ファンケルとDHC 知財高裁で和解成立、DHC「逆転勝訴」とPR
メーク落としに関する特許を侵害されたとしてファンケルがディーエイチシー(DHC)を相手取り、損害賠償を求めた訴訟の控訴審は7月9日、知財高裁で和解が成立した。DHCはこれを受けてプレスリリースを発表。その中で"逆転勝訴と考えている"とPRしている。
DHCによる特許侵害を巡る訴訟は昨年5月、東京地裁がDHCに約1億6500万円の損害賠償の支払いを命じる判決を言い渡し、DHCがこれを不服として知財高裁に控訴していた。一方、ファンケルも損害額を不服として計3億6700万円の支払いを求めて付帯控訴していた。
また、DHCはファンケルの提訴を受けて10年11月、ファンケルの特許の有効性を巡り特許庁に無効審判を請求。12年1月、特許庁が無効審決を言い渡したことを受けて知財高裁に審決取消訴訟を提起していた。
ファンケルでは、和解条件として(1)侵害の対象となっていた製品の製造販売を再開しないこと、(2)無効審判を取り下げること、(3)特許の有効性について今後争わないことの3点が受け入れられたことから「(損害賠償など当初求めていた)全ての条件ではないが、販売させないという本来の目的は達成したため合意した」(ファンケル)として、審決取消訴訟を取り下げ、和解が成立した。
係争中の11年10月、ファンケルは対象となった製品「DHCマイルドタッチクレンジングオイル」の製造販売差し止めを求める仮処分命令を申請。これを受けてDHCは、製品の製造販売を止めているが、再開について言及していなかったため、今回、和解条件として改めて言及された。
和解を受けてDHCはプレスリリースを発表。その中で今回の訴訟について"知財高裁における審理の結果、特許権侵害を認めず、金銭の支払いもしないと主張する和解条件をファンケルが受諾したため和解することとし..."と説明。「逆転勝訴と考えており、大変満足しております」とコメントしている。
これについてファンケルは「特許権侵害がなかったかのように見えるが、和解条件の中でお互いがそこに言及しなかっただけ。今でも侵害はあったと認識している。和解に勝敗はなく、『逆転勝訴』との表現は適切でない」(同)としており、見解は食い違っている。
ただ、プレスリリースを発表する予定もなく、DHCの発表に対する再反論も行う予定はないという。理由については「裁判結論と異なり、和解は両社の中での合意のため守秘義務と同様の捉え方を含むと考えるため。(DHCが)発表されたので個別の取材では見解を伝えていきたい」(同)とした。互いの恣意性が入る余地のある書面論争に発展することを避けたいとの考えがあるようだ。
DHCのリリースに、ある弁護士は「『勝訴的和解』と表現することはあり、今回の和解を社内的に『逆転勝訴』と評価することは問題ない。ただ、和解とは双方が互いに譲歩して紛争を解決すること。本件ではDHCも特許無効審判を取り下げるという譲歩を行っている。譲りあって円満解決した建前なのに、一方的に『逆転勝訴』とリリースされたら、相手方がどう受け止めるか、説明するまでもない。あくまで道義上の問題だが、このような表現を対外的に公表することは避けるべきであり、リリースでその表現を使うDHCの品位にかなり疑問を持つというのが率直な感想」とした。
この点についてDHCに見解を求めたが答えは得られなかった。
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また、DHCはファンケルの提訴を受けて10年11月、ファンケルの特許の有効性を巡り特許庁に無効審判を請求。12年1月、特許庁が無効審決を言い渡したことを受けて知財高裁に審決取消訴訟を提起していた。
ファンケルでは、和解条件として(1)侵害の対象となっていた製品の製造販売を再開しないこと、(2)無効審判を取り下げること、(3)特許の有効性について今後争わないことの3点が受け入れられたことから「(損害賠償など当初求めていた)全ての条件ではないが、販売させないという本来の目的は達成したため合意した」(ファンケル)として、審決取消訴訟を取り下げ、和解が成立した。
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和解を受けてDHCはプレスリリースを発表。その中で今回の訴訟について"知財高裁における審理の結果、特許権侵害を認めず、金銭の支払いもしないと主張する和解条件をファンケルが受諾したため和解することとし..."と説明。「逆転勝訴と考えており、大変満足しております」とコメントしている。
これについてファンケルは「特許権侵害がなかったかのように見えるが、和解条件の中でお互いがそこに言及しなかっただけ。今でも侵害はあったと認識している。和解に勝敗はなく、『逆転勝訴』との表現は適切でない」(同)としており、見解は食い違っている。
ただ、プレスリリースを発表する予定もなく、DHCの発表に対する再反論も行う予定はないという。理由については「裁判結論と異なり、和解は両社の中での合意のため守秘義務と同様の捉え方を含むと考えるため。(DHCが)発表されたので個別の取材では見解を伝えていきたい」(同)とした。互いの恣意性が入る余地のある書面論争に発展することを避けたいとの考えがあるようだ。
DHCのリリースに、ある弁護士は「『勝訴的和解』と表現することはあり、今回の和解を社内的に『逆転勝訴』と評価することは問題ない。ただ、和解とは双方が互いに譲歩して紛争を解決すること。本件ではDHCも特許無効審判を取り下げるという譲歩を行っている。譲りあって円満解決した建前なのに、一方的に『逆転勝訴』とリリースされたら、相手方がどう受け止めるか、説明するまでもない。あくまで道義上の問題だが、このような表現を対外的に公表することは避けるべきであり、リリースでその表現を使うDHCの品位にかなり疑問を持つというのが率直な感想」とした。
この点についてDHCに見解を求めたが答えは得られなかった。