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医療品通販訴訟の判決、"ネットは対面に劣る"、形式的な仕組みで判断、実態の検証はなく

2010年 4月 8日 10:28

ケンコーコム(本社・東京都港区、後藤玄利社長)とウェルネット(同・横浜市戸塚区、尾藤昌道社長)が国を相手取り東京地方裁判所に提起した医薬品ネット販売規制訴訟で原告側の敗訴の判決が下された。判決は、原告側の主張を全て退ける内容で、さらにネット販売が対面販売に劣るという見方を示している。

 今回の訴訟で原告側が求めていたのは、一、二類医薬品の郵便等販売(通販)が行える権利の確認のほか、厚生労働省が作成した改正省令中の薬事法施行規則に盛り込んだ医薬品ネット販売規制に関する改正規定の無効確認および同規定の取り消し。主張の概要は、改正省令による過度の医薬品通販規制は法の委任範囲を超え、憲法で保障された職業選択の自由を侵害するというものだ。

 これに対し、東京地裁の判断は、まず改正省令規定の無効および取り消しの訴えについて、医薬品ネット販売規制が限られた特定の者のみを規制するものではなく、抗告訴訟の対象には当たらないとして却下した。その上で違憲性の主張について、現在の日本のIT環境下では、営業活動の様態に対する緩やかな規制では一般用医薬品の適切な選択と使用、副作用による健康被害防止という改正「薬事法」の規制目的が十分に達成することができないとして合憲と判断。省冷制定の手続きにも違法性は認められず、法の委任範囲を超えるものではないとした。

 これらは医薬品ネット販売規制を巡る議論で厚労省等が主張してきたもので、規制導入賛成派だった薬業関連団体でも、「これまで我々が主張してきた正当な判決」(日本薬剤師会)とする。言い換えれば、国の主張を丸ごと踏襲した内容だが、この判決で問題なのは「対面販売よりも通販が劣ると司法が判断したこと」(ケンコーコムの後藤社長)だ。

 判決要旨を見ても、対面販売では購入者の性別や体格、顔色、表情、声質を見聞きできるのにネット販売はそれができないなどとし、「インターネット販売は対面による販売に及ばず、両社の間には相当の有意な差異があるといわざるを得ない」と明言。さらにネット販売事業者が講じる安全性確保策や自主規制案でも「この差異を克服し得る方策が示されているとは認めがたい」と断じている。

 だが、これは形式的な仕組みだけの話。医薬品の対面販売の現場で情報提供等の対応が徹底できているのかは不透明で、実際には使用者がメールで知人などに医薬品の購入を依頼し薬局等で医薬品を購入することもできる。つまり、対面販売の現場での対応状況が十分に検証されないまま、ネット販売が体面劣るという司法判断が下されたと言わざるを得ないのだ。

 原告側は今回の判決を不服とし控訴する意向で、今年二月、楽天とヤフーが中心となって設立した「eビジネス推進連合会」でも、ケンコーコムの訴訟を後方から支援する意向を表明。会員企業に一連の問題に関する情報提供などを行っていく考えのようだ。既得権益者に押し切られる形で導入された医薬品ネット販売規制だが、同連合会が訴訟の支援に動き出すことで、ネット業界共通の課題という認識が広がっていきそうだ。

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