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しかし、労働環境の対策・整備は行政や世間から増す監視の目の厳しさに対応せんがために行なうべきわけでない。社会的変化に対応した労働環境を整備できなければ、企業は働き手、それも長期にわたって会社に利益をもたらしてくれ得る優秀な働き手を確保することが今後、困難になるからだ。働き手の数が多い時代は何とでもなったろうが、生産人口が減少し始めた今後はこれまでのようにはいくまい。優秀な人材の獲得はもちろんのこと、そうした人材を退社させず、長期にわたり働いてもらえるための準備も必要だ。
それには働きに見合う報酬面はもちろんだが、従業員のワークライフバランスを考えた施策が必要だろう。従業員の生活を圧迫する残業を極力、なくすための対策なども講じるべきだろうし、産休・育休制度を"普通"に利用できるようにすることも必須だ。時短勤務への対応も必要だろう。また、"育児"だけでなく、"介護"にも対応した制度も考慮すべきだ。老若男女問わず、限られた優秀な人材を獲得していくには様々な準備が欠かせまい。
すでに通販実施企業の中でも労働環境の整備に向けて動き出している企業も多い。例えばジャパネットたかたでは来年1月から原則、午後8時半を超える残業を禁止し、また、週2回は残業自体を禁止する試みを実施する。そのために人員体制やシステムやツールにきちんと投資をして、無理なく実現できるような環境を整えるという。仮想モールを運営するヤフーでは10月から新幹線通勤を導入。通勤時間が2時間以上に従業員を対象に上限15万円まで支給することで静岡や新白河、越後湯沢からの新幹線通勤も可能になる。従業員の生活水準向上を支援する狙いのほか、育児や介護の問題のための離職を防ぐ考えもあるようだ。また某外資系通販企業では家族同様の存在である"ペット"が病気などの際に、休暇がとれる制度を設けている。
労働環境の整備はすべての企業がこれから先、避けて通ることはできない。避ければ人材は集まらず、会社は成り立たなくなる。そうであればいかに先んじて対策に乗り出し、費用対効果の高い施策を考えて展開し、競合と差別化を図っていけるかも企業にとって1つの重要な戦略と捉えるべきだ。本腰を入れて対応に臨むべき時はすでにきている。