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悠香・自主回収の行方(2)――"告知不十分"に反論、弁護団介入で対応にこじれ

2011年 9月 4日 21:33

悠香(本社・福岡県大野城市、中山慶一郎社長)の自主回収を受けて電話相談会を開いた4都府県(東京、大阪、神奈川、愛知)の弁護士会のうち、東京弁護団や大阪弁護団の担当弁護士は、告知が不十分であることや見舞金の根拠が不明確である点を指摘、悠香の消費者対応が不誠実であると糾弾する。だが、これに悠香は、「責任を持って顧客対応したいと考えているが、"告知が不十分"という点には何をもって言っているのかと言いたい」(商品部品質保証課・竹田典雄氏)と反論する。
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 弁護団の主張は、製造物責任法(PL法)と民法709条に定められる一般不法行為に対する賠償の観点に基づく。

 PL法に免責事由があることは前回説明したが、これは問題となった『茶のしずく石けん』旧製品が市場に流通し始めた時点で予見できたか否かにまでさかのぼり争うことになるという。

 この点に東京弁護団の中村忠史弁護士は、「悠香が知り得たかではなく、世界中の学会や文献に『加水分解コムギ末』の知見がみられたかが問題」としている。ただ、これは昨年、皮膚科専門医によって明らかにされた印象が強い。

 もう一点は、民法709条について。これは「パロマ湯沸し器の死亡事故で指摘されたように、被害発生を知った時点からの被害防止に向けた行動が適切だったか」(同)というもの。これについては訴訟となった場合、告知が不十分な点などを主張し争っていくという。

 一方、悠香はこれまで別表に示すように回収の周知に努めてきた。「顧客名簿を持つ通販だからこそリストを活かした回収手段を取っている。注意喚起の文書は厚生労働省に指導を仰ぎ、共同購入者にも伝えてもらうよう赤字で強調して書いた」(竹田氏)とし、一部に"テレビCMなどより広く告知を行うべき"という指摘があることには、「(一例として)8月1日に視聴率12%のNHK『あさイチ』で約10分間報道された際も窓口への反応はそれほどでもなかった。CMでどの程度効果が得られるかは疑問」(同)とする。

 ただ、CMの大々的な展開が成長をけん引してきただけに、"テレビの力"を過小評価するのは若干の疑問も残る。

 これについて悠香では、「DMは既存顧客とのコミュニケーションに使ってきたものであり、回収ツールとして使ったことで反響も大きかった。テレビCMの短い放送時間では、全く関心のなかった方にも間違った印象を与えかねないだけではなく、興味本位の電話が殺到すれば、本来対処すべき方の対応がおろそかになる。"そうであっても短時間内の最適な内容を検討すべき"との指摘もあるだろうと思う。ただ、保身ではなくDMという手段があり、それによって効率的に回収が進んできたため」(同)と説明する。

 弁護団は見舞金による対応も懐疑的に捉える。

 悠香が弁護団に送ったファックスでは、見舞金について「回収発表以来、アレルギー症状を訴えられるお客様に対し、些少ながらお見舞金をお支払いするなど、その対応に努めて参りました。しかしながら、発症されたお客様におかれましては、今後の生活にも支障を来されることが予想され、(略)そこで当面の検査費用、薬品代や通院交通費などを負担させていただき...」と触れられているが、東京弁護団では、「少額の見舞金で解決しようとしている。金額の幅もまちまち。今後も続くのかも不明」(中村弁護士)と指摘。サイト上で「悠香との交渉は慎重に」と題し、「いったん示談書や和解書を作成して示談金やお見舞金等を受け取ってしまうと、(略)賠償請求することが不可能になってしまうおそれがあります」と注意を呼びかけている。

 ただ、これは悠香の顧客対応をこじらせるミスリードとなった可能性もある。弁護団は見舞金の真意を悠香に問い質していないためだ。

 弁護団とすれば、"示談ではないのか"と不安を持つ相談者がいることを受け、けん制する意味があったのかもしれない。ただ、悠香は「実費負担という考え方は一律。今後も症状の経過を見て対応していく」として、示談書や和解書への合意は「求めていない」と強く否定している。

 8月25日には4都府県に続き福岡弁護士会が電話相談会を実施。116件の相談が寄せられたことを受け、福岡弁護団(団長=平田広志弁護士)を結成した。

 相談会を前に悠香の担当者と面会した平田弁護士は、「悠香は"社会的責任は感じているが法的責任があるとは思っていない"としている。『加水分解コムギ末』は広く一般に使用されているものであり、重篤な被害を起こす原因か判断できなかったためだ。ただ、そう簡単なことなのかと。製造段階や販売する中でおかしな点があれば検査できたのではないか。この点は今後、医師や悠香の話を聞いて判断していく」としている。
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 各県で高まる訴訟の機運。各弁護団は主張の一本化で、連携を深めつつある。両者にみられる見解の相違は溝を埋めることなく、法廷で決着をつけることになるのか。今後の動向を注視していく必要がある。(おわり)


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