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オークローンマーケティング・ヒル社長に次の一手を聞く(上)「前期は"3大ショック"で苦戦」

2012年 8月23日 17:19

2men.JPG これまで順調に業績を拡大させてきたオークローンマーケティング(OLM)。しかし、前期(2012年3月)は震災や地デジ化、刷新した基幹システムの不具合などが重なった結果、前年比で売上高はほぼ横ばい、利益面では6割減で着地、苦戦を強いられたようだ。ただ、前年下期より復調の兆しを見せ、今期はむしろ好調に推移、年商600億円超ペースで業績を伸ばしているようだ。ハリー・A・ヒル社長に前期のビジネスの状況と今期の状況や戦略について聞いた。(聞き手は本紙編集長・鹿野利幸)


 ――2012年3月期は売上高が前年比0・2%増の540億2600万円、営業利益が同67・3%減の27億800万円で着地した。この数年の急成長からすると前期は若干、苦戦したようだ。

 「前期は我々とっては『3大ショック』があった。『震災』『地デジ化』『システムの不具合』だ。今、振り返って反省するとこれらの対応について、もう少し上手に対応できればよかったなとは思っている」

 ――具体的には。

 「昨年3月の東日本大震災の影響で大きかったのは、売れ筋の変化とこれに関連したコアターゲット層であるF2層(35~49歳の女性)のレスポンスの低下だ。震災後、フィットネスやダイエットといった『自分への投資』に関連したエクササイズDVDやフィットネス器具などの商材の動きが鈍く、逆に『家族の生活を守る』商材、例えば掃除用品や家電、キッチン用品などが売れ筋となった。実際、昨年の4、5月は、震災直後にも関わらず、そうした商材を中心に月次の売り上げは悪くなかった。とは言え、例年までの動きと4、5月の売り上げも悪くなかったことで、さすがに第2四半期(7~9月)からはフィットネスやダイエット関連の商品が動き始めるだろうと考え、そうした戦略を採ったわけだが、これが読み間違えだった。昨年に関しては、これまで安定した売れ行きを見せていたフィットネス・ダイエット関連商材はずっと動きが悪かった。これに関連してF2層のレスポンス低下もあった。当社ではフィットネス・ダイエット関連商材のコアターゲットは当該層だ。先ほど申し上げたような理由でそれらの商材の動きが悪かったこと。加えて、震災により、節電の影響もあり、『ながら視聴』をやめるなども含めて『テレビ離れ』が起こった。各年代別の視聴率データなどからも分かるが特にF2層の『テレビ離れ』は顕著だったようだ。我々にとっては当該層はコア顧客であるため、これは非常に問題だった。あとは総売上高のおよそ2割を占める小売店向けの卸事業も特に関東エリアで伸び悩んだ。震災後は各店舗は防災・節電関連商品が棚を占め、我々の商品を並べるスペースがなく、商品回転率が落ちたためだ。これも震災の影響だろう」

 ――「地デジ化」の影響とは。

 「昨年7月の地上波テレビ放送の完全デジタル化だが、この影響について我々は少し甘く考えていた。正直、これほど一気に変わるとは思っていなかったが事実、6月30日と7月1日では明らかに変化した。一気に視聴が分散し、地上波だけでなく、BSにも人々の目が向けられるようになった。このため、我々がこれまで蓄積してきたデータ、要は『何曜日の何時のこのチャンネルはどういう層の人が見て、またどの程度の反応があるのか』というもので、これまで販売計画を考えてきたが、地デジ化以降は見えなくなってしまった。多チャンネル化で地上派、BSも含め、従来よりも視聴者層がより限定され、これまでの視聴者層と大きく変わったためだ。現状では新しいデータも大分、蓄積でき視聴者属性が絞り込め、インフォマーシャルもそれに特化したクリエイティブができるようになるなど逆にチャンスになってきているが、当時はショックだった」

 ――「システムの不具合」とは。

 「昨年8月に新しい基幹システムをカットオーバーしたのだが、それに慣れるまでに数カ月の間、オペレーション能力が低下した。本来であればアップセルなど様々なことができたはずだったが、できなかったことは事実だ。また、システムの不具合で先ほど言った『震災』や『地デジ化』の影響の"気付き"が遅れ、事態の把握と建て直しに時間を要した」

 ――これらが前期、苦戦した理由か。

 「そうだ。これに加えてデフレの影響もあったと思う。実は商品の出荷数ベースでは前年度比で30%アップだった。にも関わらず、売り上げが微増だったのは平均客単価が大幅に下がったからだ。レスポンスを作るために値引きやプレゼント特典を増やすなどしたためだ。レスポンスはアップしたが、平均単価が下がってなおかつ原価は上がったことなどで減益になった」(つづく)
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