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「食品表示担当班」の実力は? "本質重視"の法運用

2013年 3月14日 10:28

消費者庁が「食品表示担当班」をつくり、健康食品の表示規制強化に舵を切ったことは、前号(1404号)で触れた。同班は7月に「食品表示対策室」に格上げされ、同庁表示対策課の管理下に置かれる。実質的には、景品表示法で高い「法運用スキル」を持つ表示対策課が、健康増進法を含め運用するというものだ。では、その「法運用スキル」はどのようなものなのか。

 食品表示課による健増法の執行実績がない背景には、人員と執行ノウハウの不足がある。ただ、専任のスタッフが2人と少なかった事情を踏まえてもなお、時間をかければ健増法に基づく「勧告」の認定はできたはず。より本質的な問題は、「法運用スキル」の未熟さにある。

 その点、表示対策課にはどうだろうか。

 消費者庁の創設以降、表示対策課課長は公正取引委員会出身の職員が着任してきた。私見だが、取材を通じて知るこれら職員に共通するのは、学究肌であること。非常に物事のニュアンスに注意を払い、違反事例や景表法に関する法解釈を問うと、常に慎重な言い回しで答えを返してくる。こうした印象は、他の課の職員には感じない独特のものだ。

 過去の違反事例を見ても、その事実認定の精緻さは、そのような表示対策課の性格のなせる技のように思える。「表示主体者」を巡る法運用が良い例だ。

 「表示主体者」は、基本的に販売事業者がその対象になる。

 ただ、公取委が景表法を所管していた2004年には、「ルーマニア製」のズボンを「イタリア製」と表示して販売していたケースで、小売5社と共に卸元の八木通商もその責任を問われた。不当表示の背景に品質表示に関する八木通商の管理ミスがあるとしたためだ。

 09年には、家電量販店を介して電気冷蔵庫を販売していた日立アプライアンスが不当表示の「表示主体者」として処分を受けている。このように卸元やメーカーが表示主体者となるケースもある。

 一方で04年、レトルトカレーの産地表示を巡り、セシールとベルーナが排除命令を受けたケースでは、表示主体者は小売事業者とされ、卸元のジャルックスは不問に付された。

 ルーマニア製ズボンの件では"卸元のミスによる誤表示なのに小売まで重い処分はおかしい"と小売5社が公取委に対して審判請求を行い、レトルトカレーの件ではセシールが処分を不服として卸元に損害賠償を求める裁判を起こした。個別事案で分かれる「表示主体者」の判断は、長く景表法運用上の火種となってきた。

 個別事例の法解釈の是非はともかく、その認定からは"誰が表示を作成し、表示を行った責任者なのか"という本質に迫ろうとする公取委(現在は表示対策課が運用)の姿勢と、強いメッセージ性を感じる。時に物議をかもすことのある法運用も、そのような解釈が示せるのは、厳密な事実認定に賭ける信念があってこそのこと。その決断力こそが、表示対策課の「法運用スキル」と呼べるものではないだろうか。

 その表示対策課が健増法を運用する...。「やってみなければ分からない」とは言うが、景表法の運用実績を見ても、表示対策課は間違いなく健増法を自らの信念に基づき運用できる「法運用スキル」を持った集団と言えるだろう。

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