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各社に聞く・通販市場のこれから デジタル化加速で「拡大」へ、物価高続き消費「横ばい」

2025年 1月 9日 12:00

 通販新聞社は昨年12月に、アンケート調査を行った。2025年の通販市場の予想と、現状の消費動向について聞いた。通販市場の予測について、「拡大する」は50%で、前年同期の調査から2㌽アップした。通販の利便性が認知され、利用が定着するとみるためだ。一方、消費動向は「下向き」と「横ばい」が合わせて87%となった。物価高の影響が続き、今後の消費動向は冷え込むとの見方が強い。

 
25年の通販市場

「拡大」50%に、成長余地に期待

 アンケート調査は昨年12月に、通販・通教実施企業約600社を対象に実施した。25年の通販市場の予測について当てはまるものを選んでもらいその理由を聞いた。

 25年の通販市場について「拡大する」との回答は50%だった。前年同期の調査から2㌽増え、約半数で市場が拡大するとみている。

 主なコメントは「EC通販の利用が定着化しているため」(アスクル)、「EC通販の市場は引き続き拡大すると予想」(ベルーナ)、「物価高による家計負担増の影響で、通販を利用して少しでも安価な商品を探すといった消費行動になるのでは」(アプロス)、「やや拡大していくと考える。通販に代わるようなチャネルができない限り拡大していくと予測する」(ジャパンリミテッド)、「歯科関連商品の通販市場は年々徐々に拡大しており、今後も拡大余地があるため」(歯愛メディカル)など通販の定着や市場の成長可能性に期待する回答があった。

 また、「物価高とは言え、各種調査によると消費者の購買意欲は拡大しているため。通販市場においても、拡大率が鈍化することはあっても伸長は続くと思われる」(田中貴金属リテイリング)、「個人消費が緩やかな増加傾向で推移しているため。また店頭回帰によりEC通販の伸び率は鈍化しているものの、コロナ禍で獲得したユーザーが定着しており、特に大手ECモールはコロナ禍を契機に生鮮品、日用品、消耗品等を購入する消費者が増え利便性も認知されており、緩やかな成長が続くと考えられる」(北の達人コーポレーション)など、消費意欲の高まりが市場拡大の追い風になるとの予想もあった。

 「企業によって伸ばす企業と低迷する企業がより顕著になると予想。OMO施策やDX関連、インフラ投資の差によって顕著になると予想」(アダストリア)、「ECモールを中心に引き続き通販市場は伸長。広告はネット中心、OMO・DXなど各社デジタルの取り組みを強化していくトレンドはより一層強まることが想定され、通販市場はより一層活性化され伸長するとみている」(ファンケル)など、デジタル化の加速が市場の活性化につながると指摘する回答もあった。

 「機能性のルール変更による影響が出る中でも、紅麹報道の影響の緩和への期待および美容健康への意識は引き続き堅調に伸びるものと推察」(ディーエイチシー)など、美容健康ニーズの高まりを期待する声もあった。
 
環境変化を受け、「横ばい」45%に

 25年の通販市場について「横ばい」と回答したのは45%だった。前年同期の調査から2㌽増えた。

 主なコメントは「コロナによる巣ごもり需要が終焉し、物価高騰が個人消費を抑制させている。通販事業各社はそれを見越してコスパや希少性、アイデア性をうたった独自の商品の開発やタイムセール、積極的な広告宣伝などでしのぎを削っている。業界全体の顧客に対するアプローチの質があがっているので、通販の市場自体が縮小するとは考えていない」(全日空商事)、「通販利用の増加傾向は継続すると予想されるが、商品のカテゴリーによっては成長が鈍化する」(白鳩)、「競争の激化により優劣がつきはじめると思われ楽観視はできないが市場の急激な縮小は起きないと考えている」(ニッピコラーゲン化粧品)、「物流の2024年問題、機能性表示やサプリメントへの信頼性、物価の上昇などと課題がある。また、消費者の消費動向にあまり変化が見受けられないと考えるため」(八幡物産)など、競争激化や市場環境の変化を指摘する声もみられた。

 「縮小する」との予想は0%だった。その他には「予測できない」とする声もあった。
 
現状の消費動向

「上向き」が13%、「下がる」は34%

 アンケート調査では現状の消費動向について当てはまるものを選んでもらい、その理由を聞いた。

 「上向いている」と回答したのは13%だった。前年同期の調査から8㌽減少した。

 主なコメントを見ていく。「アンドエスティが好調。新規会員が増加。会員売上比率が約7割と安定的に推移。新たにグループに加わったブランドでも伸長」(アダストリア)、「市場全体でみれば物価高の影響による節約志向の強まりはあるが、当社顧客層の購買意欲に翳りは見られない。将来の不安からくる貯蓄や投資への関心が、貴金属製品の購入につながる傾向もあり、その点も含め消費動向は上昇が継続するとみている」(田中貴金属リテイリング)など、足元の状況を踏まえたコメントがみられた。

 「下がっている」と回答したのは34%となり、前年同期の調査から9㌽増加した。

 主なコメントを見ていく。「なかなか給料も挙がらない中で、今後も物価高が続くと見込まれるため。家計を守ろうとする心理が強く働くのでは」(アプロス)、「物価上昇により消費マインドが低迷」(ベルーナ)、「必要なものは購入されていると思われるが、節約志向が高まっていると考えられるため」(八幡物産)など、物価高による節約志向の高まりが影響するとみる。
 
「横ばい」は53%、節約志向は続く

 「横ばい」と回答したのは53%。前年同期の調査に続いて半数を超えた。

 主なコメントは「外国人観光客が増加傾向にあるが、物価高による消費者の節約意識は高い」(アスクル)、「所得増加の一方、物価上昇影響で堅調」(ユナイテッドアローズ)、「世の中全般的に値上げの波が続いており、消費動向が上向いているとは感じにくいものの、大きく落ち込む動向も特段みられないため」(歯愛メディカル)などがあった。

 また、「賃上げ、定額減税、子育て世帯への支援拡充などはありつつも、これまでの物価値上がり、電気料金値上がりなどで実質賃金増とは言い難いこと、さらに今後の値上がりへの懸念などから大枠での国内消費動向は横ばいとみている。全体では横ばいとみているが、その内訳である商品・サービスの内容やお客様層などによって上向き、横ばい、下向きは異なると考える」(ファンケル)、「所得拡大の政策などはみられるが、消費者が物価の上昇には追い付いていないため」(白鳩)、「雇用や所得環境の改善により消費活動の活発化が期待されている一方、特に個人消費については物価上昇や円安の影響が大きいほか節約志向も強く、減少まではいかないものの急激な増加は難しいと考えるため」(北の達人コーポレーション)との声もあった。

 このほかに、「リアルの市場が戻ってきている分、通販市場は苦しくなると感じているが、一方で通販は消費者の購買行動の一つとして根付いているため」(ニッピコラーゲン化粧品)、「購入する回数は減っているが、客単価は上がっている傾向がある」(バロックジャパンリミテッド)、「旅行やレジャーへの消費が高まっており、それらに関連した便利グッズの需要の高まりがみられる。買い物の目的や動機がBeforeコロナ→Withコロナ→Afterコロナで変化しているが消費ポテンシャル自体はあがっているとも下がっているとも言えず、横ばいと考える」(全日空商事)とするコメントがあった。
 
 
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