TSUHAN SHIMBUN ONLINE

インターネット・ビジネス・フロンティア株式会社
記事カテゴリ一覧

ヤマト運輸の商品受け取り時のコンビニ指定サービス、滑り出し順調

2012年10月18日 17:34

7men.jpg ヤマト運輸が9月24日から展開を開始した通販事業者向けの新サービス「宅急便受取場所選択サービス」。通販利用顧客が注文時に商品を受け取るコンビニエンスストア(CVS)を指定できるもので、商品受け取り時に自宅にいなければならないという顧客の不満を解消したのが特徴だ。すでに化粧品通販大手のオルビス(同・東京都品川区、町田恒雄社長)が同サービスを導入。対応CVSは、10チェーン・約4500店と、当初の予定よりも少ない形でのスタートだが、利用状況は順調のようだ。

 ヤマト運輸では個人会員組織「クロネコメンバーズ」(会員数約817万人)向けに、CVSで荷物を受け取れる「宅急便店頭受取りサービス」(店頭受取サービス)を提供している。同サービスは、荷物配達時に顧客が不在だった場合に、受け取り場所をCVSに変更できるものだが、今回の「宅急便受取場所選択サービス」(受取場所選択サービス)は、より通販に特化し、「メンバーズ」会員の通販顧客が商品注文時に受け取りCVSを指定できるようにしたのがポイントだ。

 「受取場所選択サービス」の大まかな流れとしては、顧客が通販サイトで商品購入手続きをした後、ヤマト運輸の受取CVS指定ページに遷移。顧客が「クロネコメンバーズ」の会員ID・パスワードを入力し、表示された地図から商品を受け取るCVSを指定すると、通販事業者の物流センターに出荷予定データが送信される。物流センターで出荷予定データをもとにピッキング・梱包した商品をヤマト運輸が集荷し、受取指定のCVSに「宅急便」で届ける。

 同サービスの対象となるのは、一般「宅急便」の発払いで、大きさが「100サイズ」(3辺合計100センチメートル以内、重さ10キログラムまで)以下の商品。

 因みに、通販事業者のサービス導入条件は、ヤマト運輸と「宅急便」の運送契約を結んでいることや、店頭での商品受け渡しについてCVS本部側が了承することなど。

 また、サービス導入の費用体系としては、ヤマト運輸側とのシステムつなぎ込みなどの初期費用のほか、商品の取り扱いに応じた「宅急便」運賃とサービス利用料などで構成。サービス利用料は、CVS加盟店側の手数料の原資となるもので、不在時の荷物をCVSに転送する「宅急便店頭受取りサービス」では、ヤマト運輸が負担していたが、通販に特化した今回のサービスでは、通販事業者が負担する形になる。

 商品受け取りのCVSを指定できるサービスは他にもあるが、「受取場所選択サービス」の大きな違いはリードタイム。

 既存の通販商品のCVS受渡サービスは、通販事業者の物流センターから集荷した受注商品をCVSの商品配送センターに運び、店頭商品の配送車両に載せてCVS各店舗に届ける仕組みで、商品注文からCVS店頭での受け取りまでに1週間程度かかるという。

 これに対し「受取場所選択サービス」は、受注商品を「宅急便」のルートに乗せるため、通常の「宅急便」同様、基本的に商品の受注・発送の翌日(商品の発着地域により翌々日のケースもある)にはCVS店舗に商品が到着する。CVS店舗への配達は、午前11時と午後4時の2便体制で、原則1便目は午後1時から、2便目は夜7時から商品の受け取りが可能だ。

 また、ドライバーが携帯端末にCVS店舗への商品配達完了を登録すると、顧客に受け取り可能を知らせるメールを送信するほか、顧客が商品保管期間(商品到着日を含め3日)のうちに、商品を受け取れなかった場合には、「メンバーズ」に登録された住所に商品を転送するなどの機能も装備。

 商品の受け取りシーン広げ、利便性の高い機能も盛り込む同サービスは、通販事業者にとって顧客サービスの向上に寄与するツールと言えそうだ。

 一方、9月24日のスタート段階で「受取場所選択サービス」に対応するCVSは、スリーエフ、ポプラグループ(店名・ポプラ、生活彩家、くらしハウス、スリーエイト)、ココストア、セーブオン、リトルスター、デイリーヤマザキ、ニューデイズの10チェーン・約4500店舗。当初予定されていたセブン―イレブン(約1万4000店)のサービスインが延期されたため、店舗数のインパクトはやや弱い観もあるが、ヤマト運輸では同サービスを導入するオルビスの利用状況に手応えを感じているようだ。

 現状、サービス導入事業者がオルビス1社のため、利用件数などの詳細は公表していないが、「約4500店という少数でのスタートだが、想定より利用が若干多い」(ヤマト運輸法人営業部の武藤忠雄課長)状況。地域的にも、CVSが多い都市部に集中することなく、全国に散らばる形で利用されており、「新しい層を開拓できる効果も見られる」(武藤課長)という。

 特に化粧品の場合、購入したことを"家族に内緒にしたい"という顧客の意識もあり、最寄りのCVSで都合の良い時間に確実に注文商品を受け取れるメリットは大きい。また、ヤマト運輸にも、夜に男性ドライバーが商品を届けにくることに不安を感じるという女性客の声が少なからずあり、「会社や学校から帰る間にあるCVSで商品を受け取りたいというニーズは強い」(同)と分析。

 実際、ヤマト運輸が通販利用経験者約16000人を対象に行ったネットのアンケート調査では、あらかじめ商品を受け取るCVSを指定したいという回答が50・2%を占有。商品受け渡し時に自宅にいなければならないという顧客の不満は以前から指摘され、CVSでの商品受け取りのニーズがあることは予測できたが、同社でも「ここまでニーズがあるとは思わなかった」(同)という。

 今後、セブン―イレブンやファミリーマート、サークルKサンクス(店名・サークルK、サンクス)など「宅急便」取次ぎを行う5000店超の有力CVSで「受取場所指定サービス」を扱うようになれば、サービス自体の認知度が高まり、さらに利用が広がる可能性もありそうだ。

 通販事業者側でも「受取場所選択サービス」に興味を示すところが少なくなく、すでに20社強が導入を検討している状況。ヤマト運輸では商材などのターゲットを設けず、通販事業者に幅広くサービス導入の働きかけを推進。顧客の利便性と通販事業者の顧客サービス向上、さらにCVSの来店動機付け、「クロネコメンバーズ」へのメリット還元につながるツールとして、「受取場所選択サービス」の展開拡大を図る構えだ。
楽天 通販のよみもの 業界団体の会報誌「ジャドマニューズ」 通販売上高ランキングのデータ販売