場合、荷送人の負担が大きいことなどから、宅配便事業者等に返還することを要望、全国配送網を持つ大手宅配便事業者が約1100カ所ある郵便支店へ各事業者のポスト投函メール便をまとめて受け取りに行くことなどを提案している。
いわば、着払いによる荷送人へのメール便返還に固執するJPと、それとは異なる方策を探る宅配便事業者側の意見が対立した形だが、これに対し国交省は、この会合で議論すべきテーマはメール便のポスト投函防止と滞留対策とする方向性を打ち出す。
この背景には、国交省自身、荷送人着払いでメール便を返還するというJPの案には法的に問題ありと見ていることがある。これは、一度運賃を払ってメール便を発送した荷送人に対し、JPが返送運賃を請求するのは、「貨物自動車運送事業法」の主旨である利用者の利便性保護の観点から認められないというもので、同会合でもJPに対し、業務改善命令の対象になり得るとの考えを示している。
結局3回目の会合は、メール便の集約に関するコストでJPが宅配便事業者に負担を求める金額、ポスト投函の未然防止策などの課題を各者で検討、結果を国交省に報告した上で次回会合を開くことを決め閉会した。
着払いによるメール便返還に対し、監督官庁の国交省が法律上問題ありとの見方を示したことで、JPも宅配便事業者側と一緒に対応策を考えざるを得なくなった。関係者の誰もがそう思っていた最中、JPは全く別の手段を選択する。今年1月、宅配便事業者側に対して郵便ポストに投函されたメール便を無料で荷送人に返送すると通知してきたのだ。
国交省が問題視するのは、有料のメール便を返送が荷送人から二重に運賃を徴収する形になる点。だが、無料で返送するとなると「国交省も処分はできない」(東京路線トラック協会・松永正大常務理事)。無論、宅配便事業者側は、この案にも反対。無料でメール便が返還されたとしても、便委託先への対応の指示など荷送人側に手間が掛かることに変わりはないためだ。
JP側の負担にも配慮した上で、ポスト投函の未然防止策などの検討する運びとなった中で、JPが打ち出した"処分逃れ"のようなメール便返還の修正案。直接協議に消極的とも言えるこうしたJPの姿勢が問題を長期化させる一因になっているようだ。(つづく)