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ジャパネットたかたの高田明社長に聞く 今後の通販戦略は? "脱・テレビ"に向け始動 

2012年 1月 5日 15:01

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テレビ通販の雄、ジャパネットたかたが「変革」の準備を着々と進めている。2011年12月期の業績は"家電エコポイント"に伴う「テレビ特需」の反動から売上高は前年比約200億円減の約1550億円、経常利益は半減の70億円程度で着地する見通しだ。2012年は「過去にない大きな変化の年とする」とし、これまで成長をけん引してきた"テレビ"に依存しない体制をこの1年間で整えるという高田明社長に今後の戦略について聞いた。(聞き手は本紙編集長・鹿野利幸)

200億の減収 経常利益は半減
 
――2011年の業績はどうだったか。

 2011年12月期決算は売上高が前年比で12~13%程度のダウン、金額ベースでは約200億円の減収(1550億円程度)となるだろう。(経常)利益も70億円(※前年の経常利益は約130億円)に届くかどうかだろう。理由は『テレビ』の販売減だ。

 前年の家電エコポイントの反動で『テレビの消費は落ちるだろう』と予測はしていたが、特に11月以降はその予測を超えるくらいテレビの落ち込みが激しかった。テレビが落ち込むとそれに伴って『ブルーレイレコーダー』や『オーディオ』なども影響を受けた。とは言え、さほど心配していない。こうした状況はむしろ、ピンチではなく、チャンスだと捉えているからだ。

――テレビを含め、家電市場全体が縮小傾向にあるわけだが、「チャンス」とは。

 確かに家電業界は厳しい。現状、主力のテレビは『原価で売っても売れない』し、販売が好調なスマートフォンもテレビをカバーできるほどではない。家電量販市場の規模も昨年の約6兆から2012年は1・5兆円程度、縮小するという試算も出ているようだ。家電だけを取り扱っている販売店は厳しいだろう。

 ただし、当社は通信販売の会社であり、当然、テレビなど『家電以外』の商品も販売できるわけだ。つまり、2011年の状況は『テレビ』を軸とした商品構成を含めた既存のビジネスから大きく転換するタイミングを与えてくれたと考えており、私としては非常にワクワクしている。やはり(テレビの)需要がある時には売らざるを得ない部分もあるし、大胆にはできていなかったが、もう2年くらい前から進めてきてはいた。テレビの落ち込みが予測以上に大きく追いつかなかったが、例えば、洗濯機や掃除機などは1年前から比較すると(売り上げは)200%くらいまで伸びている。(薄利な)テレビに変わって、これらの商品群を販売したことで、特にこの2~3カ月は利益率が上がってきているという利点も出てきている。

 こうした『テレビ』に変わる商品群をもっと販売し、それぞれが売り上げを伸ばせる体制を2012年から本腰を入れて作っていきたい。2012年は恐らく当社にとって過去にない『一番の変化の年』になるだろうと思っている。

年商2000億 すぐ到達できる
 
 ――とは言え、これまでジャパネットたかたの成長をけん引してきた主軸商品であり、単価も高いテレビをカバーでき得る商品群の開発・育成は容易ではなさそうだ。

 特に新しい商品を、ということではなく、すでに販売している既存の商品についてしっかりと(番組の)制作力を上げ、表現などを見直し強化していけば恐らく(年商)2000億円くらいはすぐに到達できると考えている。冷蔵庫も洗濯機も100億円はすぐに伸ばせるはずだ。また、シリーズ累計で販売台数100万個を突破した家庭用高圧洗浄機もまだまだ伸ばせるだろう。最近ではLEDライトなども動きがよい。

 家電をベースにしつつも、世の中の変化に対応してこれまであまり手をつけてこなかった『フィットネス』や『知育玩具』の強化などもやっていきたい。『フィットネス』に関しては発売してまだ数年だが、累計販売数が22万台を突破した座椅子型腹筋運動機器など売れ行きのよい商品も出てきている。

このほか、鞄などのファッション雑貨、腕時計、宝飾品も強化する。これらは2011年にも販売はしているが、まだまだ本格的にやっていない分野だ。こうしたジャンルも商品さえあれば、すぐに数十億円は販売できるはずだ。商品の調達や販売網はすでにあり、こうした商品を販売する方法、番組制作についても研究しているところだ。ここが2012年に花開くかどうかだ。家電をベースにしつつも、これまでの商品構成から大きく転換させる準備を今、やっているところだ。

太陽光発電や電気自動車も販売へ
 
 ――2011年の秋口には「太陽光発電パネル」の販売を行ったが、これらも「変化」の1つということか。
 
 こうした商材は当社が目指すもの、例えば『エコ』とか『省電力』などのメッセージを発信するための戦略商品という側面もある。これは(12月22日に販売した)『電気自動車』も同様だ。なお、太陽光発電パネルに関しては1回販売してみて難しいと感じた。製品の価格は海外メーカーを中心に半年単位くらいでどんどんと下がっていき、『テレビ』と同じ(薄利な商品)になりそうだ。状況を見ながら今後を考えていきたい。

吉本とコラボ番組の手ごたえは?
 
