クレジットカード情報の漏洩事件が相次ぐ中で、購入時に必要な情報を、通販サイトごとに記入する必要がなくなる「ウォレット」機能を持った決済サービスが注目を集めている。その一つがMPayMe Japanが提供するスマートフォン向けの決済サービス「ZNAP(ズナップ)」だ。
ZNAPはQRコードを使った決済用のアプリ。通販サイトや店舗、請求書などに表示されたQRコードをスマホのカメラで読み取ると、事業者側が用意した「オンラインカタログ」の商品購入ページが表示される。ユーザーは事前にアプリをダウンロードし、住所やカード情報を登録しておけば、暗証番号の入力だけで決済が完了する。
ZNAPを導入しているサイトであれば、個人情報をいちいち入力する手間が省けるほか、「良く知らないサイトに情報を渡したくない」という不安感が解消され、購入率増加につながる。カード情報はZNAPのサーバー上で管理しているほか、複数デバイスからの同時アカウントによるアクセスを検知、すぐにサービスを停止するなど、セキュリティーにも力を入れている。
事業者側からみると、ユーザーの行動ログなどをマーケティングに役立てることが可能となる。属性に応じたクーポン発行や割り引きなどができるほか、アプリを利用している場合はプッシュ通知も可能。効果測定も容易となる。
QRコードを利用しているため、実店舗での運用も簡単だ。例えば、来店時にQRコードでチェックインし、店内では商品のQRコードを読み込みカートに追加。最後にQRコードでチェックアウトすると決済が完了する。また、商品ポスターに表示されたQRコードから、オンラインカタログに誘導するといった仕掛けも可能で、QRコードを読み込んだ際にはクーポン発行などの販促もできる。
「スクエア」や「コイニー」といったスマホ向け決済サービスと比較した場合、クレジットカードリーダーが不要なため費用面で有利なほか、「実店舗とネット販売を展開している企業には最適」(山路幹営業部部長)という。
ZNAPは2013年から世界でサービスを展開しており、日本ではスクロールが6月、スマホ通販に特化したブランド「Spiege(スピージュ)」で導入した。
現在、オンラインカタログには約40品目を登録している。これまでの販売数は「10件程度」(山路営業部部長)だが、スクロールでは、ZNAPでのリピート購入が3件あることを評価しているようだ。
7月には動画に表示されたQRコードから商品を購入できる仕組みを導入。オンラインカタログへのリンクや、目玉商品となる3商品の詳細ページへリンクし、誘導するという仕掛けだ。山路営業部部長は「スマホはPCに比べると、どうしても商品のPR力は弱くなる。動画で詳しく解説し、直接購入導線を設けるのは効果的ではないか」と期待する。顧客属性にあわせたクーポンの発行などはまだ実施していないが、今後はQRコードを載せた商品チラシを、スクロールの顧客向けに同封する計画もあるようだ。
ZNAPの決済手数料率は3・24%でデータ処理料と月額基本料は無料。事業者がカード会社と加盟店契約をしている場合は、決済手数料率0・2%、データ処理料は1件あたり20円、月額基本料は1万円となる。
MPayMe Japanでは、「中小の小売り企業は、多数の会員を抱える企業がサービスを始めることで導入のメリットが生まれる」(同)と考えており、年内に大手20社への導入を目指している。
なお、親会社のMPayMeがパワーテクノロジーグループと合併したことから、8月1日付でサービス名を「PowaTag(パワタグ)」に変更する予定。