D2Cのファッションブランド「ソージュ」を展開するモデラートは、店頭販売ではなく試着促進を重視したコミュニケーションで顧客から支持されている。予約なしで商品が試着できる〝売らない試着室〟を東京・代官山に設置するなど、独自のオフライン施策で急成長を遂げる同社のブランドモデルとはどのようなものか。市原明日香代表取締役に、「ソージュ」のブランド戦略や今後の展望について聞いた。
トレンドレス商品を提案
上質素材をリーズナブルに
――「ソージュ」立ち上げの経緯は。
「『お客様の装いに関する課題解決』ということがベースにあるので、必ずしも洋服をたくさん売ることが正解ではないという考えのもとビジネスを始めた。当初アプリでサービスを提供していたときは月額1000~3000円ほどのサブスクで、スタイリストが顧客の手持ちの洋服を見ながら、極力手持ちを活用して、新しい装いを生み出すことにブランド価値を見出していた。そうした原点から出発しているので、基本的にはワードローブのベースになるアイテムを提案している。食事に例えると、ごはんやパンなどの主食になるアイテムだ」
――ブランドの特徴は。
「いかに顧客が最小限の洋服で着こなしの幅を広げられるかということを考えている。最初は3型のブラックドレスから販売し、今はベーシックアイテムを百数十型まで広げている。長く利用してくれている顧客のために差し色なども展開しているが、ソージュを知って間もない人には『主食』の部分、ベーシックなアイテムを味わってほしい」
――そのために行っている施策はあるか。
「『マイファーストソージュ』は、初回の顧客限定で、購入時・返品時に発生する送料を全額負担するというサービス。新規顧客にもソージュというブランドを理解してもらい、サイズや色などが合わなかったら安心して返品してもらえる仕組みを作った」
「常設のショールームは代官山の1店舗しかないので、全国の消費者に『ソージュ』を試してもらえるよう、初回購入時以外にも、衣替えシーズンに合わせて試着キャンペーンを実施している」
――ブランドの打ち出し方として大事にしていることは。
「『きちんとした服のブランド』というイメージを持たれる方が多いが、我々が目指しているのは『固定観念にとらわれず、自分自身にとって気持ちのいいスタイルで、会う人にとっても印象良く感じてもらえる』ブランド。『女性だからスカートでなければならない』などの固定観念から離れて、制約なく考えている。たとえば、『ワイドパンツは太って見えるのではないか』と考えている人にとって、スカート感覚で履けるワイドパンツを提供するとか。意外性を見つけてもらって、その人の着こなしが広がればいいと考えている」
――現状の顧客層は。
「特定の年代の人に向けているということはないが、結果として30代後半から50代の方が多い。この年代は子どもが生まれたり、管理職に昇進したりと、ライフスタイルや立場の変化を実感する世代。求められる印象が変わってきて、『質のいい素材を身にまといたい』と考える方が多く、ソージュに魅力を感じてもらいやすい」
――質の高い商品を提供する中で、どのように価格設定を維持しているか。
「生産数を増やせば増やすほど、価格もコントロールしやすくなる。意識しているのは、『縦と横にたくさん、継続的に作る』ということだ。縦は、ある一地点を切り取った時に、同じ生地で展開している型数が多いということ。横は時間軸だ。『ソージュ』のアイテムは、基本的に3シーズン、オールシーズン着られて、トレンドに左右されないので、継続的に作っていける。メーカーに対しても長期的に発注することで、単発で生産するよりも、好条件で作れているのではないか」
――高成長を続けてきた理由はどこにあるのか。
「商品は特別高価格というわけではないが、ハイブランドのデザイナーも指名で使っているような良い生地を使用していたりする。商品を手に取った時に『思ったよりいいかも』と思ってくれる顧客が多いのではないか。買ってくれた人の一定数がきちんとリピートしてくれて、顧客がしっかりと積み上がっていく、というのが成長につながっている」
――プロモーションも効率的に行っている。
「プロモーションは、年代やエリアの絞り込みは特にしていない。ターゲティングしすぎると、デジタル広告のパフォーマンスが落ちてしまう。『ソージュ』は定番商品を持っているので、同じようなベネフィット、同じようなクリエイティブが流れ続けることで、自然とターゲティングされていく。商品の型数がそこまで多くないので、機会学習の効果が集約しやすかったというのはある」
――プロモーションで使った言葉で、特に印象に残っているものはあるか。
「『もう一度半袖を着たくなるブラウス』というもの。二の腕が気になって、夏でも長めのブラウスを着てしまうという方に向けたコピーだ。『ソージュ』ならば、半袖でも二の腕を気にせずに着られるブラウスがあるよ、ということを表現した。単に『二の腕カバー』と言ってしまってはつまらないので、『もう一度着たくなるってどういうことだろう?』というちょっとした違和感と、『たしかに半袖は着づらくなったよね』という共感を組み合わせている」
――コピーは市原さん自身が考えた。
「ブランドを始めたとき、私は41歳で、今のソージュの顧客層と近かった。自分の悩みは顧客の悩みにもつながるだろうと考えた。ブランドのポリシーとして大事にしているのが、『コンプレックスを助長しない』ということ。あくまでも顧客の装いや自己表現の可能性を広げたいと考えている」
――MDの特徴は。
