悠香が「茶のしずく石けん」の自主回収を開始した。製品の使用者がアレルギー症状を起こしたと考えられる事例が医療機関より厚生労働省に報告されたためだ。回収の対象となった「茶のしずく石けん」は昨年12月7日の製品変更前に販売していた全て。すでに消費された製品が大半を占めるとはいえ、基幹製品の回収となれば業績だけでなく、ブランドイメージの毀損といった影響も計り知れない。一方、回収に至る一連の顛末をみると、いささか"解せない"点もある。回収の原因となった「加水分解コムギ末」(以下コムギ末)が、化粧品に広く使用される原料であるにもかかわらず、悠香の製品しか副作用報告が上がってきていないためだ。
悠香は5月20日、2005年6月から昨年12月7日に販売した「茶のしずく石けん」計4652万8055個(30、60、110グラムタイプの総計)の回収を発表した。創業来、「コムギ末」を含まない製品に変更するまで販売した全総数だ。
回収の理由は、製品に配合していた「コムギ末」という原料がアレルギー発症に関わりのある疑いが持たれたため。製品使用者が小麦食品を摂取して運動した際、鼻水やじんましん、息苦しさといったアレルギーを誘発した事例が報告された。
小麦食品を原因とするアレルギーは1万人に1人の割合で発症し、死亡例はなく、ショック症状から病院に救急搬送された例はあるという。
悠香では5月19日に厚労省に副作用事例が67例報告されていたことを受け、20日に回収を発表。個々の顧客に電話による回収の呼びかけを開始したほか、24日には全国紙3紙(朝日、読売、毎日)に社告を掲載した。
問い合わせや回収の件数は「集計できていない」(同社)とするが、業績は「返品に対する商品交換の影響などで大きく落ちる」と予想。現在、展開中のCMは「まずは回収に全力を注ぎたいので(中止を含め)検討しなければならない」(同)としている。
ただ、回収の経緯をみると腑に落ちない点がある。一つは、厚労省に寄せられた報告例が、悠香の製品に対する67例以外、皆無という点だ。回収の原因となった「コムギ末」が湿潤剤(しっとり感など化粧品の使用感の調整に使われるもの)として広く化粧品に配合されている原料であるにもかかわらず、だ。
アレルギーの原因が「コムギ末」ならば、他社製品も安全性が危惧されることになる。だが厚労省では事例が悠香のみ寄せられる不可思議さに「特異的に起きているものと考えるほかない」(医薬食品局安全対策課)とするのみ。一方では「原因はコムギ末だと思いますけど」と、同原料を含む全ての製品に関わりがあるかような回答を繰り返し判然としない。
確かに「報告があった事実を重視した」(同)厚労省の対応は間違ってはいない。ただ、配合量や「コムギ末」の品質上の問題なのか、他社製品に共通する問題なのか原因究明の必要性は残るはず。だが、「副作用事例があった製品は悠香のものだけで、今後、『コムギ末』の扱いをどうするかは分からない。他社製品で同じ報告が出れば考える必要もあるが、他に報告がない」(同)と、消極的。事態の重さに比べあまりに安易な対応ではないか。
そもそも、報告例も「コムギ末配合の石けんを使用」→「小麦食品を摂取」→「運動」というプロセスを経て発症している。小麦食品のアレルギーは知られており、普通ならそちらに原因があるとみるだろう。だが、今回は小麦食品か製品か、原因が特定できていないにも関わらず「全報告例で悠香の製品が使用されている」(同)から製品が原因と断定し、「新しい知見」(同)の一言で済ませてしまっているのだ。
回収に至るプロセスにも不信感は募る。
回収は、厚労省が医薬品医療機器総合機構(PMDA)と連携して行う「医薬品・医療機器等副作用報告制度」に則ったもの。医薬部外品で回収に至るのは初めての事例だが、通常、報告は医療機関から直接、もしくは医療機関の指摘を受けたメーカーから厚労省に報告する形で行われる。だが、今回は全て前者であっただけでなく、本来、報告の過程で企業へヒアリングなどを行うPMDAも「今回のケースは関わっていない」という。
厚労省では昨年10月の時点で「悠香を含め副作用の事例を確認した」(他社企業名、また他社事例の有無は「公表していない」と回答)とする。ただ、この時点で悠香を指導せず、同月、「コムギ末」を含む医薬部外品や化粧品の注意喚起を都道府県の衛生主幹部に依頼するに留めている。
まさか自らの製品が端緒と思わない悠香は、通知を受けHPで注意喚起したほか、注意文書を商品に同梱。この通知が12月の製品変更という対応にもつながっている。
ただ、5月の発表を単純に受け取れば、悠香があたかも12月時点でアレルギーの可能性を知りながら製品を変更し、公表を避けていたと受け取られかねない。
厚労省は「狙い打ちしたわけではない」とするが、なんとも腑に落ちない今回の顛末。事実であれば回収は当然だが、何を持って"事実"と特定し得たのか、厚労省は納得できる理由を明らかにする責務がある。
