住友商事のグループ企業で、日用品や健康関連商品のネット販売を行う爽快ドラッグがハイペースの事業規模拡大を続けている。2014年3月期業績の売上高は前期比約26%増の195億円。前期は重点施策として、事業規模の拡大に対応するための体制整備に注力したが、出店する仮想モールで相次いだセール、3月の消費税増税前の駆け込み需要などの追い風もあり、2桁の増収を維持した形だ。これまでの体制整備に節目がついたことを受け、事業拡大の取り組みを積極化する構えを見せる爽快ドラッグの今期戦略を概観する。
通年ベース売上げ初めてKC上回る 前期は、爽快ドラッグにとって大きなプロットポイントの年になったと言っていい。同様の商材を扱い、健康関連商品ネット販売のトップ企業を標ぼうするケンコーコムの売上高を通年ベースで初めて上回ったためだ。
ケンコーコムは前期、決算期の変更(3月から12月へ)に伴う9カ月の変則決算だったが、前期と今年1月から3月までの今期第1四半期を合算した通年ベースでみると、ネット販売のリテール事業の売上高(海外向けおよび「楽天24」含む)は約177億円。連結ベースでは約195億円と、爽快ドラッグに並ぶが、主力事業のネット販売での勢いの差がより鮮明になった。
20%台の増収も物流がネックに 爽快ドラッグは前期、重点施策として今後の事業拡大に備えた体制整備を進め、この一環として基幹システムの入れ替えを実施。フロントとバックの連携を強化し、今後の事業展開に向けてより柔軟性の高いシステムとしたほか、大阪にあるコールセンターを移転し、オペレーターを増強するなど顧客対応の強化も図っている。
こうした取り組みと並行して、売り上げの拡大にも取り組んだわけだが、前期売上高の高伸の背景には、拡販につながるイベントが例年以上に多かったことがあると言える。
実際に前期は、出店する「楽天市場」で恒例の「楽天スーパーセール」のほかに楽天球団の優勝記念セールがあり、今年3月には、消費増税前の駆け込み特需もあった。特に、この3月は単月で過去最多の売り上げを記録するなどインパクトは大きかったようだ。
だが、同社の小森社長は前期業績について、「本来であれば、もっと売り上げが取れたはず」と、物足りなさを口にする。その理由は、拡販の機会となる各イベントを活かしきれなかったことだ。
セールや増税前の駆け込みなどのイベントでは、一定期間に大量の受注が集中する。その波動の大木さを予測して、物流センターの人員配置など必要な体制を敷くことが重要になるが、前期は、例年以上にイベントが多く、急速かつ大きな受注の波動に物流機能が追い付かない事態が発生。
このため、販促活動を一時抑制せざるを得ない状況となるなど、販売機会の損失も少なからずあったわけだ。
引き続きハイペースの増収を維持したものの、前期の実績を考えると、物流センターの稼働状況次第では、売上高200億円の大台を突破していた可能性もあっただけに、同社としては、必ずしも満足のいく結果ではなかったというのが本音のようだ。
物流体制を強化、売場拡大も計画
一方、爽快ドラッグは今期、前期に整備した基盤をもとに、事業拡大の取り組みを積極化する考え。前期にネックとなった物流センターの課題もあるが、これについては関東地区への基幹物流センターの設置を計画。大阪に所在する既存の物流センターと併せ、体制を強化する。
関東の基幹物流センターは、神奈川県相模原市に設置するもので、大阪の既存物流センターと同等の約5000坪規模を擁し、マテハンなどの設備も当初から導入。投資額は30~35億円となる見込みだ。
これにより、今後の事業拡大に対応した商品管理体制を整えるとともに、在庫の分散化によるリスクヘッジ、顧客基盤の厚い関東圏での配送リードタイム短縮およびコストの削減につなげる意向で、6月から着工し、稼働は今秋頃になる予定だ。
また、かねてから基本戦略のひとつとして掲げている"売場の拡大"についても、前期に刷新した基幹システムを活用し、今期中に「ポンパレモール」への出店を計画する。
薬・ベビー関連でプラスオン効果も 爽快ドラッグでは、今期の見通しについて、関東の基幹物流センターが稼働する下期以降、売り上げが大きく伸びるものと予測するが、商品面でも、追い風となりそうな要因がいくつかある。まず、挙げられるのが一般用医薬品だ。