「シーズンレスのアイテムが多いので、通年露出している商品が一定数ある。春夏と秋冬シーズンの年に2回新作の発表を行っているが、多くてもシーズンの新作は30型、全体で150型くらいだ。季節ごとに、その時のムードに合った着こなし方を提案したい。小物の合わせ方などで、毎回新鮮味があるようにしている」 (つづく)
上質素材をリーズナブルに
――「ソージュ」立ち上げの経緯は。
「『お客様の装いに関する課題解決』ということがベースにあるので、必ずしも洋服をたくさん売ることが正解ではないという考えのもとビジネスを始めた。当初アプリでサービスを提供していたときは月額1000~3000円ほどのサブスクで、スタイリストが顧客の手持ちの洋服を見ながら、極力手持ちを活用して、新しい装いを生み出すことにブランド価値を見出していた。そうした原点から出発しているので、基本的にはワードローブのベースになるアイテムを提案している。食事に例えると、ごはんやパンなどの主食になるアイテムだ」
――ブランドの特徴は。
「いかに顧客が最小限の洋服で着こなしの幅を広げられるかということを考えている。最初は3型のブラックドレスから販売し、今はベーシックアイテムを百数十型まで広げている。長く利用してくれている顧客のために差し色なども展開しているが、ソージュを知って間もない人には『主食』の部分、ベーシックなアイテムを味わってほしい」
――そのために行っている施策はあるか。
「『マイファーストソージュ』は、初回の顧客限定で、購入時・返品時に発生する送料を全額負担するというサービス。新規顧客にもソージュというブランドを理解してもらい、サイズや色などが合わなかったら安心して返品してもらえる仕組みを作った」
「常設のショールームは代官山の1店舗しかないので、全国の消費者に『ソージュ』を試してもらえるよう、初回購入時以外にも、衣替えシーズンに合わせて試着キャンペーンを実施している」
――ブランドの打ち出し方として大事にしていることは。
「『きちんとした服のブランド』というイメージを持たれる方が多いが、我々が目指しているのは『固定観念にとらわれず、自分自身にとって気持ちのいいスタイルで、会う人にとっても印象良く感じてもらえる』ブランド。『女性だからスカートでなければならない』などの固定観念から離れて、制約なく考えている。たとえば、『ワイドパンツは太って見えるのではないか』と考えている人にとって、スカート感覚で履けるワイドパンツを提供するとか。意外性を見つけてもらって、その人の着こなしが広がればいいと考えている」
――現状の顧客層は。
「特定の年代の人に向けているということはないが、結果として30代後半から50代の方が多い。この年代は子どもが生まれたり、管理職に昇進したりと、ライフスタイルや立場の変化を実感する世代。求められる印象が変わってきて、『質のいい素材を身にまといたい』と考える方が多く、ソージュに魅力を感じてもらいやすい」
――質の高い商品を提供する中で、どのように価格設定を維持しているか。
「生産数を増やせば増やすほど、価格もコントロールしやすくなる。意識しているのは、『縦と横にたくさん、継続的に作る』ということだ。縦は、ある一地点を切り取った時に、同じ生地で展開している型数が多いということ。横は時間軸だ。『ソージュ』のアイテムは、基本的に3シーズン、オールシーズン着られて、トレンドに左右されないので、継続的に作っていける。メーカーに対しても長期的に発注することで、単発で生産するよりも、好条件で作れているのではないか」
――高成長を続けてきた理由はどこにあるのか。
「商品は特別高価格というわけではないが、ハイブランドのデザイナーも指名で使っているような良い生地を使用していたりする。商品を手に取った時に『思ったよりいいかも』と思ってくれる顧客が多いのではないか。買ってくれた人の一定数がきちんとリピートしてくれて、顧客がしっかりと積み上がっていく、というのが成長につながっている」
――プロモーションも効率的に行っている。
「プロモーションは、年代やエリアの絞り込みは特にしていない。ターゲティングしすぎると、デジタル広告のパフォーマンスが落ちてしまう。『ソージュ』は定番商品を持っているので、同じようなベネフィット、同じようなクリエイティブが流れ続けることで、自然とターゲティングされていく。商品の型数がそこまで多くないので、機会学習の効果が集約しやすかったというのはある」
――プロモーションで使った言葉で、特に印象に残っているものはあるか。
「『もう一度半袖を着たくなるブラウス』というもの。二の腕が気になって、夏でも長めのブラウスを着てしまうという方に向けたコピーだ。『ソージュ』ならば、半袖でも二の腕を気にせずに着られるブラウスがあるよ、ということを表現した。単に『二の腕カバー』と言ってしまってはつまらないので、『もう一度着たくなるってどういうことだろう?』というちょっとした違和感と、『たしかに半袖は着づらくなったよね』という共感を組み合わせている」
――コピーは市原さん自身が考えた。
「ブランドを始めたとき、私は41歳で、今のソージュの顧客層と近かった。自分の悩みは顧客の悩みにもつながるだろうと考えた。ブランドのポリシーとして大事にしているのが、『コンプレックスを助長しない』ということ。あくまでも顧客の装いや自己表現の可能性を広げたいと考えている」
――MDの特徴は。
「シーズンレスのアイテムが多いので、通年露出している商品が一定数ある。春夏と秋冬シーズンの年に2回新作の発表を行っているが、多くてもシーズンの新作は30型、全体で150型くらいだ。季節ごとに、その時のムードに合った着こなし方を提案したい。小物の合わせ方などで、毎回新鮮味があるようにしている」 (つづく)