悠香が「茶のしずく石けん」の自主回収を開始した。製品の使用者がアレルギー症状を起こしたと考えられる事例が医療機関より厚生労働省に報告されたためだ。回収の対象となった「茶のしずく石けん」は昨年12月7日の製品変更前に販売していた全て。すでに消費された製品が大半を占めるとはいえ、基幹製品の回収となれば業績だけでなく、ブランドイメージの毀損といった影響も計り知れない。一方、回収に至る一連の顛末をみると、いささか"解せない"点もある。回収の原因となった「加水分解コムギ末」(以下コムギ末)が、化粧品に広く使用される原料であるにもかかわらず、悠香の製品しか副作用報告が上がってきていないためだ。
悠香は5月20日、2005年6月から昨年12月7日に販売した「茶のしずく石けん」計4652万8055個(30、60、110グラムタイプの総計)の回収を発表した。創業来、「コムギ末」を含まない製品に変更するまで販売した全総数だ。
回収の理由は、製品に配合していた「コムギ末」という原料がアレルギー発症に関わりのある疑いが持たれたため。製品使用者が小麦食品を摂取して運動した際、鼻水やじんましん、息苦しさといったアレルギーを誘発した事例が報告された。
小麦食品を原因とするアレルギーは1万人に1人の割合で発症し、死亡例はなく、ショック症状から病院に救急搬送された例はあるという。
悠香では5月19日に厚労省に副作用事例が67例報告されていたことを受け、20日に回収を発表。個々の顧客に電話による回収の呼びかけを開始したほか、24日には全国紙3紙(朝日、読売、毎日)に社告を掲載した。
問い合わせや回収の件数は「集計できていない」(同社)とするが、業績は「返品に対する商品交換の影響などで大きく落ちる」と予想。現在、展開中のCMは「まずは回収に全力を注ぎたいので(中止を含め)検討しなければならない」(同)としている。
ただ、回収の経緯をみると腑に落ちない点がある。一つは、厚労省に寄せられた報告例が、悠香の製品に対する67例以外、皆無という点だ。回収の原因となった「コムギ末」が湿潤剤(しっとり感など化粧品の使用感の調整に使われるもの)として広く化粧品に配合されている原料であるにもかかわらず、だ。
アレルギーの原因が「コムギ末」ならば、他社製品も安全性が危惧されることになる。だが厚労省では事例が悠香のみ寄せられる不可思議さに「特異的に起きているものと考えるほかない」(医薬食品局安全対策課)とするのみ。一方では「原因はコムギ末だと思いますけど」と、同原料を含む全ての製品に関わりがあるかような回答を繰り返し判然としない。
確かに「報告があった事実を重視した」(同)厚労省の対応は間違ってはいない。ただ、配合量や「コムギ末」の品質上の問題なのか、他社製品に共通する問題なのか原因究明の必要性は残るはず。だが、「副作用事例があった製品は悠香のものだけで、今後、『コムギ末』の扱いをどうするかは分からない。他社製品で同じ報告が出れば考える必要もあるが、他に報告がない」(同)と、消極的。事態の重さに比べあまりに安易な対応ではないか。
そもそも、報告例も「コムギ末配合の石けんを使用」→「小麦食品を摂取」→「運動」というプロセスを経て発症している。小麦食品のアレルギーは知られており、普通ならそちらに原因があるとみるだろう。だが、今回は小麦食品か製品か、原因が特定できていないにも関わらず「全報告例で悠香の製品が使用されている」(同)から製品が原因と断定し、「新しい知見」(同)の一言で済ませてしまっているのだ。
回収に至るプロセスにも不信感は募る。
回収は、厚労省が医薬品医療機器総合機構(PMDA)と連携して行う「医薬品・医療機器等副作用報告制度」に則ったもの。医薬部外品で回収に至るのは初めての事例だが、通常、報告は医療機関から直接、もしくは医療機関の指摘を受けたメーカーから厚労省に報告する形で行われる。だが、今回は全て前者であっただけでなく、本来、報告の過程で企業へヒアリングなどを行うPMDAも「今回のケースは関わっていない」という。
厚労省では昨年10月の時点で「悠香を含め副作用の事例を確認した」(他社企業名、また他社事例の有無は「公表していない」と回答)とする。ただ、この時点で悠香を指導せず、同月、「コムギ末」を含む医薬部外品や化粧品の注意喚起を都道府県の衛生主幹部に依頼するに留めている。
まさか自らの製品が端緒と思わない悠香は、通知を受けHPで注意喚起したほか、注意文書を商品に同梱。この通知が12月の製品変更という対応にもつながっている。
ただ、5月の発表を単純に受け取れば、悠香があたかも12月時点でアレルギーの可能性を知りながら製品を変更し、公表を避けていたと受け取られかねない。
厚労省は「狙い打ちしたわけではない」とするが、なんとも腑に落ちない今回の顛末。事実であれば回収は当然だが、何を持って"事実"と特定し得たのか、厚労省は納得できる理由を明らかにする責務がある。