ニュースの断層、荒井議員が消費者庁担当相に
健食業界に"福音"もたらす可能性も
菅直人新首相は6月8日、新内閣の閣僚人事を発表した。健康食品業界として注目したいのは、社民党との連立解消以降、空席となっていた消費者担当相のポストに民主党の荒井聰議員が決まったことだ。荒井氏はかねてより健食業界と浅くはない関係を持っている。折りしも、消費者庁で「健康食品の表示に関する検討会」(検討会)の論点整理に向けた審議が続く最中の人事。業界に"福音"をもたらす可能性もある。
◇
荒井氏と健食業界との関係。そのルーツは北海道にある。
北海道といえば、思い起こされるのが以前、超党派の議員連盟「健康食品問題研究会」の会長を務め、健食法制化を業界と一体的に進めた石崎岳前議員(自民党)の存在だ。この石崎氏と昨年の衆院選・北海道3区で争ったのが荒井氏だった。
◇
さらにこの選挙区、健食素材の開発製造を行う「アミノアップ化学」が本拠を置く地でもある。
同社の小砂憲一会長は、北海道経済連合会(道経連)常任理事、北海道バイオ工業会代表理事会長、北海道バイオ産業クラスター・フォーラム会長などを兼任し、北海道庁と共に道内のバイオ産業振興に尽力する人物。荒井氏との関係も長い。「同郷という間柄で、荒井氏が北海道という土地柄もあって一次産業の振興策を重要政策に掲げることから関わりが深い」(健食業界関係者)という。
◇
また、荒井氏の経歴をみると、東京大学農学部を1970年に卒業後、農林水産省に入省。約20年に渡り農水官僚として勤め上げている。
一方、荒井氏が大臣に就く消費者庁は、当初、厚生労働省や農水省の出向組からなる寄り合い所帯でスタートした。しかし、今では農水官僚が庁の中枢をリードしており、「今年4月の人事異動で厚労官僚は閑職に追いやられ、農水官僚が要職を占めている」(行政に近い関係筋)という。実際、検討会事務局である食品表示課の相本浩志課長、平中隆司課長補佐ともに農水出身。こうした庁内の状況を踏まえれば、荒井氏が消費者庁の担当大臣に就任したことも納得できる。
◇
そして、"北海道"をキーワードに荒井氏や小砂氏とつながりが深いのが、健食を含む食品の機能性表示確立をめざす業界団体「新食品・機能性食品と農林畜水産業を語る会」(語る会)だ。アミノアップ化学は加盟企業の一つ。最近では全国に約300社の加盟企業を有する団体に成長したことからにわかに勢いを増している。
語る会は、これまで荒井氏や北海道バイオ工業会と食品の機能性表示や健食の法的位置づけについて意見交換を繰り返しており、政権交代を前に荒井氏と関係を深めてきた。
◇
今回の閣僚人事について、語る会の栗下昭弘専務理事は、「北海道庁も道経連も興味は持っている。ただ、そのことだけで健食の(表示)規制がそう簡単に動くとは考えていない。北海道の企業の大半は食品企業で健食関連はわずか。それぞれ思いも違えば、バランスを取ることも必要になる」と慎重な見方を示す。確かに今回の組閣は参院選に向けた暫定的な意味合いが強く、民主党が勝利しても今秋には代表選が控えている。
ただ、検討会の論点整理を目前に控え、健食業界と浅からぬ関係にある荒井氏が消費者・少子化担当相に就任したことは注目に値する。「(消費者庁をリードする)農水官僚はトクホを消費者庁の省益として育てようとしている」(前出の業界関係者)との見方もあるためだ。健食表示の問題に荒井氏がどのような手腕を発揮するか注目だ。
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菅直人新首相は6月8日、新内閣の閣僚人事を発表した。健康食品業界として注目したいのは、社民党との連立解消以降、空席となっていた消費者担当相のポストに民主党の荒井聰議員が決まったことだ。荒井氏はかねてより健食業界と浅くはない関係を持っている。折りしも、消費者庁で「健康食品の表示に関する検討会」(検討会)の論点整理に向けた審議が続く最中の人事。業界に"福音"をもたらす可能性もある。
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荒井氏と健食業界との関係。そのルーツは北海道にある。
北海道といえば、思い起こされるのが以前、超党派の議員連盟「健康食品問題研究会」の会長を務め、健食法制化を業界と一体的に進めた石崎岳前議員(自民党)の存在だ。この石崎氏と昨年の衆院選・北海道3区で争ったのが荒井氏だった。
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さらにこの選挙区、健食素材の開発製造を行う「アミノアップ化学」が本拠を置く地でもある。
同社の小砂憲一会長は、北海道経済連合会(道経連)常任理事、北海道バイオ工業会代表理事会長、北海道バイオ産業クラスター・フォーラム会長などを兼任し、北海道庁と共に道内のバイオ産業振興に尽力する人物。荒井氏との関係も長い。「同郷という間柄で、荒井氏が北海道という土地柄もあって一次産業の振興策を重要政策に掲げることから関わりが深い」(健食業界関係者)という。
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また、荒井氏の経歴をみると、東京大学農学部を1970年に卒業後、農林水産省に入省。約20年に渡り農水官僚として勤め上げている。
一方、荒井氏が大臣に就く消費者庁は、当初、厚生労働省や農水省の出向組からなる寄り合い所帯でスタートした。しかし、今では農水官僚が庁の中枢をリードしており、「今年4月の人事異動で厚労官僚は閑職に追いやられ、農水官僚が要職を占めている」(行政に近い関係筋)という。実際、検討会事務局である食品表示課の相本浩志課長、平中隆司課長補佐ともに農水出身。こうした庁内の状況を踏まえれば、荒井氏が消費者庁の担当大臣に就任したことも納得できる。
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そして、"北海道"をキーワードに荒井氏や小砂氏とつながりが深いのが、健食を含む食品の機能性表示確立をめざす業界団体「新食品・機能性食品と農林畜水産業を語る会」(語る会)だ。アミノアップ化学は加盟企業の一つ。最近では全国に約300社の加盟企業を有する団体に成長したことからにわかに勢いを増している。
語る会は、これまで荒井氏や北海道バイオ工業会と食品の機能性表示や健食の法的位置づけについて意見交換を繰り返しており、政権交代を前に荒井氏と関係を深めてきた。
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今回の閣僚人事について、語る会の栗下昭弘専務理事は、「北海道庁も道経連も興味は持っている。ただ、そのことだけで健食の(表示)規制がそう簡単に動くとは考えていない。北海道の企業の大半は食品企業で健食関連はわずか。それぞれ思いも違えば、バランスを取ることも必要になる」と慎重な見方を示す。確かに今回の組閣は参院選に向けた暫定的な意味合いが強く、民主党が勝利しても今秋には代表選が控えている。
ただ、検討会の論点整理を目前に控え、健食業界と浅からぬ関係にある荒井氏が消費者・少子化担当相に就任したことは注目に値する。「(消費者庁をリードする)農水官僚はトクホを消費者庁の省益として育てようとしている」(前出の業界関係者)との見方もあるためだ。健食表示の問題に荒井氏がどのような手腕を発揮するか注目だ。