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変わる表示規制、忍び寄る「保健所」の監視③ 変わるロジック、健康イメージ「全体印象」で監視

2017年 2月 9日 17:37

 健康食品が最も注意すべき表示関連法は、薬機法(旧薬事法)と景品表示法だ。だが、健康増進法も消費者庁への移管以来、「広告」を判断する3要件のうち「商品名の表示」を絶対条件とせず、「顧客を誘引する意図」をより重視するよう"景表法仕様"に変わっている(本紙1592号既報)。以降、運用のしやすさが格段にアップしている。

与えられた役割

 健康食品を監視する各法を横並びでみると、薬機法は医薬品的効果の暗示など「NGワード」が明確だ。景表法も「優良・有利誤認」を規制するなどその対象が明確。事業者も禁止事項が判断しやすい。その反面、「いわゆる健食」が得意とする"健康イメージ"のようなあいまいな表現の監視は行いにくい。そこで健増法の役割として重視されたのが「全体印象」の監視だ。健増法と景表法の一体的運用は、消費者庁に「食品表示対策室」が設置されて以来の課題とされてきた。消費者庁は、いかにしてその執行スキームを作りあげたのか。

イメージの監視

031.jpg 昨今、景表法処分が相次ぐダイエット健食の「痩身効果」と、昨年3月に行われたライオンの「トマト酢生活」に対する健増法適用を比べると分かりやすい。

 ダイエット対応の健食を飲んで「○週間で○キロ痩せました」というのは、景表法の「不実証広告規制」で取り締まりやすい。ダイエットは「食事制限や運動を行うことなく痩せることはない」というのが専門家の確定的評価。行き過ぎた表現をすれば事業者が根拠を提出しても十中八九認められない。

 一方、景表法の弱みは莫とした健康イメージからくる誤認を取り締りにくいことだ。「トマト酢生活」は、血圧の低下作用の科学的根拠が認められているれっきとした「トクホ」。「『血圧低下作用』といったところで国がその根拠を認め、『50・60・70・80代の方に朗報』などそれ以外の表現もこれが"著しく優良か"というと該当しない」(行政の元執行担当官)。

 一方、健増法の特徴は「診療の機会を逸する」など国民の健康に影響を与えるものについて「著しく誤認」するものを取り締まることができる。「50・60~」「薬に頼らず食生活で血圧対策」といった複数の表示からくる全体的な印象が"医者いらず"を想起させるとして健増法の要件に合致した。

指導中心の運用

 健増法の運用で断トツの指導実績を持つみなと保健所の担当者は「やはり有名人を使って若々しいイメージで訴求すると、無名の方が勧めるより効果的。有名人や疾患を抱えた人が"これ飲んでます"みたいなものは誤認を与える可能性が
高い。使い方によっては誇大広告になる」と話
す。

 問題はその指導に法的根拠があるか、という点だ。「指導担当は事件担当より違法性の判断基準が低い」というのが前出の元執行担当官の見方。指導を受けた事業者は「行政訴訟に発展したら行政側が違反を立証しうる論拠をもてるのか」と行政指導の乱発に警戒感を持つ。

 ただ、健増法の執行ステップは法的拘束力のない「勧告」、これに従わない場合、拘束力を持つ「命令」となる。行政指導、勧告段階では事業者は究極的に従う必要もない。いわばプレッシャーとしての運用だ。「法的拘束力のない指導を訴訟で争うのは難しい」(元執行担当官)と話すように、手軽に誇大広告に対する表示是正が図れるわけだ。

 「消費者庁からは指導に力を入れて、と言われている」(ある保健所の担当者)というが、厳密な認定を必要としない指導中心に運用を拡大していく狙いがあるとみられる。そうなると全国に480もの監視網を持つ保健所の存在が絶大な威力を発揮してくることになる。(つづく)
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