 ――「変化」という点で言えば、2011年も吉本興業のタレントを起用しバラエティの要素を強めた番組「ジャパネットたかたよしもと」を放映するなど新たな形の番組も放映した。

 我々はモノを売るだけではなく、感動を伝えたいとこれまでも言ってきた。特に今年は震災があり、こういう時期だからこそ、番組制作には投資をして当社の番組から『元気印』を発信したいと。そのため、2011年は平泉や松島などからの中継も積極的に行なってきた。

 吉本さんとのコラボ番組もその一環だ。2011年は吉本さんとのコラボ番組は9月と12月中にも行なったが、今後も年に2~3回はやっていきたいと思っている。手ごたえもあり、若い方など新しい層の人にも見ていて頂けていると思う。通販を楽しみながら見て感じて下さればと思っている。

TV通販4社で話し合い
 
 ――放送法改正でテレビ局に番組内容の種別を公表する義務が生じた結果、各局が通販番組総量の自主規制をし始めるなど、2011年は今後のテレビ通販市場に影響を与える「変化」もあった。
 
 特に(通販番組が多いということで)BS局が問題になっているのだと思うが、当社はBS(での番組放映)をやっていないため、影響はない。通販枠も前年と比べてほとんど変わっていない。その規制は別にして、テレビ通販市場の発展のためには各社の品質を高めていく必要があると感じている。
 
 実は2年ほど前から、(テレビ通販大手の)ジュピターショップチャンネル、QVCジャパン、オークローンマーケティングと当社で年に2回ほど(それぞれの企業の社長などと)お会いして話し合いを持っている。もちろん、各社と競争は競争だが、一方で共存・協力すべきだろうと思っている。

 テレビ通販業界を一緒になって力を合わせて正しいやり方で発展させていこうということだ。そのため、互いに会社を見学したり交流を深めてきた。顧客対応など互いの会社のよいところで共有すべきは共有していこうと。業界の発展のために通販という品質をもっと高めていかなければいけない。こうしたことは単独の企業だけではできないことだ。皆で協力しながら、何かできればと考えている。

 ――4社での「決め事」で何か形になっていることはあるのか。
 
 そこは...。おいおい分かってくる(笑)

社員力とプロ化が"キーワード"
 
 ――2012年はジャパネットたかたにとってこれまでにない変化の年になるとのことだが、業績の目標は。
 
 (2011年に落とした売り上げ200億円を)2012年で回収できるかと言えばできると思う。しかも利益率も大きく改善した状態で元に戻るだろうと思う。先ほども申し上げた通り、この1年で間違いなく(「テレビ」を超える新たな軸となる商品が)出てくるだろう。(2011年の)12月にはほとんどテレビを販売していない状態にも関わらず、(1回あたりの番組の)売り上げがプラスになるということが起こり始めており、(「テレビ」からの)脱却の方向が見え出している。

 繰り返すが、2012年は変化の年だ。1月に放映するテレビコマーシャルを見て頂ければ分かるかと思うが、それは結構、衝撃的な内容になっていると思う(笑)。そういう方向性を企業として発信していくと同時に社内的にもきちんと番組の制作力を上げ、商品の研究をしっかりと行なっていきたい。そのために大きな組織改革も行なうつもりだ。

――組織の改革とは。

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 組織体系を1月から改める。まだ社内でも発表しておらず、詳しくは言えないが、『お客様の方を向いて仕事をしよう』ということを会社の目標として掲げているが、もっとお客様に近づけないかと。そのためには何が足りないか。それには本当に我々が『プロ集団』になることだと思うわけだ。制作、業務、顧客対応とそれぞれの部署の社員がプロとしての自覚と責任を持って、ミッションを達成すると。
 
 そのために必要なのは『社員力』だと思う。実は2011年にもこの『社員力』はテーマとして掲げて(=写真は佐世保本社の様子)はいたが、やはり2012年もキーワードになる。一流のサービスを行なうためには、社員が一流にならなければならない。社員が一流になるためには、それぞれがプロ意識を持たねばならない。やはり、これまでやってきたことを見直してみるというのは企業も人も必要だ。それにより『できていない部分』を感じて、できるようにすることが大切だと思う。皆をプロ化するために組織を改める。私はそれしか企業が競争に勝っていく道はないと思う。

――「変える」ためには投資も必要となる。

 それはそうだ。こんな時だが、今年度は(社員を)100人くらい採用するつもりだ。そのためには広く採用活動をする必要があるため、東京にも新たな拠点が必要になってくるかもしれない。また、媒体(通販枠)ももっと増やしなさい、と言っている。

 『一流』にならずに媒体を増やしても、効率が悪くなるだけだが、本当にプロ化して一流になれれば、増やした媒体も生きてくるからだ。社員も大変だと思うが、当社は創業25周年となるが私も今が一番きついと感じている。老体に鞭打ってがんばるので一緒について来いという感じだ(笑)

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