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「ユニクロ」にはこうした試みの実施で多額のコストが発生することになるはずだが、それだけの価値もありそうだ。通販ビジネスにとって配送サービスは非常に重要なファクターであり、特に配送スピードについては消費行動を決定づける一要素になり得る。顧客の利便性アップはもちろんだが、アマゾンが展開してきた即時配送などにより、消費者には「通販商品はすぐ来るのが当たり前」という考え方が定着しつつあり、いたずらに配送時間がかかれば「不満」に直結しかねず、ビジネス上のリスクにもなり得るかもしれないという見方もあるためだ。
実際に大手ネット販売実施企業はこぞって物流面の強化に踏み切っており、すでに翌日配送はもちろん、当日配送も珍しくはなくなってきている。そしてさらにその先の試みとして家電量販店のヨドバシカメラの通販サイトで実施する6時間以内配送や先に挙げたアマゾンでは従来から実施してきた当日配送とは別に、都心など一部地域限定ながら1時間以内で配送するスピード宅配サービスを昨秋から実施している。
競合との差別化や顧客への利便性向上という点で今後も各社間で配送サービス競争が激化していきそうだが、一方で冷静に配送サービスの在り方について見直してみる必要もあるのではないか。消費者庁が6月9日に公表した「平成27年度の消費者意識基本調査」によると即時配送の利用時の意識について、回答者の5・4%が「追加料金がかかっても利用したい」、32・8%が「品目や状況で使い分けたい」、60・8%が「追加料金がかかるなら受け取らなくてもよい」とした。すでに4割弱がお金を支払ってでも即時配送を望んでいるとみるか、6割は即時配送は必要なしと見ているとするか。この調査結果をどのように見るのかによって異なってくるが、端的に言えば消費者の多くは通販商品の配達の速さに事業者が思うほど魅力を感じていなのではないか。
無論、無料であれば早く来ることに越したことはないのだろうが、それよりも指定した時間に確実に届けたり、注文した商品をまとめて受け取れるよう配送したり、配達後、処理に困る過剰な梱包を減らすなど基本を突き詰めることもまた、利便性向上につながるのではないか。過剰な配送スピードの追及はさして顧客から望まれていないばかりか、コスト負担増で事業者自身の首を絞めることにはなりかねない。皆が全方位的に強化できるわけではあるまい。商材や顧客層、事業規模、資金力など各社ごとにすべきこと、最適な形は異なるはず。配送サービスをどのような方向性で強化していくか。冷静な経営判断が求められそうだ。