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楽天 物流サービスの実力は?① 「即日」「同梱」に向け始動

2010年 5月20日 19:39

 楽天が物流事業に本腰を入れ始めた。自前の物流センターを千葉県内に構え、今秋にも稼働することになった。アマゾンに対抗する楽天が選んだのは、仮想モール出店企業の取扱商材や消費者ニーズによって使い分けができる"ハイブリッド型"の物流だ。同社の物流サービスの実力に迫る連載の第1回は、楽天物流設立の狙いなどに触れる。

 そもそも、楽天はなぜ自前で物流施設を持つのか。

 そこには、物流・配送サービスで"2番手"に甘んじてきた状況を打破したいという思いがちらつく。
 
 自社で商品を仕入れて販売するのがメーンのアマゾンとは異なり、楽天はあくまで仮想モールの運営者。数多くの中小企業に出店してもらうことで、手数料収入を得て成長してきた。
 
 しかし、自社で商品をコントロールしないという"身軽な"事業モデルが、物流面ではアマゾンに遅れをとる結果になっていた。
 2年前、出店企業ごとに異なる配送レベルの底上げなどを目指してスタートした物流代行の「楽天物流サービス」は、パートナーシップを結ぶ物流専業者の開拓などもあり、サービスの開始はアマゾンが先。
 
 また、大型の物流拠点を軸に即日配送の「当日お急ぎ便」をサービス化しているアマゾンに対し、楽天ではこれまで、受注日の翌日に届ける「あす楽」が限界だった。
 
 そうした状況を打ち破るべく、今年初めに三木谷社長が掲げた重点テーマのひとつが「物流」だ。
 
 商品を安全・迅速に、かつ安価に届けてもらいたいという消費者の変らない要望に応えるために、物流拠点を自前で持つ決断をした。
 
 ただ、楽天の場合、すでに3万以上の店舗が全国に散らばっており、これを自社の物流拠点に集約するのは現実的ではない。

 そこで、仕入れ販売する「楽天ブックス」の一部商品を自社で管理して「即日配送」を先行実施し、そのほかの楽天店舗については、代行サービスでパートナーシップを結ぶ物流事業者16社とのパイプを太くするという選択をした。
 この2本の柱を同時に育てることで、「商材によって自前の拠点とパートナーのネットワークを適時使い分ける"ハイブリッド型"の物流を構築する」(宮田啓友・楽天物流社長)とする。

新刊など年内に即日配送開始へ


 今年3月に設立した楽天物流の役割、機能は大きく分けて3つある。1つは、「楽天ブックス」の拡大。埼玉県内にある日販の倉庫は保管能力が限界にあり、楽天物流と役割を分担する。

 同社は新作DVDや新刊本、雑誌などを新センターで扱うことで、取扱量の拡大に対応するとともに、ヤマト運輸と組んで即日配送を年内にも開始する。
 
 2つ目は、自前で拠点を持つことで、異なる店舗の商品を同梱する新サービスを開始する。物流代行サービスを新会社に移管し、物流パートナーが請け負う店舗の商材を一度、新センターに集めて同梱し、消費者に届ける仕組みを構築する。

 3つ目は、物流面で楽天グループ全体の交渉窓口となり、スケールメリットを背景に物流事業者への価格交渉能力を高める。
 
 楽天は、新会社を核に、3年以内に東名阪で自前の物流拠点を整備する考え。すでに、アマゾンは大阪にも大型の物流センターを構えるだけに、「ハイブリッド型」の真価が問われるのはこれからだ。


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