一般用医薬品については、医薬品ネット販売のルールを盛り込む改正薬事法および省令が6月に施行されることを受け、すでに他社でも取り扱い強化に動き出しているが、爽快ドラッグでも、薬店を移転・拡張するなど、取扱品目拡大に向けた準備を推進。改正薬事法の施行段階は、従来から販売している第3類医薬品のみでスタートし、販売ルールに則したシステムを構築した上で、第2類、第1類医薬品へと、順次取り扱いを拡大していく意向だ。
もうひとつ追い風となりそうなのは、ベビー関連商品。この部分では、今年4月に買収を発表したベビー関連商品のネット販売を行うあかちゃんハウス一二三との連携がカギになる。
あかちゃんハウス一二三との連携については、両社の通販サイト運営を維持し、互いに商品を登録し合う展開を構想。バックヤード部分については、取り扱う商材の特性の違いを勘案し、受注や物流関連のシステムを連携させ、各社の既存の物流センターから発送する体制にする考えだ。
小森社長によると、あかちゃんハウス一二三以外にも、いくつかネット販売事業者の身売り話が持ち込まれたことはあったという。だが、自社で扱う商品とのシナジー効果を考えると、これまでの案件には「ピンとくるものがなかった」。
これに対し、あかちゃんハウス一二三は、ベビーベッドやベビーカーなどのベビー関連用品をメーンに展開。ベビーフードや紙おむつといった育児関連の消耗品、さらに母親層向けの化粧品などを扱う爽快ドラッグとの親和性が高く、相互送客などのシナジー効果が期待できるわけだ。
さらに爽快ドラッグが着目したのは、あかちゃんハウス一二三の販売手法。ロングテールの品ぞろえをベースに"広く浅く"販売する手法を採ってきた同社としては、「ひとつの商品で深く売り上げを取る」(同)あかちゃんハウス123のノウハウを活用した販売手法の補完も視野に入れる。
日用品や健康関連商品のネット販売では、ケンコーコムやロハコなどネット専業、有力小売り事業者など競争相手は多い。
ケンコーコムでは親会社の楽天から継承した「楽天24」の展開の拡大に注力し、もう一段上の成長を狙うが、これに対し爽快ドラッグでは、一連の施策を通じ売り上げの拡大を推進。通期の売上高は、ケンコーコムの280億円(うち「楽天24」で100億円計画)を上回る300億円(自社で240~250億円、あかちゃんハウス一二三で50~60億円)を目標に設定する。
通年ベース売上げ初めてKC上回る
前期は、爽快ドラッグにとって大きなプロットポイントの年になったと言っていい。同様の商材を扱い、健康関連商品ネット販売のトップ企業を標ぼうするケンコーコムの売上高を通年ベースで初めて上回ったためだ。
ケンコーコムは前期、決算期の変更(3月から12月へ)に伴う9カ月の変則決算だったが、前期と今年1月から3月までの今期第1四半期を合算した通年ベースでみると、ネット販売のリテール事業の売上高(海外向けおよび「楽天24」含む)は約177億円。連結ベースでは約195億円と、爽快ドラッグに並ぶが、主力事業のネット販売での勢いの差がより鮮明になった。
20%台の増収も物流がネックに
爽快ドラッグは前期、重点施策として今後の事業拡大に備えた体制整備を進め、この一環として基幹システムの入れ替えを実施。フロントとバックの連携を強化し、今後の事業展開に向けてより柔軟性の高いシステムとしたほか、大阪にあるコールセンターを移転し、オペレーターを増強するなど顧客対応の強化も図っている。
こうした取り組みと並行して、売り上げの拡大にも取り組んだわけだが、前期売上高の高伸の背景には、拡販につながるイベントが例年以上に多かったことがあると言える。
実際に前期は、出店する「楽天市場」で恒例の「楽天スーパーセール」のほかに楽天球団の優勝記念セールがあり、今年3月には、消費増税前の駆け込み特需もあった。特に、この3月は単月で過去最多の売り上げを記録するなどインパクトは大きかったようだ。
だが、同社の小森社長は前期業績について、「本来であれば、もっと売り上げが取れたはず」と、物足りなさを口にする。その理由は、拡販の機会となる各イベントを活かしきれなかったことだ。
