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消費者団体は存在価値を示せ

2015年 9月 7日 14:39

機能性表示食品制度の開始により、健康食品の機能性表示に関する考え方は180度変わった。これまであいまいな「イメージ訴求」だったが、新制度では届け出た「機能性表示(届出表示)」以上のことを表示してはならない。従来の健食より安全性や機能性の根拠をきちんと持つことが必要になり、その内容も公開されるなど開かれた制度になったはずだ。だが、それでも消費者団体は健食が嫌いらしい。明確な根拠も持たず、2兆円もの市場を無視して制度廃止にすら言及する団体もある。消費者団体は、まず自らの存在価値を明確にすべきだ。

 消費者庁は今年8月、機能性表示食品として受理したリコムの「蹴脂粒」を巡り浮上していた安全性問題に対し、「問題は認められない」との見解を示した。制度上、求められている安全性評価をクリアしているためだ。体内における働きを巡るメカニズムの問題が解決したわけではなく、今後改めてこの問題が浮上しないとは限らない。とはいえ、一旦は問題が決着したが、これに反発するのが一部の消費者団体だ。「制度の欠陥を如実に示すもの」とし、制度の見直し、さらには廃止すら要求しかねない団体もある。

 制度は、企業が自己責任で届出を行い、事後的なチェックのもとで運用する。このため、行政や消費者団体、学術界が届出情報を精査し、疑義があれば声を上げること自体、歓迎すべきだ。だが、2兆円もの市場が存在する中で、その大半が企業の広告宣伝による効果が招いたまやかしだと決めつけるのは乱暴だ。

 消費者団体は、かつて「イメージ訴求」の健食のみで市場が形成されていた時代にはこれを強く批判した。新制度は、科学的根拠に基づき、表示も届け出た範囲に限られるなど、従来の健食より厳しく、表示も明確だ。にもかかわらず、業界サイドと制度改善を前向きに検討する姿勢はみられない。そもそも、消費者団体が本来担うべき「消費者教育」の面では目立った活動は見えてこない。

 消費者委員会の調査によると、現在、日本国内には2400超もの消費者団体が存在するという。このうち、広域に活動するのが166、県域・市町村単位のものが2200超。だが、その多くは「意識の高い少数の消費者」で組織される傾向があるという。一般消費者は所属せずとも活動による消費者利益を享受できるため、会員獲得や、活動の継続が課題になっている。

 一方、海外の場合、消費者団体自らが大衆への情報発信を積極的に行っており、情報誌の発行などで消費者の商品選択を支援するなどしている。定期購読者が850万人に上る媒体もあり、消費者が欲する情報、収益基盤、一般消費者を代表する正統性を自ら獲得している。国内でも一時期、同様の活動を目指す団体もあったが、結局は頓挫した。このため、「情報」「資金」「正統性」を行政に依存しているのが実態だ。

 消費者志向の経営が求められる中、企業と消費者団体の関係は必ずしも対立構造ではない。消費者団体は、閉ざされた世界で主義主張を語るのではなく、大衆や企業を理解するところから始めるべきだ。

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