セールや増税前の駆け込みなどのイベントでは、一定期間に大量の受注が集中する。その波動の大木さを予測して、物流センターの人員配置など必要な体制を敷くことが重要になるが、前期は、例年以上にイベントが多く、急速かつ大きな受注の波動に物流機能が追い付かない事態が発生。
このため、販促活動を一時抑制せざるを得ない状況となるなど、販売機会の損失も少なからずあったわけだ。
引き続きハイペースの増収を維持したものの、前期の実績を考えると、物流センターの稼働状況次第では、売上高200億円の大台を突破していた可能性もあっただけに、同社としては、必ずしも満足のいく結果ではなかったというのが本音のようだ。
物流体制を強化、売場拡大も計画
一方、爽快ドラッグは今期、前期に整備した基盤をもとに、事業拡大の取り組みを積極化する考え。前期にネックとなった物流センターの課題もあるが、これについては関東地区への基幹物流センターの設置を計画。大阪に所在する既存の物流センターと併せ、体制を強化する。
関東の基幹物流センターは、神奈川県相模原市に設置するもので、大阪の既存物流センターと同等の約5000坪規模を擁し、マテハンなどの設備も当初から導入。投資額は30~35億円となる見込みだ。
これにより、今後の事業拡大に対応した商品管理体制を整えるとともに、在庫の分散化によるリスクヘッジ、顧客基盤の厚い関東圏での配送リードタイム短縮およびコストの削減につなげる意向で、6月から着工し、稼働は今秋頃になる予定だ。
また、かねてから基本戦略のひとつとして掲げている"売場の拡大"についても、前期に刷新した基幹システムを活用し、今期中に「ポンパレモール」への出店を計画する。
薬・ベビー関連でプラスオン効果も
爽快ドラッグでは、今期の見通しについて、関東の基幹物流センターが稼働する下期以降、売り上げが大きく伸びるものと予測するが、商品面でも、追い風となりそうな要因がいくつかある。まず、挙げられるのが一般用医薬品だ。
一般用医薬品については、医薬品ネット販売のルールを盛り込む改正薬事法および省令が6月に施行されることを受け、すでに他社でも取り扱い強化に動き出しているが、爽快ドラッグでも、薬店を移転・拡張するなど、取扱品目拡大に向けた準備を推進。改正薬事法の施行段階は、従来から販売している第3類医薬品のみでスタートし、販売ルールに則したシステムを構築した上で、第2類、第1類医薬品へと、順次取り扱いを拡大していく意向だ。
もうひとつ追い風となりそうなのは、ベビー関連商品。この部分では、今年4月に買収を発表したベビー関連商品のネット販売を行うあかちゃんハウス一二三との連携がカギになる。
あかちゃんハウス一二三との連携については、両社の通販サイト運営を維持し、互いに商品を登録し合う展開を構想。バックヤード部分については、取り扱う商材の特性の違いを勘案し、受注や物流関連のシステムを連携させ、各社の既存の物流センターから発送する体制にする考えだ。
小森社長によると、あかちゃんハウス一二三以外にも、いくつかネット販売事業者の身売り話が持ち込まれたことはあったという。だが、自社で扱う商品とのシナジー効果を考えると、これまでの案件には「ピンとくるものがなかった」。
これに対し、あかちゃんハウス一二三は、ベビーベッドやベビーカーなどのベビー関連用品をメーンに展開。ベビーフードや紙おむつといった育児関連の消耗品、さらに母親層向けの化粧品などを扱う爽快ドラッグとの親和性が高く、相互送客などのシナジー効果が期待できるわけだ。
さらに爽快ドラッグが着目したのは、あかちゃんハウス一二三の販売手法。ロングテールの品ぞろえをベースに"広く浅く"販売する手法を採ってきた同社としては、「ひとつの商品で深く売り上げを取る」(同)あかちゃんハウス123のノウハウを活用した販売手法の補完も視野に入れる。
日用品や健康関連商品のネット販売では、ケンコーコムやロハコなどネット専業、有力小売り事業者など競争相手は多い。
ケンコーコムでは親会社の楽天から継承した「楽天24」の展開の拡大に注力し、もう一段上の成長を狙うが、これに対し爽快ドラッグでは、一連の施策を通じ売り上げの拡大を推進。通期の売上高は、ケンコーコムの280億円(うち「楽天24」で100億円計画)を上回る300億円(自社で240~250億円、あかちゃんハウス一二三で50~60億円)を目標に設定する。